短編集『朝のお茶会』

あおみなみ

文字の大きさ
上 下
13 / 33
第4話 安藤に幸あれ

1

しおりを挟む

 2011年7月10 日曜日

 薬品卸の会社に勤めている安藤あんどう春樹はるき(27歳)は、いつも以上に精彩が上がらない感じだった。
 白皙はくせきの青年、といったら聞こえはいいのだが、そこに含まれる美青年的なニュアンスは手放した感じの、ただひたすら色白な若い男である。
 体は細く、銀のフレームのメガネをかけて、いつも困ったように笑っている。

 県北(ちなみにこの地域では、「けんほく」ではなく「けんぽく」と発音する)の出身で、高校を卒業後に隣県の県庁所在地の大学に行き、卒業してUターン就職をしたとのことだが、現在は片山駅東のマンションでひとり暮らしをしている。

 甘いものが好きで、もともとくぬぎ屋の商品のファンだったとのことで、片山で暮らし始めたとき、「まっさきに念願の本店喫茶部に来たんですよ!」という話をうれしそうに、しかし大真面目に語ったことで、年かさのお姉さま方のいじられポジションになった。

 くぬぎ屋本店喫茶部こと「花いかだ」は、商品として売らているケーキや和菓子をお茶請けに茶やコーヒーを楽しんだり、和風パフェやあんみつを食べたり、おむすび弁当や焼うどんなど軽い食事をとったりできる、カジュアルな雰囲気の和風喫茶である。
 金額設定があまり高くないため、中高生の客も時々見られるが、年齢を問わず女性が友達同士でというパターンが多く、男性は大抵、女性のパートナーとして訪れるため、男性1人の客はあまりいない。
 安藤は「花いかだ」でランチやティータイムを楽しむ中で、朝のお茶会というイベントを知り、参加するようになったらしい。

「というか、なんで僕が1人で来たって決めつけるんですかあ?」
 安藤が少し不満げに言うと、
「でも実際、1人だったんだろ?」
 などと返される。
「まあ、そうですけど…」
「うまいもんは1人で食ってもうまいけど、2人だともっとうまいよ」
「はあ…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

女子高校生集団で……

望悠
大衆娯楽
何人かの女子高校生のおしっこ我慢したり、おしっこする小説です

処理中です...