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第1話 詩を書いた少女
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しおりを挟む2011年3月11日に発生した大地震で、片山市のエリアも震度6弱を喫したため、大きな被害があった。
くぬぎ屋も、13日に開催予定だったお茶会が中止になったのはもちろん、1カ月ほどは営業自体ができなくなってしまったが、4月に店舗の販売が再開し、その翌月からはお茶会も復活した。
「この間は大変でしたねえ。どうしてました?」
「うちは息子夫婦が自主避難で関西に行っちゃって…」
などと、3カ月ぶりの近況を報告しあう常連の姿があちこちで見られた。
内陸部にある片山は津波の被害はなく、建物の倒壊など震災を直接の原因として命を落としたというニュースはなかったが、近隣の自治体では、湖で内陸津波というものが起きて犠牲が出たとか、地震と津波が原因で起きた原発事故のあおりを受け、農業や畜産ができなくなり、結果自ら命を絶つという悲劇的な事件に代表される、いわゆる震災関連死の事例はよく聞かれるところだった。
人はこの世に生まれたら、とりあえずは生きていくしかない。
片山の大学で勉強するために2009年によその県からやってきた柏木あざみは、もともと甘党だったこともあり、住んでいるアパートの大家さんに教えられ、2010年からお茶会に通うようになった。
入場の際、たまたま後れを取ってしまっても、「あざみちゃん、こっちこっち」と、顔見知りの女性たちに招き入れられるほどの常連で、かなり年上の女性たちから、娘や孫のようにかわいがられている。
「いい若いもんが、日曜に年寄りと茶飲み話してないで、カレシ作りなよ」
などとからかわれても、
「ふーんだ。来月には絶対カレシ連れで来ますからねー」
と返答するような明るさ、如才のなさが好かれているようだ。
中学生くらいの頃に書店で見かけた『人生とは死ぬまでの壮大なる暇つぶし也』という本のタイトルがあざみのモットーで、自分が良いと思ったことは、人目を気にせずに実行するようになった。
ただ、興味の対象が、こういう年配者が多いお茶会だったり、入場者の極端に少ないギャラリーの個展だったりとシブすぎるため、大学で比較的仲のいい知人からも、「あんた、いったい何が楽しいの?」と言われる始末だった。
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