文字書き日記

あおみなみ

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神様の好待遇【20220603】

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今回も、よそで書いていた「創作日記」からの転載です。ストックはここまでだったのですが、引き続き思いついたことを書く前提で、後ほどマガジンにまとめたいと思います。

 先回、逢坂みえこさんの『9時から5時半まで』の中の1エピソードをご紹介しましたが、これはFODで見つかったので、記憶が曖昧だったところも確認できました。

 で、今回も昔読んだ少女漫画がトピックなのですが、小学校高学年か中学生の頃読んだ作品で、作者もタイトルも全く覚えていないので、記憶に残っている部分だけですが、それにしてもヤバくね?という話です。当時は違和感を言語化できませんでした。

 ちんちくりん(絵柄はかわいいけど、多分不細工設定)、眼鏡、服装ダサめ、音痴――みたいなヒロインが、あるイケメンバンド少年に一目ぼれします。 少年は彼女にタゲられた瞬間、悪寒にも似た嫌悪感を覚えました(ギャグ表現)。

 まあ、なんだかんだで少年の“おっかけ”を始めるヒロイン。 しかし「俺は美人でグラマーで俺の音楽についてきてくれる女が好き」と、けんもほろろにヒロインを振ってしまいました。 「グラマー」ってあたりに時代が出ていますね。 英文法のことではありませんよ。 肉感的な女性を表現する言葉です。

 常に自分に自信のないおばちゃんは、この言葉が最近はどんな文脈で使われているのか、こっそりツイッター内検索してしまったのですが、「インスタグラマー」の略で使っている方が多い印象でした。でなければ「ふっくらさん」の婉曲えんきょく表現とか、いや、「ふっくら」が既に婉曲表現ですが、あまりお気になさらずに。

 閑話休題。 それでも少女はめげずに頑張って自分磨きをします。 ダイエットもしてたかもだし、眼鏡をコンタクトに替えるという描写もあったかもですが、その辺は忘れました。定番の行動だし、多分していたでしょう。 で、かわいいワンピースを(バイトして?もしくはお小遣いをためて)買い、彼のライブに臨みました。 しかし、あろうことかヒロインは、そこで少年のギターを壊してしまったのです。コードに足ひっかけてとか、そういう描写があった気がします。どじっこ描写は少女漫画のお約束ですが、結構大物イッちゃったようです。

 ヒロインは大いに反省し、せっかく買ったワンピースをつぶしてクッションをつくり、それを持参で改めて謝罪に来ました。 この時点で割とわけわかりませんが、当然のように「何これ?」って感じで謝罪も受け入れず、冷たくあしらう少年。 そこでヒロインをずっと見守ってきた友人が、少年にビンタをかまし、「この子がどんな思いでこれをつくったか分かるのか?」と憤慨します。

 2人が去った後、「災難だったな」などとからかい調子のバンド仲間の言葉を聞きながら、一生懸命自分を追いかけたヒロインの姿をあれこれ思い出す少年。 「俺が壊したのは、ギターなんかじゃない。あいつの心だったんだ」と。

 そして「美人」「グラマー」という“恋人にしたい女”の条件を撤回し、彼女の独創的な音程による「はとぽっぽ」を聞いて、「こりゃ三つ目も撤回かな…」と思う少年――めでたしめでたし。

 私はこれを読んで「は?」以外の感想が浮かびませんでした。 心云々って、『ルパン カリ城』の銭形のとっつぁんの筋の悪いパロディーか何か?

 いやいや、しっかり壊れてるでしょうよ、ギター。 サトシに自転車を勝手に使われて追い回しているうちに、結局一緒に旅するようになった『ポケモン』のカスミちゃんみたいな感じで、「俺のギター弁償しろよ!」「ひ~バイト探してきます~」→ドジ踏みながらもバイトを頑張るヒロインを見直す少年、みたいな展開なら、まだ分かるんですけど。 かわいいワンピつぶして、彼にも振られて「傷ついたー」って、自分の都合ばかりです。それを酌んで許してくれるなんて、近頃ツイッター界隈で話題の「理解のある彼氏に救われたメンタル弱い女子」マンガの嫌な部分だけをすくい取ったような展開です。

+++

 別に愛らしいルックスとステキ人格の持ち主でなければ愛されてはいけない、とは言いません。 例えば「何のとりえもない」という自己評価の低さは、逆に謙虚とも換言できるので、自分で自分をこう評価するような人が愛されるのも、問題はないと思います。 でも、相手への加害を自分の都合だけでテキトーに賠償しようとして、拒絶されて、それに腹立ててビンタする友人、少年も反省――って、ヒロインは前世ですんごい徳でも積んだのかな、この好待遇。

 近頃はあまり少女漫画を読まないので、最近の事情は知りませんが、たまたまこの話の印象が強かっただけで、こんな話、当時はゴロゴロしていたのかもしれません。 『魁!男塾』の江田島塾長の名ゼリフ『男なら幸せになろうなどと思うな (中略)男なら死ねぃ!』じゃないけれど、「女は女というだけで不遇なんだから、男にベタベタに甘やかされるくらいでちょうどいい」的価値観に基づく、21世紀のツイフェミさんにっこりの物語だったなあと、しみじみ思い出してしまいました。

 それと、個人的には「俺の音楽についてきてくれる女」と言うシーンの少年のやたらタメた言い方が、ちょっと気持ち悪いなと思いました。何だ、そのこだわり。 そんなことを思っていたせいかどうか、その数年後、17歳のとき付き合っていた人に、「俺、音楽の趣味が合う女ってダメなんだよね」と言われ、「ん?んん?」となってしまいました。

関連記事(笑)↓

 たまにいますよね。男ファンが多いものが好きな女は、男の歓心を買うために好きなふりしてるだけだ、みたいな発想の方。 鉄道、格闘技、釣り、萌え系アニメあたりが該当しましょうか。

 趣味が一致すれば絶対気が合うわけでもないし、むしろベクトルの違う趣味をお互いに持っていた方が都合がいい場面もあるでしょう。 でも、あえて口に出したら本当に野暮だなあと思いました。 ある意味「ここは野暮なシーンである」というのを表現するやり方としては、使えそうなセリフではありますが。
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