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第10章 トラブル再び
一難去って…
しおりを挟む久々(体感)に創さんから電話が来た。一応、「お昼まだならどう?おごりにしとくから」というお誘いだったので、現金な女になり切って、「はい、じゃ、ゴチになります」と応じた。
いつもの卵サンドとブレンド。
わだかまりを持ったままではいけないという、「大人な」創さんの配慮込みで、いつもの2割増しおいしく感じる。
誘った理由は、そういう配慮もちろんあったんだと思うけど、創さんは別件で私に話したいことがあったようだ。
「あのね…ちょっと気になる電話が来たんだよね、昨日…」
「気になる?」
「女性の声で、名乗りはしなかったんだけど…『お宅の隣にコヅカって女の人住んでませんか?』って」
「え…?」
「で、俺もとっさでびっくりして、『なぜそんなことを?』とか何とか言っちゃったんだけど、そしたら切れて。これって『住んでます』って言ったも同然だよね?」
「ん? ああ、まあそうですね…」
その女性とやらの電話してきた意図や、通話中の空気感までは分からないけれど、そう聞かれて「なぜ?」とか答えたら、少なくとも深読みはされるだろう。
「だからさ、またトラブルがあったらアレだと思って」
「そうですね、気を付けますね」
「あ、違う違う。もし何かあったら、店でも家でも駆け込んでってこと」
「え?」
「そんな不用意な対応した以上、今回ばかりは俺も無関係ではなくなっちゃったわけだから」
「なんか私、いつも創さんには迷惑ばっかりかけていますね…」
「いやいや、そういう意味じゃなくて、その…もっと頼ってっていうか…」
「…」
創さんは優しくて大人だ。
だから、一度寝たぐらいで「お前は俺の女」みたいな態度は取らない。
むしろ感じなくていい責任を感じて、私にこんなに優しくしてくれるのだろう。
「あの、創さん」
「ん?」
「創さんの気遣いはすっごくうれしいんですけど、そこまで気にしなくていいんですよ?」
「え?」
「私からお願いしたことです。『責任取って』なんて言いませんから」
「いや、俺はその…」
「ごちそうさまでした」
「ああ…また、おいで…」
私、頑張って笑顔をつくったつもりだけど、うまく笑えていたかな?
◇◇◇
部屋に帰って冷静になって考えてみたら、電話の主が何となく分かった気がする。
多分、萱間博次の奥さんだろう。
私の家の番号は五十音順電話帳には載せていないから、先方が住所や名前を知っていたとしても、番号案内でも教えてもらえないはず(※下記注)。
「サハラ」という喫茶店の番号は、職業別電話帳にしっかり載っているから、簡単に調べられる。で、打診したってところだろう。
萱間の手際の悪さが手に取るように分かった。
あくまで推測だけど、多分バス停の名前とか、近所に何があったかとかメモって、それを奥さん(仮定)に見つかったってところだろう。
しかも私の名前(姓だけかフルで知ってるかは分からないけれど)を知られるようなスキも、何かつくってしまっていたようだ。
下衆の勘ぐりで「自分の子じゃないかも」とか泣き言言ってる暇があったら、奥さんに不審な行動を探られないように気を付けろって話だよ、まったくぅ。
どうでもいい過去の男で終わらせたいのに、後出しでさらに失望させるのやめてほしい。
人の男を寝取った相手であっても、それは結婚前の話だから、今は妻であるアチラさんの方が立場は強い。
「ウチの人に手を出さないで!」とか泣き崩れられたら、私は反論できる筋合いにないのだ。
考えれば考えるほど、タメ息しか出てこない事態になっちゃっているのかも。
***
※当時の記憶で書いているのですが、実際「ハローページに番号を掲載しないで」と頼めば、掲載されないと同時に「104の番号案内でも番号を教えられない」仕様になっていたはずです。当時はこれが不便で、「何の意味があってそんなことをするんだろう?」と思っていましたが、逆に、不特定多数の人に番号を知られたくないから掲載しないのに、番号案内で知られちゃったら意味ないなと気づきました。
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