短編集『サイテー彼氏』

あおみなみ

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あなたにここにいてほしい

ささやかな幸せ 小さな意地悪

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いつも誰かの目を気にしているかのような「彼女」 そのワケは?

***

 その卵を手に取ったときから、予感はあった。
 この大きさ、重量感、多分だ。

「おっ、ビンゴ!」

 赤い小さなボウルに割ってみると、黄身が2つ。
 あなたなら、カリカリベーコンに目玉焼きかな。
 卵を二つ使ったときよりも、黄身が接近して焼き上がるだろう。

 でも、私はそこに少量の牛乳とハーブソルトを入れて、カシャカシャかき混ぜて、バターで焼いちゃう。

 悪い?私はオムレツの方が好きなんだよ。

 さーて、朝からぜいたくしちゃったから、今日の仕事は頑張れそう。


*****

 合計金額785円だったので、セルフレジに1,300円投入して、515円のおつり。
これでまた500円玉貯金が増える。
 でも、頼みの綱の郵便局で、硬貨の預け入れは手数料取るようになっちゃった(※下記注)。
 いっそ使っちゃおうかなあ。

 みたいに、500円玉4枚だけ持って、コンビニのホットスナックと飲み物を飲み食いしながらひたすら歩く、とか。

 700円くじをやっていたので引いたら、レモンジンジャーのミンツが当たった。メタルのパッケージもかっこいい。
 買ったら300円くらいのやつ。ラッキー!
 食べきったらケースの使い道考えなきゃ。

 ジンジャーのおかげなのか、かじると体がホカホカする――気がする。


※現行、硬貨の出し入れも無料でできる銀行のATMもありますが、ちょうどこれを書いていた頃、郵便局の有料化が始まったので、ちょっとした時事ネタくらいの感じで流していただければ幸いです。

*****

 そういえば、あなたは冬はいつも100均でニッキ飴を買っていたっけ。
 のど飴兼体ホカホカアイテムだって言って。
 私は辛くて苦手だった。
 でも、シナモンニッキ味のキスは嫌いじゃなかった。

*****

 明日はお休みだけど、天気よさそう。
 お洗濯してから500円玉2縛りの買い食いの旅に出てみよう。

 肉まん、おでん、ホットティー。
 外気は冷たいけど、買い食いは冬の方が楽しい。

 へへ、いいだろう? 楽しそうだろ?
 そこで指くわえて見てなさい。

*****

 あなたがひとりで逝っちゃったのが悪いんだよ。

 郵便局の手数料のことも、デラックスなミンツがくじで当たったことも、今朝の卵の黄身が二つだったことも知らず。

 ユーレイになって出てこられても、知らない。私霊感ないもん。

 だから私の周りをぐるぐる回ってる妄想をして、卵の黄身はわざわざ割って、仕事の合間にミンツをかじって、500円玉散歩のプランを立てて、とびっきり幸せそうな顔してやるんだ。
 あなたはそこで歯ぎしりしながら浮遊フユニャンやってなさい。

 あなたが私を置いて、ひとりで逝っちゃったのが悪いんだよ。

 そのくせ、一緒に楽しめる人を新しく探そうって気も起こさせてくれない。

 にくったらしい、私の心の地縛ジバニャン。

【『あなたにここにいてほしい』 了】
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