短編集『サイテー彼氏』

あおみなみ

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新婚さん

妻のつぶやき

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日々のちょっとした作業も手仕事も、何をしていても楽しくて幸せ。 そんなヒロコの日常。 

***

 そうだ、せっけんがもうすぐなくなりそうだから買いにいかなきゃ。
 あの人はボディソープが苦手だから。
 いつも3個は予備がないと不安なんだって。
 何だかかわいい…なんて言ったら、へそを曲げちゃうかしら。

 もう31歳の立派な男性で、職場では主任になったばかりなのよね。

 自分より少しだけ出世の早かった同期のふじさんのことを随分意識しているけど、「今のところそんなもの、みたいなものだよ」ですって。
 頭がよくて努力家のあの人らしい強がりも、私は好きよ。

◇◇◇

 お夕飯は何にしようかな。
 寒くなってきたからって、お鍋ばかりっていうのも芸がないわよね…。

 そうだ。お隣からいただいたはいいけれど、何に使おうか迷っていたカボチャがあるから、コロッケでもつくろうかしら。
 あの人は揚げ物は何でも買ったものの方が好きだって言っているけど、私はとんかつだって天ぷらだって、あの人のためなら何でもつくってあげたいのに。
 「面倒だろうし、油を使うのはいろいろと危険だから」って。
 私に気を使っているのよね。ホントに優しい。

◇◇◇

 私は仕事は嫌いじゃなかったけど、あの人が家庭をしっかり守ってほしいって言うから、専業主婦になることに迷いなんてなかったわ。

 お砂糖や小麦粉をストッカーに補充したり、スーパーのチラシとにらめっこして1円でも安くお買い物したり、5時に起きてお弁当を詰めたり、生活費の引き落としに預けられた通帳を記帳にいったり、どんな些細なことでも、「あの人のため」って思うと楽しいの。掃除機をかけたり、洗濯物を干したりしながら、鼻歌の一つも出てきちゃうくらい。

 あんなすてきな人がダンナ様だなんて、私はきっと前世ですごい徳を積んだに違いないわね。ふふ。
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