短編集『サイテー彼氏』

あおみなみ

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お面をはずして

ほしかったわけ【終】

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 ある日カズサは、バイト上がりに「はい、これで打ち止め」と言いながら、例のキツネのマスコットを一体連れ帰ってきた。

 うれしそうに手のひらにのせたそれは、紫色の耳をした、スミレのお面のキツネだった。
「これでもうやめる」
「やめる?でも…」
 実はそのスミレキツネを合わせても、全部で6種類しかない。それではコンプとは言わないのではないか。不思議に思って尋ねたユウナに、カズサは答えた。
「コンプなんて、最初から考えてないよ」
「え?」
「スミレのがどうしても欲しかったんだ。ユウナが欲しいって言ってたやつだし」
「そうだったんだ…」
「それに俺も一番最初に見たときから、これだけは絶対欲しいと思ってたやつだから」
「そういうことか。出てよかったね」



▽▽

 カズサはそれを欲しいと思っていた理由は、「スミレのやつは、キツネの顔がユウナに似ている気がしたから」とだけ言ったが、実はもう一つ言えない理由があった。

 お面の顔がユウナの寝顔にそっくりだということだ。

 本当はその理由も隠すつもりはなかったが、ユウナが「ぶっちゃけこのお面の顔はビミョー。メイク失敗してるみたいな顔だし何か間抜け。特に口はひどい。お花はかわいいけどさ」と言ったので、だまっていようと思った。

『お面をはずして』 おわり
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