短編集『サイテー彼氏』

あおみなみ

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お面をはずして

生活

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 若い男女2人の同棲や新婚生活を、「ままごと」と言って揶揄する年配者がいるが、カズサとユウナの生活は、まさに当たらずとも遠からずだった。

 アパートの家賃も光熱費も親が払ってくれるし、食べ物もよく持ってきてくれる。
 ユウナはきれい好きでカズサは料理好きだったから、お互いの得意な家事をそれぞれに担当して、生活は結構うまく回っているように見えた。

 1日4、5時間、週3日程度のアルバイトは、親戚や親の知り合いのコネを利用したものだったので、サボることもなく真面目にやった。
 時間や日数を増やす気はないかと言われたが、2人とも「今が限界です」と答えた。せっかくつかんできた生活のペースが乱れるのが嫌だったのだ。

▽▽

 2人とも教習所にいくのがおっくうで、車の免許は取らなかった。
 カズサは「必要に迫られたら取る」といっているが、ユウナは「あたしは運動音痴だからぜったい無理」と、最初から何も考えていなかった。
 だから2人が移動するときは、自転車か公共交通機関か歩きだが、周囲からそれは不自由じゃないかと言われても、全くピンとこなかった。

 アパートは街場のかなり便利な場所にあったから、歩いていける範囲で生活していればいい。旅行も新幹線や飛行機を使えばいいし、そもそも遠くに旅行に行きたいとは思わなかった。ネット動画やGoogleアースだって十分旅行気分が味わえる。人が大勢いる観光地で赤の他人たちと接触するのもぞっとしない。

▽▽

 肝心の夢は、なかなかかないそうにない。
 SNSに作品をアップしたり、コンペに出したりするが、たまに気を使ったフォロワーがお義理で「いいね」してくれる程度で、全く認められない。
 才能がないのか、みんなが欲しがるセンスが足りないのかが分からないまま、結果が全く出せないでいたが、2人とも意外と幸せだった。
 根拠は全くないけれど、2人ともいつか何とかなるような気がしていた。
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