短編集『サイテー彼氏』

あおみなみ

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お面をはずして

恋人たち

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ラノベ作家志望のカズサとイラストレーター志望のユウナ。
無気力でのんきな似た者同士の2人は同棲中。
平和に暮らしているけれど、ユウナには現在、ちょっとした悩みがあった。

***
 ユウナはイラストレーターを カズサはライトノベル作家を目指していた。

 入学した高校で同じクラスになってすぐ、お互い一目ぼれした。
 それは容姿や雰囲気が好みというよりも、インスピレーションのようなものだったし、恋愛感情というより、一瞬にして友情が芽生えたといった方が近いかもしれない。
 2人とも昔から同性異性問わず、他人とはあんまり口を利かなかったが、お互いを初めて見たとき、「この人は」だと感じたのだ。

 2人とも家がある程度お金持ちだったので、それぞれ「高校を出たらひとり暮らししたい」と言ったら、まとまったお金を親たちが出してくれた。
 ただ、2人とも就職にも進学にもあまり意欲的ではないので、せめて専門学校に行くようにどちらの親も言った。学生としての身分や体裁を整えた方がいいだろうという判断だった。

 さいわい地元はわりと大きな街だったので、専門学校もいくつかあった。
 どうせ行くなら興味のもてる学校でなければ意味がない。
 2人は◎◎クリエイターズスクールという学校のイラスト科とノベル科に進学したが、2、3カ月通ってみて、自分たちには無理だと思った。
 授業は退屈だし、人づき合いもうっとうしい。それにもう既に才能のようなものがにじみ出ているクラスメートもいて、そういう現実を見るのがつらかったからだ。

 2人はほぼ同時に学校を辞めて、親の許可をとってカズサのアパートで一緒に暮らすことにした。
「学校は自分たちには無意味だ。なりたいものには独学でもなれる」と言って辞めたはいいけれど、だからとって同棲までそう簡単に認められるわけがない。
 そこで、2人でいられないなら自殺するとか、精神的におかしくなって放火するかもしれないなどと脅して、かろうじて許可が出ただけだ。

 学校を辞めたかわりに、アルバイトはすることにした。
 絵を描くにも小説を書くにも社会生活は必要だよと、親たちから説得されたからだ。
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