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在五忌<Zaigoki> カンバン ニ イツワリ アリ
おさななじみ その1
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本作は、記念日サイトで5月28日が在原業平の忌日「在五忌」だと知り、業平といえば『伊勢物語』という単純な連想ゲームの結果生まれた、雑なパロディというかパスティーシュ青春恋愛小説です。
(つまり昨年の5月28日初出です)
主に参考にしたのは第二十三段「筒井筒 つつゐづつ」。
意味ありげなタイトルほど面倒な話ではないので、お気軽にどうぞ。
***
筒井つの井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに
◇◇◇
竹美は隣の家に住む、俺と同い年の女の子だ。
どっちかというと小柄でかわいい系で、性格が素直っていうか従順っていうか、何ならちょっとオバカで、昔から人を疑うことを知らなかった。
たまたまお隣さんにそんな子がいても、部屋は2階(俺)と1階(竹美)。
だから屋根伝いに行き来することもなかったし、もちろん、親同士が相談して家と家の間に勉強部屋を建ててくれることもない(まあこんなことは普通ない)。
お互いに何か用事があれば、お互いの家の玄関から堂々と入り、「あらあら、有くん(俺のこと)。ちょうど豚汁いっぱいつくったから、食べていきなさいな」とか、「竹美ちゃんいらっしゃい。有なら部屋にいるわよ」とか言って通してくれるし、お互い高校生になって、正式につき合うようになっても、そんな関係は変わらなかった。
何となく2人で過ごしたくて、どちらかの親きょうだいたちが留守のときに部屋に誘い合うこともあったけれど、お互いの家でエロい気持ちになることは難しい。
謎の抑止力が働くっていうか、精神的に監視されているっていうか、そんな感じ?
それでもキスしたり、体に触れたりすることはあったけれど、まあその程度。
俺と竹美はほぼ清い関係のまま1年過ごした。
お互いのことは、生まれたときから知っていたので、「つき合って1年目の記念日」について、竹美からあれしようこれしようって提案されても、何だかピンと来なかった。
しかも俺は、そんな記念日デートのことをすっかり忘れて出かけてしまったのだった――全く別の女のトコに。
魔が差すにしても、差すタイミングを考えてほしいもんだな、「魔」とやら。
竹美はすっぽかしたことについて、俺を一言も責めなかった。「もともと私が勝手に決めたことだったし」とか、「有君、用事があったのに言いづらかったんだよね?」とか何とか。
人を疑わないにもほどがある。
こんないい子を俺は裏切ってしまったんだ。
◇◇◇
竹美との清過ぎる関係に違和感を覚え(というか、大分タマってて)、その頃、同じクラスの保田って巨乳の女子に、ちょっといい感じで誘われて、ついふらっとヤっちまった。
保田は美人ってほどではないけど、大人っぽくて雰囲気があって、頭の回転が速い。
つまり竹美とは正反対のタイプだった。
初めてシたのは保田の部屋だった。「初めて」の俺をリードしてくれたし、むちゃ気持ちよかった。
竹美とのキスみたいに、唇どうしを合わせるだけじゃなくて、舌を入れてきたりするからびっくりした。
夜、竹美に悪いと思いつつ、保田とのアレを思い出しながら、猛る下半身をおさめたりすることもあった。
中学生くらいの頃は、竹美のことを想像してスることもあったけど、そういや俺、あいつが何色のどんな下着を着けているかすら知らないんだな。
リアルに見たことがある保田の体を思い浮かべる方が楽だし簡単だし、何より勃つ。
未練たらしいスケベ心はあるにはあったけれど、俺はすっぽかしの一件以来、意識的に保田を避けるようになった。
保田は勘がいいから、それ以降は俺にしつこく絡んでくることはなかった。
(つまり昨年の5月28日初出です)
主に参考にしたのは第二十三段「筒井筒 つつゐづつ」。
意味ありげなタイトルほど面倒な話ではないので、お気軽にどうぞ。
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筒井つの井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに
◇◇◇
竹美は隣の家に住む、俺と同い年の女の子だ。
どっちかというと小柄でかわいい系で、性格が素直っていうか従順っていうか、何ならちょっとオバカで、昔から人を疑うことを知らなかった。
たまたまお隣さんにそんな子がいても、部屋は2階(俺)と1階(竹美)。
だから屋根伝いに行き来することもなかったし、もちろん、親同士が相談して家と家の間に勉強部屋を建ててくれることもない(まあこんなことは普通ない)。
お互いに何か用事があれば、お互いの家の玄関から堂々と入り、「あらあら、有くん(俺のこと)。ちょうど豚汁いっぱいつくったから、食べていきなさいな」とか、「竹美ちゃんいらっしゃい。有なら部屋にいるわよ」とか言って通してくれるし、お互い高校生になって、正式につき合うようになっても、そんな関係は変わらなかった。
何となく2人で過ごしたくて、どちらかの親きょうだいたちが留守のときに部屋に誘い合うこともあったけれど、お互いの家でエロい気持ちになることは難しい。
謎の抑止力が働くっていうか、精神的に監視されているっていうか、そんな感じ?
それでもキスしたり、体に触れたりすることはあったけれど、まあその程度。
俺と竹美はほぼ清い関係のまま1年過ごした。
お互いのことは、生まれたときから知っていたので、「つき合って1年目の記念日」について、竹美からあれしようこれしようって提案されても、何だかピンと来なかった。
しかも俺は、そんな記念日デートのことをすっかり忘れて出かけてしまったのだった――全く別の女のトコに。
魔が差すにしても、差すタイミングを考えてほしいもんだな、「魔」とやら。
竹美はすっぽかしたことについて、俺を一言も責めなかった。「もともと私が勝手に決めたことだったし」とか、「有君、用事があったのに言いづらかったんだよね?」とか何とか。
人を疑わないにもほどがある。
こんないい子を俺は裏切ってしまったんだ。
◇◇◇
竹美との清過ぎる関係に違和感を覚え(というか、大分タマってて)、その頃、同じクラスの保田って巨乳の女子に、ちょっといい感じで誘われて、ついふらっとヤっちまった。
保田は美人ってほどではないけど、大人っぽくて雰囲気があって、頭の回転が速い。
つまり竹美とは正反対のタイプだった。
初めてシたのは保田の部屋だった。「初めて」の俺をリードしてくれたし、むちゃ気持ちよかった。
竹美とのキスみたいに、唇どうしを合わせるだけじゃなくて、舌を入れてきたりするからびっくりした。
夜、竹美に悪いと思いつつ、保田とのアレを思い出しながら、猛る下半身をおさめたりすることもあった。
中学生くらいの頃は、竹美のことを想像してスることもあったけど、そういや俺、あいつが何色のどんな下着を着けているかすら知らないんだな。
リアルに見たことがある保田の体を思い浮かべる方が楽だし簡単だし、何より勃つ。
未練たらしいスケベ心はあるにはあったけれど、俺はすっぽかしの一件以来、意識的に保田を避けるようになった。
保田は勘がいいから、それ以降は俺にしつこく絡んでくることはなかった。
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