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お迎えです
妻【終】
しおりを挟む私が完璧な良き妻の仮面をなぜかぶり続けられるのか、この人は全く分かっていない。
男性からの好意も愛も尊敬も、私は全部、外部調達できているからよ。
だからビジネスとしてあなたの良き妻を演じていられるだけ。
あなたが私を愛していようがいまいが、どっちでもいいの。
浮気三昧のクズだけど、隠そうという努力は認められるし、稼ぎは悪くないし。
幸か不幸か、私たちには子供がいない。
結果、外での仕事をしていない私には、時間がたっぷりできた。
「赤ちゃん、早く欲しいね」と言ったハネムーンの夜、「まだ要らないよ、そんな邪魔なもの」と言われたとき、私の気持ちは粉々になった。
あなたは何も考えずに言った言葉だったかもしれないけれど、だからこそ胸に刺さった。
私は子供が欲しかったが、誰の子供でもよかったわけではない。
良き妻として尽くせば、彼の気が変わるかもと頑張ってみたが、よそよそしくなる一方だったし、浮気の証拠を隠すのも、笑ってしまうほど下手だった。
結果、もっともらしい言い訳ばかりうまくなっちゃって。
当然、私を愛していないという本心も隠せずにいる。
立派な服とマントで覆い隠せていると思っているのは自分だけ。いわば「心が裸の王様」なのだ。
今、私を「愛していない。別れてほしい」って言いたくて苦悩しているのよね?
バカじゃないの?私は多分、あなたよりも「愛していない」のに。
でも見ていていっそ愉快だから、もう少し遊ばせてもらうわね。
2人のカップが空になった。
「そろそろ帰りましょうか」
「そうだな」
店を出てから、ちらっと駅の方を見ながら、「ねえ、こんな時間に駅まで夫を迎えにくるなんて、何だか昭和のドラマみたいね」と言ってみた。
そう言われた夫の反応は見えないが、笑顔ではないことは分かる。
【了】
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