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第6話 新しい受付のオネエサン
しおりを挟む夏休みが終わり、2学期になって少し経った頃、マチャが気になることを言い出した。
「ね、みやびちゃんのお母さん、病気とかかな…?」
「え?何で?」
「この間歯医者さん行ったら、全く知らない女が受付にいたから」
みやびちゃんのお母さんのほかに、2、3人くらい窓口スタッフの人はいたと思うけど、そのときはその人1人だけで対応していて、しかも「手際が悪くて不慣れそうだった」と言う。
歯医者さんというのは、虫歯が痛むとか、歯石を取ってほしいとか、そういうタイミングで行くだけだから、普通のお店みたいに「いつもの人がいない」というのが分かりにくい場合はよくある。それは内科の病院とかも一緒かな。
そして気になるのは、マチャの「女」という言い方だった。
「女性」でも「女の人」でもなく、「オンナ」と言った。何でそんな失礼っぽい言い方をしたかといえば、「もたもたしているくせに偉そうで、感じ悪かったから」だそうだ。
みやびちゃんのお母さんはもちろん、あのクリニックの受付の人はみんな感じがよかった記憶がある。
なるほど、そんなスタッフには心当たりがないな…?
◇◇◇
ちょっと気になって、私も歯ブラシを買う名目で、久賀デンタルクリニックを訪れた。
窓口で、若くて美人だが、どこか崩れた雰囲気の女性が、「保険証は?」と聞いてきた。
「あの…歯ブラシを…」
「え、歯ブラシ?」
「ええと、ここで買えるって聞いた…ので…」
「あ?あー、これか。はい、200円ね」
「はい…」
女性はずっととげとげしい声で、笑顔の一つも見せない。
しかもこんなことを言い出した。
「ねえ、あんたさ、今日は治療とか診察じゃないんだよね?」
「え――はい」
「歯ブラシだけ買いにくるとか、常識的に考えておかしくない?ここはコンビニじゃないんだよ?」
「すみません…」
心なしか、駐車場がいつもより空いていて、待合にも人が少ない気がするのは、ひょっとしてこの人のせいかな?
それにしても、ほかのスタッフさんもいれば、新人さん?にこんな態度させておかないだろう。
ということは、今日たまたまこの人が1人ってだけでなく、ほかの人もいない…のかな。
このやたらイライラした人にはおっかなくて聞けないけど、様子があまりにもおかし過ぎるぞ。
◇◇◇
夕飯時、母に「最近、みやびちゃんと連絡取ってる?」と聞かれた。
「お土産渡した後は何も…?」と答えたら、何か言いたそうな顔をしたけれど、「そう」とだけ言った。
何その態度?ちょっと気になるじゃん…。
「会った?」じゃなくて「連絡取った?」という言い方も何となくひっかかる。
学校が違うとはいえ、ご近所の子なのに、そういう言い方ふつうするかな…?
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