夏服に着がえて

あおみなみ

文字の大きさ
上 下
7 / 9

第6話 新しい受付のオネエサン

しおりを挟む

 夏休みが終わり、2学期になって少し経った頃、マチャが気になることを言い出した。

「ね、みやびちゃんのお母さん、病気とかかな…?」
「え?何で?」
「この間歯医者さん行ったら、全く知らない女が受付にいたから」

 みやびちゃんのお母さんのほかに、2、3人くらい窓口スタッフの人はいたと思うけど、そのときはその人1人だけで対応していて、しかも「手際が悪くて不慣れそうだった」と言う。
 歯医者さんというのは、虫歯が痛むとか、歯石を取ってほしいとか、そういうタイミングで行くだけだから、普通のお店みたいに「いつもの人がいない」というのが分かりにくい場合はよくある。それは内科の病院とかも一緒かな。

 そして気になるのは、マチャの「女」という言い方だった。
 「女性」でも「女の人」でもなく、「オンナ」と言った。何でそんな失礼っぽい言い方をしたかといえば、「もたもたしているくせに偉そうで、感じ悪かったから」だそうだ。

 みやびちゃんのお母さんはもちろん、あのクリニックの受付の人はみんな感じがよかった記憶がある。
 なるほど、そんなスタッフには心当たりがないな…?

◇◇◇

 ちょっと気になって、私も歯ブラシを買う名目で、久賀デンタルクリニックを訪れた。

 窓口で、若くて美人だが、どこか崩れた雰囲気の女性が、「保険証は?」と聞いてきた。

「あの…歯ブラシを…」
「え、歯ブラシ?」
「ええと、ここで買えるって聞いた…ので…」
「あ?あー、これか。はい、200円ね」
「はい…」

 女性はずっととげとげしい声で、笑顔の一つも見せない。
 しかもこんなことを言い出した。

「ねえ、あんたさ、今日は治療とか診察じゃないんだよね?」
「え――はい」
「歯ブラシだけ買いにくるとか、常識的に考えておかしくない?ここはコンビニじゃないんだよ?」
「すみません…」

 心なしか、駐車場がいつもより空いていて、待合にも人が少ない気がするのは、ひょっとしてこの人のせいかな?
 それにしても、ほかのスタッフさんもいれば、新人さん?にこんな態度させておかないだろう。
 ということは、今日たまたまこの人が1人ってだけでなく、ほかの人もいない…のかな。
 
 このやたらイライラした人にはおっかなくて聞けないけど、様子があまりにもおかし過ぎるぞ。

◇◇◇

 夕飯時、母に「最近、みやびちゃんと連絡取ってる?」と聞かれた。

 「お土産渡した後は何も…?」と答えたら、何か言いたそうな顔をしたけれど、「そう」とだけ言った。

 何その態度?ちょっと気になるじゃん…。

 「会った?」じゃなくて「連絡取った?」という言い方も何となくひっかかる。
 学校が違うとはいえ、ご近所の子なのに、そういう言い方ふつうするかな…?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

タカラジェンヌへの軌跡

赤井ちひろ
青春
私立桜城下高校に通う高校一年生、南條さくら 夢はでっかく宝塚! 中学時代は演劇コンクールで助演女優賞もとるほどの力を持っている。 でも彼女には決定的な欠陥が 受験期間高校三年までの残ります三年。必死にレッスンに励むさくらに運命の女神は微笑むのか。 限られた時間の中で夢を追う少女たちを書いた青春小説。 脇を囲む教師たちと高校生の物語。

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

イケメンプロレスの聖者たち

ちひろ
青春
 甲子園を夢に見ていた高校生活から、一転、学生プロレスの道へ。トップ・オブ・学生プロレスをめざし、青春ロードをひた走るイケメンプロレスの闘い最前線に迫る。

僕《わたし》は誰でしょう

紫音
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

処理中です...