【R18】ユウコとアキ

あおみなみ

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ふたりの約束

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 アキの近所は、幸か不幸か学生の住人が多い。
 またアキが住んでいるのは少ない世帯しかない建物で、玄関口で住民同士が鉢合わせになりにくい構造でもある。
 ちょっとした隠れ家感が、2人の仲が深まる温床にもなってしまったのだ。

 服を着て落ち着いてから、お茶を淹れ直し、今後について打ち合わせをした。
 アキは、心に決めた女性ができたときに渡そうとしていた合鍵を、迷わずユウコに渡した。

「あー、さすがにこれは“なし“だよ」
「こういうときのためにつくったんです。受け取って」
「うーん…」

 ユウコは少し考えてから、化粧ポーチの内側にある小物入れにそれをしまった。
 ファスナーがついていて、リップスティックや香水のアトマイザー程度が入るスペースだ。
 さすがにいつも使うキーホルダーにつけておくことはできないが、すぐに出せる場所でなければ意味がない。

「じゃ、遠慮なく受け取るわ」
「どうぞ」

 *****


 日曜日はお互い予定が入ることはあまりない。

 だから「日曜日に」「アキの部屋で」会うのをデフォルトとして、ユウコはアキが部屋にいようがいまいが、合鍵でアキの部屋に入る。
 2時間待ってもアキが帰ってこなければ、ユウコは部屋を出る。
 アキが午後まで待ってもユウコが現れなかったら、「その日来られない」とみなす。

 スマホや手書きメモでの連絡は証拠を残さないために避ける。

 この部屋以外の場所では絶対に会わない。
 学校行事などの際も、できるだけ接触を避ける。

 それでも、不意にアキの都合が悪くなり、「今日は都合が悪くなりました。来週必ず会いましょう」と置手紙をすることもあった。
 2時間とはいえ、自分のせいで行動を縛るのは気の毒だと考えたのだろう。気を遣うアキらしい。
 ユウコはそのメモを持ち帰りたい衝動をぐっと抑え、「約束よ」と書き残して部屋を出た。

 例えばユウコの夫が彼女の不貞を疑って探偵を雇うのでもない限り、この密会が最も安全だろう。
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