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由布子
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由布子はじき45歳になる、どこにでもいる「かわいいおばさん」である。
誠実で働き者の男の妻で、少し生意気だがしっかり者の娘の母親で、そのどちらについても決して完璧ではないが、毎日上機嫌で動き回っていたので、家族からの信頼はまあ厚いといってよい。
年齢的にはいわゆる更年期であるが、いわゆる更年期障害のような目立った体調の悪さはない。
ただ、とにかく甘いものが好きで、しょっちゅう買ったりつくったりして食べている。
そのせいか、どちらかというとぽっちゃりした体型なのを家族に心配されるのだが、「ちゃんと市の健診受けてるもん。いつも異状なしよ。あなたこそお酒飲み過ぎじゃない?この間も数値ヤバかったじゃない?」などとケロッと反論するので、「まあ、楽しみがあるのはいいことだ」と、半ば諦めたように言われたりした。
由布子の娘はクラスメートたちから「うちのお母さん、最近イライラしていて、いきなりキレたりすること多くて嫌になる」というような話をよく聞いていたが、(うちのお母さんには無縁だな)と思って黙っていた。
もちろん人間である以上、生活していく中でいろいろとストレスも悩みも生じるし、それは由布子も例外ではなかった。
ただ、彼女は自分の機嫌を取るのが人一倍うまかったようで、少なくとも家族にそれをぶつけるようなまねはしなかった。
おいしいスイーツに好みの服や小物、読みたい本や見たい映像作品に囲まれ、「それらを楽しむ合間に家事や用事を済ませている」という暮らしぶりなら、確かにストレスは何とかなりそうだ。
その上、娘が中学生になってからは、さらに楽しい“イベント”が発生した。
恋をしたのだ。
誠実で働き者の男の妻で、少し生意気だがしっかり者の娘の母親で、そのどちらについても決して完璧ではないが、毎日上機嫌で動き回っていたので、家族からの信頼はまあ厚いといってよい。
年齢的にはいわゆる更年期であるが、いわゆる更年期障害のような目立った体調の悪さはない。
ただ、とにかく甘いものが好きで、しょっちゅう買ったりつくったりして食べている。
そのせいか、どちらかというとぽっちゃりした体型なのを家族に心配されるのだが、「ちゃんと市の健診受けてるもん。いつも異状なしよ。あなたこそお酒飲み過ぎじゃない?この間も数値ヤバかったじゃない?」などとケロッと反論するので、「まあ、楽しみがあるのはいいことだ」と、半ば諦めたように言われたりした。
由布子の娘はクラスメートたちから「うちのお母さん、最近イライラしていて、いきなりキレたりすること多くて嫌になる」というような話をよく聞いていたが、(うちのお母さんには無縁だな)と思って黙っていた。
もちろん人間である以上、生活していく中でいろいろとストレスも悩みも生じるし、それは由布子も例外ではなかった。
ただ、彼女は自分の機嫌を取るのが人一倍うまかったようで、少なくとも家族にそれをぶつけるようなまねはしなかった。
おいしいスイーツに好みの服や小物、読みたい本や見たい映像作品に囲まれ、「それらを楽しむ合間に家事や用事を済ませている」という暮らしぶりなら、確かにストレスは何とかなりそうだ。
その上、娘が中学生になってからは、さらに楽しい“イベント”が発生した。
恋をしたのだ。
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