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父【記憶】
あとがき
しおりを挟む『父【記憶】』へのアクセス、ありがとうございます。
◇◇◇
実は『母』をテーマに、これよりも少し短目いものも書いたので、後ほど公開します。
母は今より少し若い頃――思えば、今の私と変わらない年齢の頃、私に面と向かって「親に愛されないからって、あんなつまんない男と結婚して」と言ったり、金の無心に応じられなかったとき、「使えない」「諸悪の根源」などという、なかなかふるった暴言を吐くような女ですから、当然、純粋に好きになれるわけがありません。
とはいえ、この年になるとエピソードや発言の真意というか裏も何となくも分かります。
「親に愛されなかった」というのは、「体が丈夫で手がかからなかったので、親の愛が十分に行き届かなかった」というニュアンスもあるでしょう。「つまんない男」も、まあ子供の結婚相手なんて、上を見たらきりがないって話です。私は玉の輿に乗れるようなタマではありませんしね。
私のような稼ぎの悪い内職女に頼らざるを得ない無心も、その矢面に立ったのが母というだけで、しかも無責任に自殺したと考えると、実は父の方が性質が悪いことが分かります。
もうこの際、自分が典型的な搾取子扱いであることは考えない方が精神衛生上好ましいので、どうでもいいっすわという話です。
母の苦悩を理解しつつも、やはり私は母よりも父の方が好きです(好きでした)。
◇◇◇
作中のエピソードで、ほかの小説に使ったものもあります。
田舎の庶民のじいさんのひっそりした死は、どれだけエゴサしても出てきませんので、身バレはあまり心配しておりません。
携帯電話は一応持っていたかな?という程度で、家にはパソコンもなく、インターネットなどほぼ無縁のまま死んだ父の一生を、この情緒不安定な娘が感傷と勢いで書き、何人かの方はそれを読んでくださるかもしれない。
立派な伝記は到底無理だけれど、こういう形で父が生きた証を残すのも、自己満足とはいえ悪くないなと思っています。
◇◇◇
父は私のことを「ホームドラマのナレーション担当」と表現したことがありました。
たしか私が中学生くらいの頃だったと思いますが、騒動を起こす主人公や、それに翻弄される脇役ではなく、「こいつら何してんの」と冷静に、あるいは「生温かい目で」見るのが私の立ち位置なのだと言いたかったようです。
それなりに当事者になって味わった憂さ辛さもあったんですけどね。ま、いいや。
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