上 下
74 / 88
第27章 無自覚相談女

突撃!

しおりを挟む


 ある日、休講のため、さよりは早い時間からぽかんと空いてしまった。
 その日はバイトもほかの用事もないので、もっと大きな街に出て映画を見たり、ショッピングをしたりしてもいいし、図書館に寄ってもいいが、どれもピンとこなかった。
 図書館といえば、佐竹の部屋は、「区立図書館の分館が近い」のと「異常に古くてポロい」のが目印だと笑っていたことがあった。
 住所も最寄り駅も知っているし、急に訪ねていったらどんな顔をするだろう?
 不在かもしれないが、それならそれで適当にメモでも置いていけばいい。
 ほんの、そんな気軽な気持ちで、さよりは佐竹の住居すまいをアポなしで訪ねることにした。

 ブザーのような音の、接触の悪そうな呼び鈴を鳴らすと、佐竹はすぐに出てきた。

「水野さん!?」
「へへ、来ちゃった」
 と言った後、さよりは「何この恥ずかしいセリフ」とすぐさま自嘲した。
「うわ、驚いたけど…。入って入って。お茶くらい出すよ」

 佐竹があまりにもすんなりと受け入れてくれたので、さよりはのんきに「手土産くらい持ってくるんだった」と後悔したほどだった。

◇◇◇

 最低限の家具と本だけの質素な部屋に、さよりの知らない映画のポスター。
 ロゴはフランス語だが、フランス映画なのか、英語など別言語の国のフランス製ポスターなのかすら分からない。ただ、SFらしいことは雰囲気から分かった。

「俺は大歓迎だけど、急にどうしたの?」
「急に休講になって…今日はバイトもないし…」

 しまった。暇つぶしぐらいに思われたのではないか?と、言ってから心配になったが、佐竹の捉え方は違っていた。

「そう。それで真っ先に俺のところに来るなんて、うぬぼれちゃうよ?彼氏っぽい人がいるのに、いいの?」
「あ…」
 そう言われてさよりは、自然に涙ぐんでしまった。飄々とした佐竹も、それにはさすがに少し慌てる。

「ごめん、何か踏み込んだこと言っちゃったみたいで…」
「あ、ちが…佐竹君が悪いんじゃない…」

 さよりは平静を取り戻そうとして、かえって歯止めが利かない状態になり、気付けば嗚咽、どころか大号泣の状態になっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

処理中です...