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第26章 佐竹の中の水野さより像
気になる女子
しおりを挟む佐竹徹志は中学時代、どちらかというと目立たないタイプだった。
成績はかなり優秀だったが、スポーツは「無難にこなす」程度で、部活には所属していないかった。
そもそもこの時代の片山では、主に校則の関係で男子中学生は丸刈りが主流だったし、どちらかというとヤンキー(当時はあまり全国区とはいえない呼び方だっだか)タイプがモテたから、おっとり規則を守る佐竹のようなタイプは、いまひとつアピールしない。多くの生徒は男女問わず「いいやつだけど、それだけ」とみなしていた。
といっても、単に「佐竹クラスタ」の女子が行動を起こさないおとなしいタイプが多かっただけで、そんな同類の女子しかいない場だと、例えば自分の名前と佐竹の姓を組み合わせて「さたけ・けいこ…なんか同じ字が続くと間抜けだなあ…」「さたけ・あけみ…って、結構よくない?」などと言いつつキャッキャすることは、ないわけでもなかった。
余談ながら、これに関しては、「若い教師や塾講師」だったり、「合唱部やブラスバンドの外部指導員として来た男」だったり、ちょっと好いたらしい風情の大人の男性が対象になることも多かった。
◇◇◇
さよりは佐竹とは中学2・3年で同じクラスだった。
佐竹と同じ優等生でも文武両道で目立つタイプから、少しとっぽいタイプまで、男子の多くはさよりにかなり好意的だった。
単に容姿がかわいいという点を重視し、中身については考えたり論じたりしない者もいたが、出しゃばらないのに存在感があり、押しつけがましさのない、さりげない親切さを見せることが多かったから、中身の評価もおおむね上々ではあった。
その中で、しょせんは自分たち「二軍」には理解できない一軍女子だとみなし、さらにこじらせると、「ああいう清純そうなのに限って(以下それぞれにネガティブ評価)」と想像というか妄想で勝手にレッテル張りをしたりする例もなくはなかったが、少なくとも主流ではなかった。最近の言葉でいえば、「インセル incel」のようなものか。
さよりに純粋に恋をしたり、憧れたりする男子も多かったろうが、特定の「気になる女子」がいなかった者が中学時代を甘酸っぱく思い出したとき、脳裏に浮かぶ顔は「さより的なもの」だ。
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