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第16章 「相手を思いやる」こと

繰り返す

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 俊也のバイト仲間であるハルちゃんだかアキちゃんだかは、結構かわいくて巨乳グラマーで、明るくて付き合いやすく、仕事をてきぱきこなす。
 「彼氏がいる」とは言っているものの、バイト先だけでも男性関係が奔放なのは知られていた。店長とも「何か」あるが、誰とも深くは付き合わないので、不思議とややこしいことにならない手際は見事だと言われている。

 俊也はそこそこサービス精神旺盛で、ねちっこくなく、自分本位さを感じさせないということで、これまで「お相手」をした女性たちからは好評だったせいか、「ハル(orアキ)ちゃん」も大満足だったようで、「カレシ今田舎に帰ってるから、うち泊まってもいいよ」とまで言い出すほどだった。

「いや――今からならギリギリ終電間に合うから、帰るよ」
 ハル(orアキ)ちゃんをアパートに送り届け、家に入らずに帰ろうとすると、「もっと楽しもうよ~」と引き留められた。

「浮気自体は別に責めないけど、浮気相手を家に泊めるのはやめときなよ」
「なにそれ」
「俺の持論。俺は浮気もしない主義だけどね」
「意味わかんない。あれだけヤッといて何言ってんの?」
「そうだな…間違ってたよ」

 ハル(orアキ)は、去っていく俊也の背を見ながら、「中途半端なビビりか。つまんないやつ」と悪態をついた。

「ねえ」
 そこで突然俊也が振り向いて聞いた。
「山本さんって下の名前何だっけ?」
「私?朱美あけみだけど。だからみんな「アケ」って呼んで…」
「ああ、なるほど。さようなら、アケミちゃん。またね」

 俊也があえて名前を尋ねたのは、「名前も知らない子と寝てしまう男」になりたくない、程度の理由からだ。
 終電で帰ろうとしたのも、先日のように、「外泊明けにさよりからの留守電を聞きたくはなかったから」である。
 要するに、少しでも罪悪感を薄めたかったのだ。
 やったこと自体は取り消せないが、あくまで自分の心情の問題だった。

(またやっちまったか…まあ正直、楽しんじゃったけどね…)
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