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第14章 仕切り直し

ランチデート

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 運よく予定のなかったさよりとの連絡はスムーズについたので、「昨日はどうしたの?心配したよ」と俊也は「とりあえず」言った。

 さよりは「下着の上下がちぐはぐだったから」などという本当の理由が言えるわけがない。
 というより、その理由が言えるなら、そもそもすっぽかすこともなかっただろう。
 最適解を何とか求めつつ俊也に心からわびて、『…あの…お財布に…3,000円しかなくて…』と、うそではないが、ドタキャンの本当の理由ではないことを言った。

「それがどうかしたの?」
『だって…お店とかに入ったとき…持ち合わせがないと…』
「ああ――なんだ、そんなことか。俺の方が年上なんだから、気にしなくてよかったのに」
『そうはいきません!』

 俊也はさよりとのこのやりとりで、心から安心し、また「けっこう不器用なコなんだな」と好感を持った。

「じゃ、昨日俺との約束をすっぽかした埋め合わせとして、今日はちゃんと付き合ってくれるかい?」
『え…』
「平日だから昼時は混むかもしれないし、少し時間をずらして昼飯でもどう?
 ハンバーグランチのうまい店を知っているんだ」
『ひょっとして駅前の「KENTAN」ですか?』
「あ、行ったことある?」

『行ったことはないんですけど、先輩たちがおいしいって言っていたので』
「そうそこ。で、どう?」
『はい、私も行ってみたかったんです』
『よーし、決まり。今日は財布の中身は気にしないでおいで』
 さよりは俊也の心遣いに感激し、素直に声をたてて笑い、誘いに応じた。

 そして新品ではないが下着のチェックも怠らず、デオドラントにも気を使い、「ぎりぎりお出かけ風の普段着」的なものを来て寮を出た。
 昨日の今日なので、あまりにオシャレに決めすぎると、浮かれていると取られそうだと思ったのだ。

◇◇◇

 食後のコーヒーつき700円のランチは味もボリュームもよく、2人の会話ははずんだ。
 さよりは、「帰りの新幹線の中で見かけた、スキンヘッドでボーダーのTシャツを着た男性に、内心「ピカソ」というニックネームを付けた」という新ネタが、俊也に結構受けたことがうれしかった。

 また、アルバイトを探そうと考えていることを話し、あれこれとアドバイスを受ける。
 俊也は「オススメ」「やらない方がいい」「つまんない」「稼げない」などを、あくまで自分の経験から、まるでそれだけが真理であるかのように話す。
 俊也にあまり好感を持っていないか、もしくはもっと冷静に距離を置いて見られる関係なら、「この人はちょっと視野が狭いかも」と思うような偏った意見も含まれていたが、俊也に夢中なさよりには分からないし、「大事な彼女には絶対やらせたくないね」などと言われてドキッとしたりする。
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