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第13章 すれ違い
今までにない情動
しおりを挟む俊也が公衆電話のある場所まで来たのは、さよりが去った2分後。
もしも寮に戻ったのだろうと見当をつけ、走って追い掛ければ追いついたかもしれない。
俊也は、さよりの姿が見えないことを不審に思い、コンビニや駅、もう少し離れたところにある公衆電話など、考えられるところを探した後、疲労と落胆もあって小さく舌打ちした。彼にしてみたら、それは「さよりのすっぽかし」としか判断できなかったのだ。
先日自分がしたことを棚に上げ、「こんなことすんのかよ…ちょっと幻滅だな…」などと思い、あのはにかむような笑顔を思い出してもイライラが収まらず、芋づる式に、片山駅近くのホテルで妨害してきた冴えない男のことまで思い出してしまった。
(さよりはああ言っていたが、実はあの男との間にあったのか?)
そもそも自分が季実子の誘いに乗ってしまったのは、あのとき妨害されたからだ。
もしもさよりとちゃんと結ばれていたら、もっと強い意志を持って断れたはずだ――などと考えることで、己を正当化できる。
そんな考えに支配された俊也は、当然その日も寮へのコールバックはしないし、さよりは「かかってきたらどうしよう…」と、むしろ怯えていた。
◇◇◇
今までの俊也だったら、もう女とのことはすっかりリセットし、次に電話がかかってきても、冷たいガチャ切りで応えていたかもしれない。
しかし、今回ばかりは少し様子が違った。
(かわいい顔して、俺をコケにしてるのか…?)
(大体あんなパッとしないやつとデートとか…何考えてんだよ…)
(次に電話がかかってきても、冷たくあしらってやる)
(でも本当にかけてきたら――まあ弁明くらいは聞いてやってもいいか…)
そして、この忙しない情動に、自分自身が一番驚いてもいた。
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