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第2章 モテ女の純情
さよりの進路志望
しおりを挟むある日の手紙で、「さよりさんは、高校卒業後はどうする予定ですか?俺はできたら学内推薦で〇〇学部か△△学部に行って…」と、松崎は書いてきた。
東地大は本部が東京にあるマンモス大学で、学部数も学生数も多い。
松崎が挙げたところは競争率が高くて大変だそうだし、附属高校も全国にあるので、学内推薦といっても楽ではないだろう。
「私は常緑女子短大に行きたいです」
さよりは、そんなそっけない一文で応えた。
「俺は男なので、女子短大のランクとかは分かりませんが、頑張ってください。俺も東京に行きたいと思っているので、東京でご一緒できるといいですね」
そうか、「こういうところ」だ――とさよりは俄かにいらだちを覚えた。
松崎が、女子短大を明らかに下に見ているのがありありと分かった気がしたのだ。
都内の有名女子短大でも特に人気があり、就職でひっぱりだこの学校は、「御三家」「五つ星」などともてはやされていた時代だが、さよりが志望する常緑は、それに続く二番手くらいの学校だった。
難易度はさほどでもないだろうが、いろいろリサーチしていくと、校風も好ましいものに思えたし、さよりとしては、ランクや世間体とは無関係に行きたいなと考え、対策を立てて勉強しているだけである(という大義名分には、そこそこ説得力がある)。
自分が全く使っていない「ランク」という言葉がさらりと出てくるということは、松崎にとってはそれが学校選びで大切だということだろう。それを否定する気はないが、言われてあまりいい気持ちはしない。
彼からの手紙を読んでいると、この人は頭が悪いのかな?性格が悪いのかな?などと、失礼なことをちらりと思うことが間々あった。
「俺はチビだし顔もぱっとしないけれど、男は中身です。さよりさんは優しいし、本質を分かってくれる人のような気がします。」
ルックスの良さは、確かに恋愛では武器になる。
それでいて「ルックスより中身が大事」という建前もある。
さよりはいつも疑問に思っていた。
ルックスで勝負できない人が中身なら負けない――と考えるのはなぜなのだろう?と。
世の中、ルックスも性格も上等な人などゴマンといるし、逆にどっちもアウトという人だって珍しくもない。
また、ルックスにしろ性格にしろ、良し悪しではなく好みの問題ということもあるだろう。
もし俊也さんがこの人みたいな中身だったら好きになったろうかといえば、答えは「保留」である。単に言葉に配慮が足りないだけで性格が悪いだけとも言い切れないし、惹かれるかどうかはまた別の話だ。
逆に、この人のルックスが俊也さんのようだったら、こういう一連の手紙を、私はどんな気持ちで読んだろうか?などと考えたりもする。
「なぜ私は(実は中身をよく知らない)俊也さんに、望みの薄い思いを寄せるの?
なぜ「敏夫さん」は、こんなひねくれた私のことを好きだと言うの?
なぜ私はぶつぶつ言いながら、形ばかりの返事を返しているの?」
この頃のさよりの頭の中は、こと恋愛に関しては疑問符だらけだった。
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