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第十章『?(シークレット)』、エピローグ
4 猫ちゃん、十の夢物語を締めくくりに掛かり、小説の神様と再会する
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「猫派と犬派の、戦いの話だが。猫ってのは自由さえ得られれば、細かい事は気にしないのかい。物書き先生」
山師が主人に尋ねてくる。
「漱石が猫的な人だったという話をしただろ。俺も含めた物書きに取って、最重要なのは言論の自由であり、表現の自由なんだよ。日本は第二次大戦で負けたが、結果的には言論の自由を得た。漱石だって当時よりは、今の平和な日本の方を好むんじゃないかね」
「アメリカとベトナムも戦争をしたが、今、両国の関係は良いんだよな。日本は原爆二発を落とされて、それでも今やアメリカの同盟国だ。問題点もあるんだろうが、平和が一番か」
「民主主義と自由、そして平和ってのは、価値があるんだよ。仮に何処かの独裁者が状況を引っ繰り返そうとしたって、そんな簡単に行くものじゃない。猫派の俺としては、昼寝が出来る今の平和を維持していきたいね」
「まあ独裁者を悪と呼ぶのは簡単だが、その『悪』が勝つ事もあるんでな。貿易だ何だと、それなりに付き合っていかないとな」
「逆に『悪』が負けたとしても、その時は、ある程度の慈悲を持って接したいね。漱石が言う『憐れの情』だ。日本だって、かつては『悪』として扱われてきたんだ。その『悪』を全滅させると言うんなら、それは最悪としか表現しようが無い」
「レッテル貼りは良くないよな。穏やかな政治体制に移行してくれるなら、それが一番だ」
そこから主人と山師の話は、東京オリンピックが間近という話題に移った。
「本当に、開催するんだなぁ。俺、まだワクチン打ってないぜ。大丈夫かね」
「要領が悪いんだよ、もう俺は打ったぜ。なるように、なるんじゃないか」
主人と山師の話は、移り変わり続けてキリが無い。吾輩、退屈で眠くなってきたが、ここは二人の声がうるさすぎる。二階に移動した方が良さそうだ。
「今年は東京オリンピックが開催されるかどうかで騒がれてたなぁ。来年は、どんな騒ぎが起こるやら、だ。それもこれも、時が経てば夢のように思い出されるのかな」
「『夢十夜』という、漱石の小説があったな」
山師が笑いながら言う。吾輩、階段の方へと移動する。
「この世界も実は、猫が見ている夢でしか無いのかも知れないと。あまり深刻になっても仕方ないな」
吾輩、階段を上っていく。そろそろ吾輩は、展開的にも夢を見るべきであろう。
二階の部屋には龍之介くんが居た。起きて、窓の外を眺めている。外の景色は、吾輩から見れば空しか無いが、何だか龍之介くんは嬉しそうだった。
「何を見ているのかな、龍之介くん」
「ああ、吾輩さん。帰ってきますよ」
そう言ったまま、楽しそうに彼は空を見続けたままだ。何が帰ってくるのか説明されない。吾輩、説明を求めるのも無粋な気がして、龍之介くんの横で丸くなった。
「ちょっと眠らせてもらうよ。ああ、夢オチで終わらせるつもりは無いから安心してね」
「はい、吾輩さん」
吾輩も眠いので、良く分からない事を口走る。夢オチとは投稿小説で最も嫌われる展開と聞く。終わり方には気を付けなければなるまい。吾輩、むにゃむにゃと夢の中に入っていった。
吾輩、夢の中でベレー帽を被っている。辺りは真っ白だ。画用紙の中に居るような状態である。
吾輩、椅子に腰かけて、絵筆を動かす。ぺたぺたとした感触がある。絵とも言えない落書きが吾輩の周囲に現れる。創作者の頭の中には付き物の、イマジネーションであった。
漱石先生が書いた『夢十夜』は、短くて分かりにくい。中には短編小説のようなものもある。不気味なものもある。書かれたのは『三四郎』の、直前の時期だ。『三四郎』から始まる前期三部作を書く前に、漱石先生は、頭の中のイマジネーションを出してみたかったのかも知れない。
吾輩の周囲に集まるイマジネーションは、おそらく次回作へと活かされるのだろう。創作とは、そういうものである。イマジネーションの連なりから作品は生まれる。そして作品からは、新たなイメージの奔流が生まれるのだ。
川の中で魚が生まれる光景に似ている。水が流れるように、時代は流れる。人が生まれ、そして亡くなる。それだけと言えば、それだけの光景である。愛が無ければ何も見えない。
ドストエフスキーが書いた『罪と罰』の主人公は終盤、大河の流れを見つめる。その周囲で暮らす人々を見る。そしてソーニャという少女への愛を自覚する。そこで物語は終わり、全てが始まるのだ。命とは物語である。愛がある限り、物語という名の命は復活するのだ。
吾輩、絵筆を動かしていた手、というか前足を止めた。背後に気配を感じる。
「そろそろ来る頃だと思ってましたよ、神様」
吾輩、振り返って声を掛ける。以前に出会った、小説の神様がそこに居た。
「ハーイ、猫ちゃん久しぶりー。元気してるー?」
白い輝きが人の形となる。女性と思われる声が吾輩に届いた。
「元気ですよ。そちらは相変わらず、キラキラしてますね。お元気そうで何よりです」
「そう見えるー? これでも色々、苦労してるのよ。神様も原稿作業中は昼夜が逆転しちゃって。おまけに時差ボケって言うのかしら、猫ちゃんが居る時間とズレが生じちゃって」
時差ボケというのは、海外旅行に行った者が苦しむ症状と聞く。吾輩、旅行の経験が無いので良くは知らなかった。
「それはそれは、大変ですね。ズレというのは一体、どれほどの時差ボケなんでしょうか」
「うん。猫ちゃんが居るのは、二〇二一年の七月でしょう? 私が居る時間は、二〇二二年の四月なのよ」
「そうですかー。それはまた、ずいぶんな時差ボケですね」
「猫ちゃんの物語も、第一章は桜が咲く時期から始まったのよねー。こっちの時間は、また桜が綺麗に咲いてるわよ。密が生じないように、パイプ椅子を並べて、そこで花見をするように指示されてるわね」
どうやら花見などは、まだまだ制限されているらしい。猫の吾輩は気楽なもので、何だか申し訳が無い。
「ところで、そういう二〇二二年四月からの報告なんだけどね。前の章で猫ちゃんが言ってたじゃない、『撤退せよ』ってさ。部分的に撤退を始めたわよ、彼が」
「ああ、そうですか。彼が部分的に撤退ですか」
吾輩、寝ぼけていたので、あまり覚えていなかった。さてはて吾輩は何か言いましたかね。
「撤退って言っても、偽装撤退とかも言われてるけどね。油断ならないのよ、彼ったら」
「偽装結婚みたいな言葉の響きですね。お白さんが見てるBLに、そういう単語が出てきてるらしいです」
「BLの話は、嫌いじゃないけど後回しにしましょうか。とにかく、まだ予断を許さない状況ではあるけど、停戦の可能性は高まったんじゃないかしら。そう思いたいわねー」
小説の神様が一つ、溜め息をついた。
「私が本物の、もっと上等な神様だったら、戦争だって止められるのにね。力不足だわ」
神様にも悩みがあるようだ。吾輩、何とか小説の神様を力づけたかった。
「ストレスを溜めるのは良くないですよ。何か気分転換でも、してみては」
「うん、犬の散歩とかも楽しんでるわよ。犬も猫も好きだからね、私」
神様は犬の散歩もしているのかと吾輩、思った。犬嫌いの芥川先生もビックリである。
「今は桜が咲いてるからさ、その下を散歩すると気持ちいいわねー。一応、神様だから花粉症とも縁が無いのよ私」
そう言った後、少し小説の神様は黙り込んだ。どうしたのだろうかと吾輩、反応を待った。
「……私はね、猫ちゃん。猫ちゃんに謝りたい事があるの」
「はぁ、謝りたい事ですか」
何の事であろうか。龍之介くんの前で、夢の中で「エロエロ淫夢」などと口走った事か。
「猫ちゃんの生涯が、一つの小説であるとしてね。その出来事は、作者であったり、小説の神様がコントロールしてるのよ。こう言っても猫ちゃんには、良く分からないだろうけど」
そう言って。少し息を継いでから、神様は続けた。
「だからね。猫ちゃんが幼い時に、親兄弟と別れて死にかけたじゃない? あれも私が、そうコントロールした結果だとしたら……どうする? 猫ちゃんは私を恨むわよね?」
神様は息を呑んで、吾輩の答えを待っている。なので吾輩は答えた。
「恨みませんよ、吾輩」
「……どうして? 理由を聴いていいかしら?」
「だって、それは神様が、最善を尽くした結果なんでしょう。貴女が言う、『もっと上等な神様』だって、世界中の人間を同時には救えないはずですよ」
吾輩は思う。世界には悲劇がある。そして、それは恐らく、神様が最善を尽くした結果なのだ。日本には原子爆弾が二発、落とされた。そして、その犠牲の後に平和が訪れた。
独裁者の彼は、「日本に原子爆弾を落としたのは何処の国だ!」と、憎しみを煽ろうとするかも知れない。しかし試みは上手く行かないだろう。悲しみを乗り越え、平和を維持する事の大切さを独裁者は知らない。恐怖政治でしか国民を操れない者は愛を理解しない。
愛を理解しない者は美しい物語を知らない。日本という国は、彼が思うよりも遥かに成熟しているのだ。ノーベル文学賞作家が出ている所以である。
世の中には、受け入れなければならない事もあるのだ。だから吾輩は何も恨んではいない。
「という訳で、吾輩は恨んでいませんよ。安心してください」
やや言葉足らずの説明だったが、小説の神様は、吾輩の思考を読めるらしい。だから理解はしてもらえるだろうと思った。
「……ありがとう。ありがとう、猫ちゃん」
泣いているような声で小説の神様が言う。神様も泣くんだなぁと吾輩は思った。
山師が主人に尋ねてくる。
「漱石が猫的な人だったという話をしただろ。俺も含めた物書きに取って、最重要なのは言論の自由であり、表現の自由なんだよ。日本は第二次大戦で負けたが、結果的には言論の自由を得た。漱石だって当時よりは、今の平和な日本の方を好むんじゃないかね」
「アメリカとベトナムも戦争をしたが、今、両国の関係は良いんだよな。日本は原爆二発を落とされて、それでも今やアメリカの同盟国だ。問題点もあるんだろうが、平和が一番か」
「民主主義と自由、そして平和ってのは、価値があるんだよ。仮に何処かの独裁者が状況を引っ繰り返そうとしたって、そんな簡単に行くものじゃない。猫派の俺としては、昼寝が出来る今の平和を維持していきたいね」
「まあ独裁者を悪と呼ぶのは簡単だが、その『悪』が勝つ事もあるんでな。貿易だ何だと、それなりに付き合っていかないとな」
「逆に『悪』が負けたとしても、その時は、ある程度の慈悲を持って接したいね。漱石が言う『憐れの情』だ。日本だって、かつては『悪』として扱われてきたんだ。その『悪』を全滅させると言うんなら、それは最悪としか表現しようが無い」
「レッテル貼りは良くないよな。穏やかな政治体制に移行してくれるなら、それが一番だ」
そこから主人と山師の話は、東京オリンピックが間近という話題に移った。
「本当に、開催するんだなぁ。俺、まだワクチン打ってないぜ。大丈夫かね」
「要領が悪いんだよ、もう俺は打ったぜ。なるように、なるんじゃないか」
主人と山師の話は、移り変わり続けてキリが無い。吾輩、退屈で眠くなってきたが、ここは二人の声がうるさすぎる。二階に移動した方が良さそうだ。
「今年は東京オリンピックが開催されるかどうかで騒がれてたなぁ。来年は、どんな騒ぎが起こるやら、だ。それもこれも、時が経てば夢のように思い出されるのかな」
「『夢十夜』という、漱石の小説があったな」
山師が笑いながら言う。吾輩、階段の方へと移動する。
「この世界も実は、猫が見ている夢でしか無いのかも知れないと。あまり深刻になっても仕方ないな」
吾輩、階段を上っていく。そろそろ吾輩は、展開的にも夢を見るべきであろう。
二階の部屋には龍之介くんが居た。起きて、窓の外を眺めている。外の景色は、吾輩から見れば空しか無いが、何だか龍之介くんは嬉しそうだった。
「何を見ているのかな、龍之介くん」
「ああ、吾輩さん。帰ってきますよ」
そう言ったまま、楽しそうに彼は空を見続けたままだ。何が帰ってくるのか説明されない。吾輩、説明を求めるのも無粋な気がして、龍之介くんの横で丸くなった。
「ちょっと眠らせてもらうよ。ああ、夢オチで終わらせるつもりは無いから安心してね」
「はい、吾輩さん」
吾輩も眠いので、良く分からない事を口走る。夢オチとは投稿小説で最も嫌われる展開と聞く。終わり方には気を付けなければなるまい。吾輩、むにゃむにゃと夢の中に入っていった。
吾輩、夢の中でベレー帽を被っている。辺りは真っ白だ。画用紙の中に居るような状態である。
吾輩、椅子に腰かけて、絵筆を動かす。ぺたぺたとした感触がある。絵とも言えない落書きが吾輩の周囲に現れる。創作者の頭の中には付き物の、イマジネーションであった。
漱石先生が書いた『夢十夜』は、短くて分かりにくい。中には短編小説のようなものもある。不気味なものもある。書かれたのは『三四郎』の、直前の時期だ。『三四郎』から始まる前期三部作を書く前に、漱石先生は、頭の中のイマジネーションを出してみたかったのかも知れない。
吾輩の周囲に集まるイマジネーションは、おそらく次回作へと活かされるのだろう。創作とは、そういうものである。イマジネーションの連なりから作品は生まれる。そして作品からは、新たなイメージの奔流が生まれるのだ。
川の中で魚が生まれる光景に似ている。水が流れるように、時代は流れる。人が生まれ、そして亡くなる。それだけと言えば、それだけの光景である。愛が無ければ何も見えない。
ドストエフスキーが書いた『罪と罰』の主人公は終盤、大河の流れを見つめる。その周囲で暮らす人々を見る。そしてソーニャという少女への愛を自覚する。そこで物語は終わり、全てが始まるのだ。命とは物語である。愛がある限り、物語という名の命は復活するのだ。
吾輩、絵筆を動かしていた手、というか前足を止めた。背後に気配を感じる。
「そろそろ来る頃だと思ってましたよ、神様」
吾輩、振り返って声を掛ける。以前に出会った、小説の神様がそこに居た。
「ハーイ、猫ちゃん久しぶりー。元気してるー?」
白い輝きが人の形となる。女性と思われる声が吾輩に届いた。
「元気ですよ。そちらは相変わらず、キラキラしてますね。お元気そうで何よりです」
「そう見えるー? これでも色々、苦労してるのよ。神様も原稿作業中は昼夜が逆転しちゃって。おまけに時差ボケって言うのかしら、猫ちゃんが居る時間とズレが生じちゃって」
時差ボケというのは、海外旅行に行った者が苦しむ症状と聞く。吾輩、旅行の経験が無いので良くは知らなかった。
「それはそれは、大変ですね。ズレというのは一体、どれほどの時差ボケなんでしょうか」
「うん。猫ちゃんが居るのは、二〇二一年の七月でしょう? 私が居る時間は、二〇二二年の四月なのよ」
「そうですかー。それはまた、ずいぶんな時差ボケですね」
「猫ちゃんの物語も、第一章は桜が咲く時期から始まったのよねー。こっちの時間は、また桜が綺麗に咲いてるわよ。密が生じないように、パイプ椅子を並べて、そこで花見をするように指示されてるわね」
どうやら花見などは、まだまだ制限されているらしい。猫の吾輩は気楽なもので、何だか申し訳が無い。
「ところで、そういう二〇二二年四月からの報告なんだけどね。前の章で猫ちゃんが言ってたじゃない、『撤退せよ』ってさ。部分的に撤退を始めたわよ、彼が」
「ああ、そうですか。彼が部分的に撤退ですか」
吾輩、寝ぼけていたので、あまり覚えていなかった。さてはて吾輩は何か言いましたかね。
「撤退って言っても、偽装撤退とかも言われてるけどね。油断ならないのよ、彼ったら」
「偽装結婚みたいな言葉の響きですね。お白さんが見てるBLに、そういう単語が出てきてるらしいです」
「BLの話は、嫌いじゃないけど後回しにしましょうか。とにかく、まだ予断を許さない状況ではあるけど、停戦の可能性は高まったんじゃないかしら。そう思いたいわねー」
小説の神様が一つ、溜め息をついた。
「私が本物の、もっと上等な神様だったら、戦争だって止められるのにね。力不足だわ」
神様にも悩みがあるようだ。吾輩、何とか小説の神様を力づけたかった。
「ストレスを溜めるのは良くないですよ。何か気分転換でも、してみては」
「うん、犬の散歩とかも楽しんでるわよ。犬も猫も好きだからね、私」
神様は犬の散歩もしているのかと吾輩、思った。犬嫌いの芥川先生もビックリである。
「今は桜が咲いてるからさ、その下を散歩すると気持ちいいわねー。一応、神様だから花粉症とも縁が無いのよ私」
そう言った後、少し小説の神様は黙り込んだ。どうしたのだろうかと吾輩、反応を待った。
「……私はね、猫ちゃん。猫ちゃんに謝りたい事があるの」
「はぁ、謝りたい事ですか」
何の事であろうか。龍之介くんの前で、夢の中で「エロエロ淫夢」などと口走った事か。
「猫ちゃんの生涯が、一つの小説であるとしてね。その出来事は、作者であったり、小説の神様がコントロールしてるのよ。こう言っても猫ちゃんには、良く分からないだろうけど」
そう言って。少し息を継いでから、神様は続けた。
「だからね。猫ちゃんが幼い時に、親兄弟と別れて死にかけたじゃない? あれも私が、そうコントロールした結果だとしたら……どうする? 猫ちゃんは私を恨むわよね?」
神様は息を呑んで、吾輩の答えを待っている。なので吾輩は答えた。
「恨みませんよ、吾輩」
「……どうして? 理由を聴いていいかしら?」
「だって、それは神様が、最善を尽くした結果なんでしょう。貴女が言う、『もっと上等な神様』だって、世界中の人間を同時には救えないはずですよ」
吾輩は思う。世界には悲劇がある。そして、それは恐らく、神様が最善を尽くした結果なのだ。日本には原子爆弾が二発、落とされた。そして、その犠牲の後に平和が訪れた。
独裁者の彼は、「日本に原子爆弾を落としたのは何処の国だ!」と、憎しみを煽ろうとするかも知れない。しかし試みは上手く行かないだろう。悲しみを乗り越え、平和を維持する事の大切さを独裁者は知らない。恐怖政治でしか国民を操れない者は愛を理解しない。
愛を理解しない者は美しい物語を知らない。日本という国は、彼が思うよりも遥かに成熟しているのだ。ノーベル文学賞作家が出ている所以である。
世の中には、受け入れなければならない事もあるのだ。だから吾輩は何も恨んではいない。
「という訳で、吾輩は恨んでいませんよ。安心してください」
やや言葉足らずの説明だったが、小説の神様は、吾輩の思考を読めるらしい。だから理解はしてもらえるだろうと思った。
「……ありがとう。ありがとう、猫ちゃん」
泣いているような声で小説の神様が言う。神様も泣くんだなぁと吾輩は思った。
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