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そして未来というエピローグへ
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「感想は、どうでしたか。お姉さま?」
後輩の妹達が、そう聞いてくる。私は冷蔵庫に用意していたスポーツドリンクで水分補給を終えてから答えた。
「うん……ありがとうね、私を殺さないでくれて」
大笑いされたけれど、私の本心だった。本当に凄かった。これを繰り返してたら心臓が停まっていたのではないか。四人掛かりというのは無茶だったかも知れない。
「夏休みが楽しみですね、お姉さま」
一年生の妹が、そう言ってくる。私が殺されるとしたら、最年少の、この子が危ないのではないだろうか。体力が違いすぎて、まともには相手をしたくない世代だ。
「心配しなくても、夏休みが終われば、お姉さま達とは綺麗に別れますよ。受験に専念してください。私達は私達で仲良くするんで、大丈夫です」
何ともドライに、二年生の妹達が言う。薄情だなぁと私は苦笑したのだけど、そういう事では無かったらしい。後輩達の視線は、貴子ちゃんへと向けられていた。その貴子ちゃんが、私を見つめながら言ってくる。
「……卒業しても、ずっとずっと、一緒に居てください。嫌だって言われても離れません」
学年二位の優等生だったはずの彼女が、子供みたいな事を言ってくる。可愛らしくて、ベッドの上で私は貴子ちゃんの頭を無意識に撫でていた。「ご、誤魔化されませんよ!」と言いつつも、同い年の妹である彼女は何処か嬉しそうだ。
「お姉さまは、貴子さまを蔑ろにし過ぎなんです。貴子さまの気持ちを真剣に受け止めてください」
後輩の妹が私に、そんな事を言って。「そーだ、そーだ」、「私達は貴子さまの味方ですからね」と残りの二人も続けてくる。何だかクーデターを起こされたみたいだなぁと思って、私は面白くて笑ってしまった。妹の貴子ちゃんは私より、よっぽど人望があるみたいだ。
私達はベッドの上で、下着姿で、こんな事を話している。クーラーが効いているので全く暑くはない。最近は猛暑が続いていて、政府は初めての電力需給逼迫注意報というものを出したけれど、私は私で事態が逼迫している気がした。こういうのを『年貢の納め時』と言うのかなぁとも思った。
もうちょっと、ハーレムプレイを楽しみたいんだけどなぁ。夏休みの間までなら、妹達も私の遊びに付き合ってくれるだろう。さて、その先の事は、どうしようか。
「笑って誤魔化そうとしても駄目ですよ、お姉さま」、「貴子さまを将来も愛するかどうか。ここで、ハッキリさせてください。私達を失望させないで、お姉さま」。
貴子ちゃんと後輩の妹達が口々に言ってくる。結局、私が、どうしたいかで全て決まる。私は自分に恋愛感情が無いのだと思っていたけれど、そうでもないのだと最近は自覚していた。少なくとも私は、貴子ちゃんを傍に置き続けたいと、そう願っている。これから私が、彼女だけを愛し続けるかは分からないけれど、私から別れを切り出す事は絶対に無い。
という訳で、私は貴子ちゃんを生涯、放さないと約束した。それで彼女が幸せになるのかは分からないけど、貴子ちゃんは喜びの涙を流して。後輩の妹達は、私と貴子ちゃんに喝采を送った。結局、私は複数愛者ではなく、只の浮気者に過ぎなかったのだろうか。どうだろうか、その辺りは今も良く分からない。
たぶん複数愛者が完全に納得できる世界というものは、実現は難しいだろう。よその家の人妻を奪えば、それは争いが起こるものだ。結婚制度や社会制度を変えなければ、つまり革命でも起こさなければ無理かも知れない。念入りに計画を練れば、案外、私には可能かも知れないが。
世の独裁者は、よその領土が欲しくて侵略戦争を起こすらしいけれど、今の世の中は人権意識が高くなっているから上手く行かないと思う。私も文芸部でクーデターを起こされてしまった。貴子ちゃんが可哀想だと言って妹達が騒ぐ始末だ。SNS時代は何かと投稿されがちなので気を付けておきたい。
私には今も恋愛感情が、ハッキリとは分からない。だから偉そうな事は言えないし、複数愛を否定もしない。けれど、一対一の愛というものは、そんなに悪いものではないと感じている。
私には革命を起こす力があるかも知れない。多くの犠牲者を出しながら、力ずくで世の中を変えられるかも知れない。だけど目の前の一人を愛して穏当に生きる事もできるかも知れない。
皆が穏当に生きていけるのなら。その時が本当に、世の中が変わる瞬間なのだろうか。私の前で幸せそうに笑う妹達の姿を見ていると、そんな考えが浮かんでくるのだ。
「次、メンデルスゾーンの方を唄いますよ、お姉さま!」
後輩の妹達は、ワーグナーの結婚行進曲を先ほど、アカペラで唄い終えた。歌詞はドイツ語だ。さながら天使の歌声で、内面が肉食獣の私も大いに感銘を受ける。ベッドの上で、私達は弾みながら夜を楽しむ。これまで勉強会を開いてきて、本当に良かったと思った。
「キスしてください、お姉さま……」
すっかり花嫁の顔になった貴子ちゃんが、そう求めてきて、私はリクエストに応える。これまで女の子という名の百合を食んできて、感想としては、女の子の中には愛という成分が入っているのだと私は結論づけた。その成分は肉食獣の私を変質させてしまうほど強力なのだろう。
後輩の妹達が、そう聞いてくる。私は冷蔵庫に用意していたスポーツドリンクで水分補給を終えてから答えた。
「うん……ありがとうね、私を殺さないでくれて」
大笑いされたけれど、私の本心だった。本当に凄かった。これを繰り返してたら心臓が停まっていたのではないか。四人掛かりというのは無茶だったかも知れない。
「夏休みが楽しみですね、お姉さま」
一年生の妹が、そう言ってくる。私が殺されるとしたら、最年少の、この子が危ないのではないだろうか。体力が違いすぎて、まともには相手をしたくない世代だ。
「心配しなくても、夏休みが終われば、お姉さま達とは綺麗に別れますよ。受験に専念してください。私達は私達で仲良くするんで、大丈夫です」
何ともドライに、二年生の妹達が言う。薄情だなぁと私は苦笑したのだけど、そういう事では無かったらしい。後輩達の視線は、貴子ちゃんへと向けられていた。その貴子ちゃんが、私を見つめながら言ってくる。
「……卒業しても、ずっとずっと、一緒に居てください。嫌だって言われても離れません」
学年二位の優等生だったはずの彼女が、子供みたいな事を言ってくる。可愛らしくて、ベッドの上で私は貴子ちゃんの頭を無意識に撫でていた。「ご、誤魔化されませんよ!」と言いつつも、同い年の妹である彼女は何処か嬉しそうだ。
「お姉さまは、貴子さまを蔑ろにし過ぎなんです。貴子さまの気持ちを真剣に受け止めてください」
後輩の妹が私に、そんな事を言って。「そーだ、そーだ」、「私達は貴子さまの味方ですからね」と残りの二人も続けてくる。何だかクーデターを起こされたみたいだなぁと思って、私は面白くて笑ってしまった。妹の貴子ちゃんは私より、よっぽど人望があるみたいだ。
私達はベッドの上で、下着姿で、こんな事を話している。クーラーが効いているので全く暑くはない。最近は猛暑が続いていて、政府は初めての電力需給逼迫注意報というものを出したけれど、私は私で事態が逼迫している気がした。こういうのを『年貢の納め時』と言うのかなぁとも思った。
もうちょっと、ハーレムプレイを楽しみたいんだけどなぁ。夏休みの間までなら、妹達も私の遊びに付き合ってくれるだろう。さて、その先の事は、どうしようか。
「笑って誤魔化そうとしても駄目ですよ、お姉さま」、「貴子さまを将来も愛するかどうか。ここで、ハッキリさせてください。私達を失望させないで、お姉さま」。
貴子ちゃんと後輩の妹達が口々に言ってくる。結局、私が、どうしたいかで全て決まる。私は自分に恋愛感情が無いのだと思っていたけれど、そうでもないのだと最近は自覚していた。少なくとも私は、貴子ちゃんを傍に置き続けたいと、そう願っている。これから私が、彼女だけを愛し続けるかは分からないけれど、私から別れを切り出す事は絶対に無い。
という訳で、私は貴子ちゃんを生涯、放さないと約束した。それで彼女が幸せになるのかは分からないけど、貴子ちゃんは喜びの涙を流して。後輩の妹達は、私と貴子ちゃんに喝采を送った。結局、私は複数愛者ではなく、只の浮気者に過ぎなかったのだろうか。どうだろうか、その辺りは今も良く分からない。
たぶん複数愛者が完全に納得できる世界というものは、実現は難しいだろう。よその家の人妻を奪えば、それは争いが起こるものだ。結婚制度や社会制度を変えなければ、つまり革命でも起こさなければ無理かも知れない。念入りに計画を練れば、案外、私には可能かも知れないが。
世の独裁者は、よその領土が欲しくて侵略戦争を起こすらしいけれど、今の世の中は人権意識が高くなっているから上手く行かないと思う。私も文芸部でクーデターを起こされてしまった。貴子ちゃんが可哀想だと言って妹達が騒ぐ始末だ。SNS時代は何かと投稿されがちなので気を付けておきたい。
私には今も恋愛感情が、ハッキリとは分からない。だから偉そうな事は言えないし、複数愛を否定もしない。けれど、一対一の愛というものは、そんなに悪いものではないと感じている。
私には革命を起こす力があるかも知れない。多くの犠牲者を出しながら、力ずくで世の中を変えられるかも知れない。だけど目の前の一人を愛して穏当に生きる事もできるかも知れない。
皆が穏当に生きていけるのなら。その時が本当に、世の中が変わる瞬間なのだろうか。私の前で幸せそうに笑う妹達の姿を見ていると、そんな考えが浮かんでくるのだ。
「次、メンデルスゾーンの方を唄いますよ、お姉さま!」
後輩の妹達は、ワーグナーの結婚行進曲を先ほど、アカペラで唄い終えた。歌詞はドイツ語だ。さながら天使の歌声で、内面が肉食獣の私も大いに感銘を受ける。ベッドの上で、私達は弾みながら夜を楽しむ。これまで勉強会を開いてきて、本当に良かったと思った。
「キスしてください、お姉さま……」
すっかり花嫁の顔になった貴子ちゃんが、そう求めてきて、私はリクエストに応える。これまで女の子という名の百合を食んできて、感想としては、女の子の中には愛という成分が入っているのだと私は結論づけた。その成分は肉食獣の私を変質させてしまうほど強力なのだろう。
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