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エピローグ
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星宮さんは現在、高校三年生で、もう東京の大学へ推薦入学が決まっているそうで。趣味でマンガを描いていて、幽霊の彼女は『私以上の才能がある』などと言ってたけど、本人は自覚が無いようだ。なので私は大浴場で、一緒に湯に漬かりながら「貴女には才能があるわ。私には分かるの!」と教えてあげた。
「私……友達が居ないんです。連絡先を交換して頂けますか……?」
マンガの話をしていた時と違って、恥ずかしそうに小さな声で星宮さんが言う。こちらが素の性格なのだろう。湯から出て、浴衣に着替えた後も、上気した顔で私に視線を向けてくる。「もちろん」と応じてから、回りくどい遣り取りを省いて私は続けた。
「私、貴女の事が好きよ。四月に東京へ来たら、私を訪ねてきて。大人のレディとして扱ってあげる」
温泉宿の脱衣所で、星宮さんを抱き締める。彼女は何一つ抵抗しない。運命の歯車が噛み合って、大きく動き出す感覚があった。
旅行の最終日となって、私が宿をチェックアウトする時間が近づいている。幽霊の彼女が、ドヤ顔で私の隣に浮かんでいた。
「どう? 全部、上手く行ったでしょう?」
「何が『全部』よ……貴女、成仏しかけてたじゃない。あのまま私から去ってたら、許さなかったからね」
昨日、脱衣所の前で星宮さんと別れてから、幽霊の彼女が消えていく感覚があった。私が念話で呼びかけ続けなかったら、そのまま消滅していたと思う。『念話で呼びかける』と言うと静かなイメージがあるが、むしろ逆で、大音量で私は叫び続けていた。
「あんなに『行かないで!』って求められ続けたら、そりゃあ私は、もう何処にも行けないよ。もう私は成仏できないのかなぁ」
「自分で言ってたじゃない。貴女はファンに取っての神様なのよ。神様は簡単に消えたりしないわ、せめて私の一生を見届けてよ」
世の中には学問の神様だって居るのだ。菅原道真だって全国の受験生から求められて、今も頑張っているのだろう。学問の神様が受験生を支えているように、私はこれからも幽霊の彼女から支えてもらおうと思っている。
星宮さんは、もう一泊するそうだ。その星宮さんが両親の目を盗んで、宿から発つ私を見送りに来てくれた。そんな良い子の彼女に、周囲に目撃されてない事を確認してから、私は深くて長くて甘いキスをしてあげる。
「春になったら、東京で仲良くしましょう。それまで浮気しちゃ駄目よ」
「……はぁい、お姉さま……」
潤んだ瞳が私を見つめる。もう彼女は私に逆らえないんだろうなぁと、他人事のように思った。
私は幽霊の彼女を連れて、宿を離れる。「……悪い大人になったねぇ」と、呆れたように彼女が言う。「そうね、誰の影響かしらね」と返して、更に私は続けた。
「良く言うじゃない。犬や猫と過ごすなら、最後まで面倒を見ないといけないって。私は星宮さんをこれからも愛し続けるわ。だから幽霊の星宮セリナさんも、私に手を出したんだから最後まで面倒を見てよ。人間の星宮さんも幽霊の星宮さんも、私は愛し続けるからさ」
これは二股なのだろうか。でも幽霊、というか神様?の彼女は実体が無いのだから、法に触れるとも思えない。いつか私達は三人で愛し合うのかも。その様子をマンガや小説といった作品で描ければ面白いかもだ。
「うーん、重い女の子に手を出しちゃったなぁ」
「その重さで、貴女は成仏せずに留まれたんだからね。言っておくけど体重は普通よ、私。東京に戻ったら、ちょっと遅い時期だけど初詣にでも行く?」
「えー、やだー。悪霊扱いされて成仏しそうだし」
私は空を見上げる。空は青くて何処までも続く。その奥には見えないけれど星々がある。孤独な星同士が寄り添い合えた奇跡を感じて、私達三人の関係は幸先がいい始め方を迎えたと思った。
「私……友達が居ないんです。連絡先を交換して頂けますか……?」
マンガの話をしていた時と違って、恥ずかしそうに小さな声で星宮さんが言う。こちらが素の性格なのだろう。湯から出て、浴衣に着替えた後も、上気した顔で私に視線を向けてくる。「もちろん」と応じてから、回りくどい遣り取りを省いて私は続けた。
「私、貴女の事が好きよ。四月に東京へ来たら、私を訪ねてきて。大人のレディとして扱ってあげる」
温泉宿の脱衣所で、星宮さんを抱き締める。彼女は何一つ抵抗しない。運命の歯車が噛み合って、大きく動き出す感覚があった。
旅行の最終日となって、私が宿をチェックアウトする時間が近づいている。幽霊の彼女が、ドヤ顔で私の隣に浮かんでいた。
「どう? 全部、上手く行ったでしょう?」
「何が『全部』よ……貴女、成仏しかけてたじゃない。あのまま私から去ってたら、許さなかったからね」
昨日、脱衣所の前で星宮さんと別れてから、幽霊の彼女が消えていく感覚があった。私が念話で呼びかけ続けなかったら、そのまま消滅していたと思う。『念話で呼びかける』と言うと静かなイメージがあるが、むしろ逆で、大音量で私は叫び続けていた。
「あんなに『行かないで!』って求められ続けたら、そりゃあ私は、もう何処にも行けないよ。もう私は成仏できないのかなぁ」
「自分で言ってたじゃない。貴女はファンに取っての神様なのよ。神様は簡単に消えたりしないわ、せめて私の一生を見届けてよ」
世の中には学問の神様だって居るのだ。菅原道真だって全国の受験生から求められて、今も頑張っているのだろう。学問の神様が受験生を支えているように、私はこれからも幽霊の彼女から支えてもらおうと思っている。
星宮さんは、もう一泊するそうだ。その星宮さんが両親の目を盗んで、宿から発つ私を見送りに来てくれた。そんな良い子の彼女に、周囲に目撃されてない事を確認してから、私は深くて長くて甘いキスをしてあげる。
「春になったら、東京で仲良くしましょう。それまで浮気しちゃ駄目よ」
「……はぁい、お姉さま……」
潤んだ瞳が私を見つめる。もう彼女は私に逆らえないんだろうなぁと、他人事のように思った。
私は幽霊の彼女を連れて、宿を離れる。「……悪い大人になったねぇ」と、呆れたように彼女が言う。「そうね、誰の影響かしらね」と返して、更に私は続けた。
「良く言うじゃない。犬や猫と過ごすなら、最後まで面倒を見ないといけないって。私は星宮さんをこれからも愛し続けるわ。だから幽霊の星宮セリナさんも、私に手を出したんだから最後まで面倒を見てよ。人間の星宮さんも幽霊の星宮さんも、私は愛し続けるからさ」
これは二股なのだろうか。でも幽霊、というか神様?の彼女は実体が無いのだから、法に触れるとも思えない。いつか私達は三人で愛し合うのかも。その様子をマンガや小説といった作品で描ければ面白いかもだ。
「うーん、重い女の子に手を出しちゃったなぁ」
「その重さで、貴女は成仏せずに留まれたんだからね。言っておくけど体重は普通よ、私。東京に戻ったら、ちょっと遅い時期だけど初詣にでも行く?」
「えー、やだー。悪霊扱いされて成仏しそうだし」
私は空を見上げる。空は青くて何処までも続く。その奥には見えないけれど星々がある。孤独な星同士が寄り添い合えた奇跡を感じて、私達三人の関係は幸先がいい始め方を迎えたと思った。
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