幸先がいい始め方

転生新語

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1 信者は作者(かみさま)に逆らえない

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 幽霊の彼女が生前に通っていた温泉宿は、私も以前に泊まった事があった。その時の私は高校三年生で、当時は両親に連れてきてもらっていた。その当時から私はマンガが好きで、そして友達なんか居なくて同性愛者で。色々とこじらせていた私は、一昔前に発行されていた愛読書のマンガ単行本を片手に、宿の中を一人でウロウロしてて。

『あ! それ、私が描いたマンガじゃない!』

 だからなのか、こんな風に、幽霊の彼女から声を掛けられてしまった。普通なら驚いて悲鳴の一つでもあげるんだろうけど、すんなり受け入れてしまったのは、たぶん私も人恋ひとこいしかったのだと思う。幽霊でも何でもいいから、誰かと心をかよわせたかった。まして相手が、私が大好きなマンガの作者であるというなら尚更なおさらだ。

 彼女は温泉宿に長く居た幽霊らしいけど、その宿からはあっさり離れて私の家まで付いてきた。私以外の目には見えなくて、あっという間に私と彼女は深い仲になってしまって。肉体的には、まだ私は処女だけれど、もう口に出すのもはばかられるほど色々な事をされてしまって現在に至る。

「宿に着いたねー。あー、懐かしいなぁ、この感じ」

 幽霊の彼女が、チェックインを終えて入った和室の中で伸びをする。ところで私の目に彼女が、どう映っているかと言うと、立体的なマンガのキャラクターみたいな感じだ。ただ、もっと実写的で、幽霊というよりは天使のようなイメージ。黄金のオーラに包まれてて、神様の使いだと言われたら誰もが信じそうな姿である。実際は私の体に悪戯いたずらを繰り返す存在だけど。

 そんなリラックスした彼女のそばで、私は落ち着かなかった。まだ太陽は高くて夜には程遠ほどとおいけれど、『姫初めの前の、軽い遊び』と称して毎日、アパートで私は彼女から体をいじられてて。もう早く、私はとどめをしてほしかったのだ。どうか私を組み伏せて屈服させてください。

「もう……いいでしょ。早く、して……」

「ん。じゃあ服を脱いで、布団ふとんに入って。浴衣もあるけど、着るのは後でいいよね。どうせ脱がすんだから」

 指示通り、私はキャミソール一枚の姿になって、敷いておいた布団の中に入った。仮に仲居なかいさんが部屋に来ても、一人で寝ているようにしか見えないはずだ。幽霊の彼女には実体が無いから、布団がモコモコ動いたりもしない。

 たぶん変な顔になるから、彼女以外の誰にも見られないように、私は布団の中に身を隠した。「はい、声が出ないように、口はふさがないとね」と彼女が、ディープキスで私の口内に侵入する。これで私は絶対に声を出せない。この状態で彼女は、何時間でも私を虐める事ができる。

 いつの間にか、布団の中は異空間になる。夢の中に居るのだと、理屈では分かっているのに、体感がリアルすぎて眠っている感覚なんか無い。そして夢の中だから、私は宙に浮かんでいてからかこまれている。彼女は分身する事ができて、私の口をキスで塞ぎながら、更に別の彼女達が私の両耳を左右から舌でいじる。

 くすくす笑う彼女の声が、言いようもなく気持ちいい。私は仰向けに浮かんでいて、体の前側からも後ろ側からも彼女が来る。手も足も複数の彼女達からおさえられて、百本以上の彼女の指が私をまさぐってくる。複数の舌の感触。夢の中だから気絶もできなくて、長い間、私は彼女から可愛がられた後に解放してもらった。
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