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第四章 分岐点
道のりは
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「そういや俺らはここまで徒歩で来たけどよ、旅するなら牛馬車は使わねえの?」
クルク村を出て少し、イツキさんがふとそんな事を言った。
「どうなんでしょう?」
「いや聞かれても困るが……そうだな、まあ急ぐ事も無ければ歩き旅も楽しいけど長いからな。俺らは乗合牛馬車とか商人の片道の護衛依頼とか受けて移動したりもするけど、あとはまあ徒歩でも道無き道を突っ切ってけば……」
「最後のはオススメしないわ。獣道すらろくにない所を突っ切るのは相応の実力が無ければ危険だもの」
と、フードを外しているメイさんが言う。
「それに商人の護衛は力と、盗賊なんかと繋がっていないかという心配もあるから一定以上の信頼も得ていないと受けられないよ。最低でもDランクで、多くはC以上の指定かな」
それにフールさんが付け加える。
「とはいえコンがいればそんな心配は要らねぇか。いざとなりゃコンに乗せて飛んでもらえばいいんじゃね?」
「うーん、コン?」
「うむ、我は構わぬぞ」
コンは大きく頷いてくれたけど、でもコンだとちょっと早くなりすぎる気がした。
「まあ今すぐ決めなくてもいいかな」
結果、今は歩いて行くことに落ち着いた。
そもそも今すぐ決めるべき事でもなく、僕もソフィも歩く事を苦としない上に急ぐ必要もないから問題が出るまでこのままでいいかなと。
「にしてもその狼、ユンだっけ?凄く人懐っこいよな」
イツキさんがそう言って手招きすると、ユンは近付いてワシワシと大きく撫で回す手に気持ちよさそうに身を委ねる。
「ユンはまだ赤ん坊ぐらいの頃に出会って、人に慣れてますから」
「ふぅん。まあこんな、なんだ、特異な狼が人に懐いててほんと良かったわ」
「あ、あはは」
苦々しく笑うイツキさんに、僕も苦笑いで返す。
イツキさん程の魔法使いになれば見るだけである程度の力量を図ることが出来るらしいのだけど、こんな狼はそれこそ『モンスター』のボスくらいだとか。
「そう言えばイツキさん達は魔物とか、あとモンスターとも戦った事があるんですよね?」
「まぁな。話聞きたいか?」
「はい!」
「私も聞きたいです!」
僕とソフィが期待を込めてイツキさんを見つめると、イツキさんは苦笑した。
「まあ話す分には構わないけど、そうだな。冒険者になるんだったら『迷宮』について幾らか知っておいた方がいいよな」
「たぶん学校で習ったとは思うが、まず魔物とモンスターの違いはわかるか?」
「魔物は魔法を使える動物を指す言葉で、モンスターは迷宮内部でのみ現れる特殊な生態をもつものです」
「そうだ。あともう少し付け加えると魔物ってのは亜人種、この場合は獣人とかの人から派生した種族ではなく、人型であるが人とは違うルーツをもつ生物の事で、ゴブリンとかコボルトとか魔法を使わなくても魔法で変質したと思われる特徴を持つものも魔物と呼ばれるな」
「はい」
「んでモンスターってのはこれまでの研究から外の生物を真似た『命無き命持つもの』であり、恐らくは特殊なゴーレムの一種ではないかというのが今主流の考え方だな。そのためか殺せば体の殆どは溶けて無くなるけどその一部は残るからそれを『落し物』と呼んで、その中でも魔石だけは確定の落し物として知られるから一定以上の力を持つ『ボスモンスター』なんかの討伐証明は魔石の提出で済むこともある」
「ゴーレム?」
「その辺は学者の領域だから、冒険者はあれは生き物ではないという認識だけあればいいさ」
イツキさんはそこまで話すと「だけど」と付け加える。
「そもそもお前らは戦うんじゃなくて旅する事が目的だし、迷宮はいつか力をつけてから挑みな。迷宮は逃げも隠れもしないから、戦いの道を進むと決めたのなら歓迎してくれるさ」
そう言ってニッと笑う。
「んじゃ少しばかり話そうか。そうだな、まずはーー」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
迷走気味だったので上げました。
クルク村を出て少し、イツキさんがふとそんな事を言った。
「どうなんでしょう?」
「いや聞かれても困るが……そうだな、まあ急ぐ事も無ければ歩き旅も楽しいけど長いからな。俺らは乗合牛馬車とか商人の片道の護衛依頼とか受けて移動したりもするけど、あとはまあ徒歩でも道無き道を突っ切ってけば……」
「最後のはオススメしないわ。獣道すらろくにない所を突っ切るのは相応の実力が無ければ危険だもの」
と、フードを外しているメイさんが言う。
「それに商人の護衛は力と、盗賊なんかと繋がっていないかという心配もあるから一定以上の信頼も得ていないと受けられないよ。最低でもDランクで、多くはC以上の指定かな」
それにフールさんが付け加える。
「とはいえコンがいればそんな心配は要らねぇか。いざとなりゃコンに乗せて飛んでもらえばいいんじゃね?」
「うーん、コン?」
「うむ、我は構わぬぞ」
コンは大きく頷いてくれたけど、でもコンだとちょっと早くなりすぎる気がした。
「まあ今すぐ決めなくてもいいかな」
結果、今は歩いて行くことに落ち着いた。
そもそも今すぐ決めるべき事でもなく、僕もソフィも歩く事を苦としない上に急ぐ必要もないから問題が出るまでこのままでいいかなと。
「にしてもその狼、ユンだっけ?凄く人懐っこいよな」
イツキさんがそう言って手招きすると、ユンは近付いてワシワシと大きく撫で回す手に気持ちよさそうに身を委ねる。
「ユンはまだ赤ん坊ぐらいの頃に出会って、人に慣れてますから」
「ふぅん。まあこんな、なんだ、特異な狼が人に懐いててほんと良かったわ」
「あ、あはは」
苦々しく笑うイツキさんに、僕も苦笑いで返す。
イツキさん程の魔法使いになれば見るだけである程度の力量を図ることが出来るらしいのだけど、こんな狼はそれこそ『モンスター』のボスくらいだとか。
「そう言えばイツキさん達は魔物とか、あとモンスターとも戦った事があるんですよね?」
「まぁな。話聞きたいか?」
「はい!」
「私も聞きたいです!」
僕とソフィが期待を込めてイツキさんを見つめると、イツキさんは苦笑した。
「まあ話す分には構わないけど、そうだな。冒険者になるんだったら『迷宮』について幾らか知っておいた方がいいよな」
「たぶん学校で習ったとは思うが、まず魔物とモンスターの違いはわかるか?」
「魔物は魔法を使える動物を指す言葉で、モンスターは迷宮内部でのみ現れる特殊な生態をもつものです」
「そうだ。あともう少し付け加えると魔物ってのは亜人種、この場合は獣人とかの人から派生した種族ではなく、人型であるが人とは違うルーツをもつ生物の事で、ゴブリンとかコボルトとか魔法を使わなくても魔法で変質したと思われる特徴を持つものも魔物と呼ばれるな」
「はい」
「んでモンスターってのはこれまでの研究から外の生物を真似た『命無き命持つもの』であり、恐らくは特殊なゴーレムの一種ではないかというのが今主流の考え方だな。そのためか殺せば体の殆どは溶けて無くなるけどその一部は残るからそれを『落し物』と呼んで、その中でも魔石だけは確定の落し物として知られるから一定以上の力を持つ『ボスモンスター』なんかの討伐証明は魔石の提出で済むこともある」
「ゴーレム?」
「その辺は学者の領域だから、冒険者はあれは生き物ではないという認識だけあればいいさ」
イツキさんはそこまで話すと「だけど」と付け加える。
「そもそもお前らは戦うんじゃなくて旅する事が目的だし、迷宮はいつか力をつけてから挑みな。迷宮は逃げも隠れもしないから、戦いの道を進むと決めたのなら歓迎してくれるさ」
そう言ってニッと笑う。
「んじゃ少しばかり話そうか。そうだな、まずはーー」
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迷走気味だったので上げました。
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