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第四章 分岐点

分岐点

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「どうしようかなぁ」

 夜、僕は揺り椅子に揺られながらコンが側にいない事に若干の寂しさを覚えつつも昼にお父さんの言葉を反芻する。
 旅に出るか、というのはこの前の騒ぎとは何の関係もなくて、元々村としての決まりの一つに「子供に必要な財産と力があれば外へ行く機会を与えよう」といったものがあるらしくて、それに該当したから話を持ち出しただけらしいのだ。
 それを今持ち出したのは冒険者であるイツキさん達が居るからで、明日の晩にでも旅に必要な事を聞けるからだそう。

 正直、旅に出ることに興味がないと言えば嘘になる。
 僕はよく欲がない、欲がないと言われるけど憧れぐらいは持っている。
 竜と戦う冒険者の話、国一つを救った旅人の話、それに今の世界の基盤を作った英雄スウェーレン・セーゼントの話。
 どれも世界を旅した人の話ばかりで、僕だってこんな旅をしてみたいと思う。
 もちろんこんな事がそうそう起きない事はわかっているし、そんな事が出来るような力も僕にはない事はわかっているけど憧れて夢見るぐらいはする。

 でも、やっぱり旅する事への不安も大きい。
 僕がコン達と旅に出てもどうしたらいいのかわからず途方に暮れるかもしれない。
 旅をした結果何も得るものがないかもしれない。
 それになにより、僕がこの村を一人で出たら寂しくて仕方がない気がする。
 僕はこの村が好きだし、仕事にも生活にも人間関係にも満足しているから、これ以上何が必要なのかと考えても全く浮かぶ事が無かった。

 そうして思考が憧れと不安でグルグルと回り続ける。

「ねぇコン?………………コン?」

 とりあえず相談してみようとコンを呼んでみたけれど、何故か何時もの返事が来ない。

「あ、そっか。コンは今イツキさん達と居るんだよね」

 コンが居ない事を思い出し、そして気が付けば右手が何もない空中を無意識に撫でていた事に気が付く。
「すっかりコンが居る事に慣れちゃってるなぁ」
 そう呟いて苦笑すると、何だか少しだけ悩みを忘れる事が出来た。



 それから少し、僕は旅に出るか出ないか悩んで、悩んで、悩んで……気がつくと眠っていた。


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