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第四章 分岐点
社会情勢
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父方の祖父母が来てから一週間が過ぎた。
あの事件は結局コンの機転により全てが解決してしまっていた。
まず彼等が帰ったあとすぐメルクさんに連絡して、詳しい内容は教えてくれなかったけど、要約すると「もう二度と僕達と関わるな」という事を厳命したらしい。
それとは別に彼らは鞍職人の情報を探してコンが直接聞きに行って約束の魔剣を手渡したそうだけど、あまりの性能のためすぐに国王様に献上してからの、国でも所持していられないとのことですぐにコンの元に戻る事になったみたい。
「ようやく1つ手放せたと思ったのだが」
とコンが少々残念そうに言っていたので「他にどんな武器を持ってるの?」と興味本位で聞いてみたりもした。
「如何なる強風が吹いていようとも千キロ先まで寸分違わぬ光の矢を着弾させることの出来る弓『光弓』、投擲すれば真っ黒い質量持つ小さな球体を幾つも四方八方に飛ばし、巨大な闇の爆発を槍の着弾点と飛ばした球体が引き起こす魔槍『グングニル』、海に叩き付ければ周囲10キロ四方の水が吹き飛ぶほどの爆発を起こす爆槌『玉屋』、それに……」
とまあ、あまりにとんでもない性能の武器の数々を所有していることがわかった。
しかもこれコン曰く「持っている武具全てに魔力を込めて制御を外しこの場にバラ撒くだけで大陸の半分は吹き飛ぶ」そうだ。
これらと比べると増幅の剣もかなりの逸品のはずなのに、全然大したことないなって思うのは仕方が無いことなのかな?
まあそんなこんながあって今、僕とコンは自室でノンビリ揺り椅子に座っていた。
「なあロイよ、一つ聞きたいことがあるのだが良いか?」
「ん、なーに?」
背中を撫でられながら尻尾を左右に振るコンがふとそんなことを言う。
「いやなに大したことではない、ただ今の社会情勢を知りたいのだ」
「今のって事は、どれくらい前の事なら知ってるの?」
「うむ、確か今から二百年程前の魔王就任の頃だろうか」
「魔王就任って、もしかしてあの『最強の子供魔王』?」
「ふ、あの弱虫魔王は未だ子供姿か」
「もしかしてコン、知り合いなの?」
「うむ。魔王は就任した際我が元にこの地域を支配させていただきますと挨拶に来るのでな」
「……コンって凄いなぁ、超越者のセーゼントさん、知と開闢の神で主神のアルフレシア様、それに最強の子供魔王のカスベルト・ヴォルケンド・ヘクトリアさんと知り合いなんて」
「うむ、他にも知り合いは居るが、基本的にどこぞの重鎮ばかりであるな」
そう得意気に言うコンの知り合いが他に誰が居るのか気になったけれど、あまり聞き過ぎるとまたセーゼントさんのように夢が壊れそうだからやめておく事にした。
「えっと、それじゃあ今の社会情勢だったよね?」
「うむ、出来れば我の認識と齟齬があるかも知れぬのでな、基本的な所から説明を頼みたい」
「わかった」
とは言ったものの、実際そんなに変わりは無いんじゃないかなと思うけれど。
「今も昔も大まかな世界地図に変わりはないかな?この大陸の北が『魔国』、南が『人国』、西が『獣国』、東が『妖国』だね。北はコンの知っている魔王が今も治めてて、人国は中心が居なくて、獣国は確か3年前に獣王が変わって、東は巫女っていう人が中心のままかな?」
「まず人国は全部の国の人型の先祖である『人間』が治めている土地で、一番利権とかの争いが絶えないって習ったよ」
「あまり変わりがないようだな」
「あ、でも二百年前なら『四大ダンジョン』の一つ『欲望の迷宮』が丁度この国のルルトって所に出来た頃かな?」
「うむ、丁度魔王就任時であったから人国に迷宮が出来た話は聞いておったが、そうかこの国にあったのだな」
「うん。その話は後にして先に他の三国の話をするね」
「頼む」
「それで魔国は『魔族』っていうエルフやドワーフに巨人族なんかが過ごす土地で、人国とは凄く仲が悪いけど、今の魔王になってからはイザコザは格段に減ったらしいよ」
「うむ、あやつは穏健派……というより争い事をとことん嫌っておるからな」
「そうらしいね。色んな種族が住んでいるからそれなりの知識があって、それでいて魔国の魔族で最も強い人が魔王になって魔国全体を治めるんだよね」
「うむ。あやつは力は無駄に持っておったからな」
「獣国は動物と人間が混ざったような『獣人』が治める土地で、種族的に凄く社交的だから全ての国と取引をする唯一の国だね」
「確かに獣人は心が広い」
「あ、でも確か30年前に……えっと、確か『オーク騒動』があってね、その影響で獣人の前で『オーク』って口に出すとその場で処刑されるかもしれないって習ったよ」
「ふむ、どういうものだ?」
「確か50年前に猪の獣人を指してオークって言った人が居たらしくて、オークは凶暴で乱暴に性的行為を行うとか何とかっていう意味があったらしくてね、それが大陸中で広がっていつの間にか『オーク=獣人は乱暴者』ってイメージに繋がって、獣人全てに対する最悪の蔑称になったんだ」
「ふむ、50年と30年……つまり落ち着いたのが30年前というところか?」
「そうだよ。主に人国の中の『テネート聖教国』って所がそのオーク騒動に乗っかって『獣人は排除しなければならない』みたいなことを言ってたらしくて」
「うむ、大まかに把握した」
「それで最後に妖国だけど、よく『東国』とも呼ばれるかな。この国は他の三国と比べても凄く異質で『巫女』を中心として『妖怪』『妖魔』『妖』なんてよばれる魔物とはまた違って『妖術』っていう魔法と似てるけど違う力を使う種族が住んでいるらしいよ」
「ふむ、では妖について少し説明を頼んでよいか?」
「うんいいよ。と言っても詳しくは知らないんだけど、妖怪の中で特に有名なのは『妖術の妖狐』、『怪力の鬼』、あと妖怪では無いけど妖術を使う人間の『陰陽師』っていう所かな?」
「ふむ、他に特徴はあるか?」
「あそこは少し閉鎖的な所があるからあんまり知ってる事は無いんだけど、でもその分確か……何だったかな?ニホンから来たっていう旅人がよく集まる地でね、独特な文化があるんだって!」
「日本、か……」
「どうしたの、そんな苦そうな顔して?」
「いや、何でもないぞ?」
「そっか」
「まあこんなところかな?」
「大変わかりやすかったぞ、ロイよ」
「それならよかった」
あの事件は結局コンの機転により全てが解決してしまっていた。
まず彼等が帰ったあとすぐメルクさんに連絡して、詳しい内容は教えてくれなかったけど、要約すると「もう二度と僕達と関わるな」という事を厳命したらしい。
それとは別に彼らは鞍職人の情報を探してコンが直接聞きに行って約束の魔剣を手渡したそうだけど、あまりの性能のためすぐに国王様に献上してからの、国でも所持していられないとのことですぐにコンの元に戻る事になったみたい。
「ようやく1つ手放せたと思ったのだが」
とコンが少々残念そうに言っていたので「他にどんな武器を持ってるの?」と興味本位で聞いてみたりもした。
「如何なる強風が吹いていようとも千キロ先まで寸分違わぬ光の矢を着弾させることの出来る弓『光弓』、投擲すれば真っ黒い質量持つ小さな球体を幾つも四方八方に飛ばし、巨大な闇の爆発を槍の着弾点と飛ばした球体が引き起こす魔槍『グングニル』、海に叩き付ければ周囲10キロ四方の水が吹き飛ぶほどの爆発を起こす爆槌『玉屋』、それに……」
とまあ、あまりにとんでもない性能の武器の数々を所有していることがわかった。
しかもこれコン曰く「持っている武具全てに魔力を込めて制御を外しこの場にバラ撒くだけで大陸の半分は吹き飛ぶ」そうだ。
これらと比べると増幅の剣もかなりの逸品のはずなのに、全然大したことないなって思うのは仕方が無いことなのかな?
まあそんなこんながあって今、僕とコンは自室でノンビリ揺り椅子に座っていた。
「なあロイよ、一つ聞きたいことがあるのだが良いか?」
「ん、なーに?」
背中を撫でられながら尻尾を左右に振るコンがふとそんなことを言う。
「いやなに大したことではない、ただ今の社会情勢を知りたいのだ」
「今のって事は、どれくらい前の事なら知ってるの?」
「うむ、確か今から二百年程前の魔王就任の頃だろうか」
「魔王就任って、もしかしてあの『最強の子供魔王』?」
「ふ、あの弱虫魔王は未だ子供姿か」
「もしかしてコン、知り合いなの?」
「うむ。魔王は就任した際我が元にこの地域を支配させていただきますと挨拶に来るのでな」
「……コンって凄いなぁ、超越者のセーゼントさん、知と開闢の神で主神のアルフレシア様、それに最強の子供魔王のカスベルト・ヴォルケンド・ヘクトリアさんと知り合いなんて」
「うむ、他にも知り合いは居るが、基本的にどこぞの重鎮ばかりであるな」
そう得意気に言うコンの知り合いが他に誰が居るのか気になったけれど、あまり聞き過ぎるとまたセーゼントさんのように夢が壊れそうだからやめておく事にした。
「えっと、それじゃあ今の社会情勢だったよね?」
「うむ、出来れば我の認識と齟齬があるかも知れぬのでな、基本的な所から説明を頼みたい」
「わかった」
とは言ったものの、実際そんなに変わりは無いんじゃないかなと思うけれど。
「今も昔も大まかな世界地図に変わりはないかな?この大陸の北が『魔国』、南が『人国』、西が『獣国』、東が『妖国』だね。北はコンの知っている魔王が今も治めてて、人国は中心が居なくて、獣国は確か3年前に獣王が変わって、東は巫女っていう人が中心のままかな?」
「まず人国は全部の国の人型の先祖である『人間』が治めている土地で、一番利権とかの争いが絶えないって習ったよ」
「あまり変わりがないようだな」
「あ、でも二百年前なら『四大ダンジョン』の一つ『欲望の迷宮』が丁度この国のルルトって所に出来た頃かな?」
「うむ、丁度魔王就任時であったから人国に迷宮が出来た話は聞いておったが、そうかこの国にあったのだな」
「うん。その話は後にして先に他の三国の話をするね」
「頼む」
「それで魔国は『魔族』っていうエルフやドワーフに巨人族なんかが過ごす土地で、人国とは凄く仲が悪いけど、今の魔王になってからはイザコザは格段に減ったらしいよ」
「うむ、あやつは穏健派……というより争い事をとことん嫌っておるからな」
「そうらしいね。色んな種族が住んでいるからそれなりの知識があって、それでいて魔国の魔族で最も強い人が魔王になって魔国全体を治めるんだよね」
「うむ。あやつは力は無駄に持っておったからな」
「獣国は動物と人間が混ざったような『獣人』が治める土地で、種族的に凄く社交的だから全ての国と取引をする唯一の国だね」
「確かに獣人は心が広い」
「あ、でも確か30年前に……えっと、確か『オーク騒動』があってね、その影響で獣人の前で『オーク』って口に出すとその場で処刑されるかもしれないって習ったよ」
「ふむ、どういうものだ?」
「確か50年前に猪の獣人を指してオークって言った人が居たらしくて、オークは凶暴で乱暴に性的行為を行うとか何とかっていう意味があったらしくてね、それが大陸中で広がっていつの間にか『オーク=獣人は乱暴者』ってイメージに繋がって、獣人全てに対する最悪の蔑称になったんだ」
「ふむ、50年と30年……つまり落ち着いたのが30年前というところか?」
「そうだよ。主に人国の中の『テネート聖教国』って所がそのオーク騒動に乗っかって『獣人は排除しなければならない』みたいなことを言ってたらしくて」
「うむ、大まかに把握した」
「それで最後に妖国だけど、よく『東国』とも呼ばれるかな。この国は他の三国と比べても凄く異質で『巫女』を中心として『妖怪』『妖魔』『妖』なんてよばれる魔物とはまた違って『妖術』っていう魔法と似てるけど違う力を使う種族が住んでいるらしいよ」
「ふむ、では妖について少し説明を頼んでよいか?」
「うんいいよ。と言っても詳しくは知らないんだけど、妖怪の中で特に有名なのは『妖術の妖狐』、『怪力の鬼』、あと妖怪では無いけど妖術を使う人間の『陰陽師』っていう所かな?」
「ふむ、他に特徴はあるか?」
「あそこは少し閉鎖的な所があるからあんまり知ってる事は無いんだけど、でもその分確か……何だったかな?ニホンから来たっていう旅人がよく集まる地でね、独特な文化があるんだって!」
「日本、か……」
「どうしたの、そんな苦そうな顔して?」
「いや、何でもないぞ?」
「そっか」
「まあこんなところかな?」
「大変わかりやすかったぞ、ロイよ」
「それならよかった」
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