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第三章 農民が動かす物語
誕生日の朝
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王様から売上報告を受けてから2日が過ぎた朝、僕は何時もより軽い足取りで畑へと向かう。
「ふんふふ~ん、ふ~ん♪」
「今日はやけに上機嫌だな」
何となく思いつくまま適当な鼻歌を歌いながら野菜の水やりをしていると、コンが不思議そうに尋ねてきた。
「うん!だって今日は僕の誕生日だもん!」
「ほう、誕生日か。それはめでたいことだ」
「ありがとう、コン」
ちょっと口調は固いけど、コンがお祝いしてくれてるんだとわかって嬉しくなる。
「あ、でもこの事他の人には言わないでよ?」
「む、なぜだ?めでたい事なのだ、皆に祝ってもらえばいいのではないか?」
意味がわからないと首を傾げるコンに僕は笑いながら言う。
「そうなんだけど、皆僕自身が毎年自分の誕生日だけ忘れてるって思ってるから忘れてる事にしてるんだ。だから皆毎年僕を驚かそうと色々と準備をしてるからそれを台無しにはしたくなくて」
「ロイよ、何故そうなっているのだ?」
「それはね、本当に10歳になるまでは毎年自分の誕生日を忘れちゃってたんだけど、11歳になった時は覚えてたけど皆が黙って準備してるから覚えてることを言うのが悪いなーって思っちゃって、それからずっと言わずに過ごしてるんだよね」
「了解した。だがなロイよ、忘れてなければ来年からはちゃんと覚えていると言うべきだぞ?でなければ皆の期待を裏切っている事になるんだからな」
「うん、次から気を付けるよ」
《ソフィside》
今日はロイ君の誕生日、今年も自分の誕生日を忘れているだろうロイ君を祝う為に同い年の皆とロイ君の家族で準備をする。
「今年も覚えてないみたいだよ」
朝食を食べ終えて家を出ると学校に向かうミリィちゃんにそう言われた。
「今年も忘れてたの?そうだと思って毎年準備してるけど、やっぱり忘れ過ぎだよね」
「でもお兄ちゃんだから。朝話してる時も本当にいつも通りなんだもん」
「うーん、でもミリィちゃんがそう思うならそうだよね」
「あ、私もう行くねー」
「行ってらっしゃい」
「ソフィ、今年もロイのとこで食ってくんのか?」
ミリィちゃんを見送ったあと、兄のレンが言った。
「そうする予定だよ。レンは訓練頑張ってね」
「う、せめて着くまでは考えたくなかったのに……」
今年18になった兄は春から村の自警団として働く事になっている。
平和な村だけど過去に狼に襲われたことがあるらしいので、主にそういった動物達の相手をするために体を鍛えておく必要があるのだ。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
そして兄を見送ったあと、私は居間からのそのそと歩いて来たルーちゃんを抱き上げる。
「ロイ君、喜んでくれるかな?」
「キュルル」
「ふんふふ~ん、ふ~ん♪」
「今日はやけに上機嫌だな」
何となく思いつくまま適当な鼻歌を歌いながら野菜の水やりをしていると、コンが不思議そうに尋ねてきた。
「うん!だって今日は僕の誕生日だもん!」
「ほう、誕生日か。それはめでたいことだ」
「ありがとう、コン」
ちょっと口調は固いけど、コンがお祝いしてくれてるんだとわかって嬉しくなる。
「あ、でもこの事他の人には言わないでよ?」
「む、なぜだ?めでたい事なのだ、皆に祝ってもらえばいいのではないか?」
意味がわからないと首を傾げるコンに僕は笑いながら言う。
「そうなんだけど、皆僕自身が毎年自分の誕生日だけ忘れてるって思ってるから忘れてる事にしてるんだ。だから皆毎年僕を驚かそうと色々と準備をしてるからそれを台無しにはしたくなくて」
「ロイよ、何故そうなっているのだ?」
「それはね、本当に10歳になるまでは毎年自分の誕生日を忘れちゃってたんだけど、11歳になった時は覚えてたけど皆が黙って準備してるから覚えてることを言うのが悪いなーって思っちゃって、それからずっと言わずに過ごしてるんだよね」
「了解した。だがなロイよ、忘れてなければ来年からはちゃんと覚えていると言うべきだぞ?でなければ皆の期待を裏切っている事になるんだからな」
「うん、次から気を付けるよ」
《ソフィside》
今日はロイ君の誕生日、今年も自分の誕生日を忘れているだろうロイ君を祝う為に同い年の皆とロイ君の家族で準備をする。
「今年も覚えてないみたいだよ」
朝食を食べ終えて家を出ると学校に向かうミリィちゃんにそう言われた。
「今年も忘れてたの?そうだと思って毎年準備してるけど、やっぱり忘れ過ぎだよね」
「でもお兄ちゃんだから。朝話してる時も本当にいつも通りなんだもん」
「うーん、でもミリィちゃんがそう思うならそうだよね」
「あ、私もう行くねー」
「行ってらっしゃい」
「ソフィ、今年もロイのとこで食ってくんのか?」
ミリィちゃんを見送ったあと、兄のレンが言った。
「そうする予定だよ。レンは訓練頑張ってね」
「う、せめて着くまでは考えたくなかったのに……」
今年18になった兄は春から村の自警団として働く事になっている。
平和な村だけど過去に狼に襲われたことがあるらしいので、主にそういった動物達の相手をするために体を鍛えておく必要があるのだ。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
そして兄を見送ったあと、私は居間からのそのそと歩いて来たルーちゃんを抱き上げる。
「ロイ君、喜んでくれるかな?」
「キュルル」
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