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第二章 混沌竜の契約者
揚げられたパン
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「「「「「「「いただきます!」」」」」」」
僕の家族とコンにメルクさんとノトさんを加えた7名で食卓を囲む。
ユンは僕の後ろで寛いでいる。
「ふむ、素朴だがとても美味しい」
今メルクさんはハータと言う白身魚の塩焼きを食べている。
「これ、私が今日釣ってきたの!」
と、晩ごはん用にメルクさんを案内している間コルク川で魚釣りをしていたミリィが自慢気に言う。
「なるほど、捕れたてだったのか!」
「うん!」
それにちょっと驚いて見せるメルクさんにミリィは笑顔になる。
「こちらの揚げ物にしたハータもおいしいですね」
卓袱台の中心の大皿に盛られた揚げ物を食べるノトさんも興味深げに食べている。
「やはり新鮮な物は良いですな。王都では何日か過ぎた物しか食べられませんから」
「そうなのですか?」
「はい。様々な食材は入ってくるのですが、やはり距離の問題はどうしようもなく」
母さんの質問にノトさんが答える。
国王様と総務大臣という身分の2人だったから心配だったけど、この村の食事を気に入ってくれたみたいだった。
そしてご飯を食べ終えた後、僕は竈に火を着ける準備をしながら聞く。
「その、食後に甘い物は如何ですか?」
鍋の揚げ物用の油を専用の入れ物に入れて洗い、新しい油を注ぐ。
「ふむ、それが先程言っておったものか?」
「はい」
「では作る所を見てても良いか?」
「どうぞ」
そう言うとメルクさんは台所に来た。
僕は油が熱せられるまで待ち、それからご飯用とは別に用意していたパンを取り出す。
「パンを取り出してどうするのだ?」
「あ、このパンを軽く揚げるんです」
「ほう、パンを揚げると……パンを揚げるのか!?」
そう言って驚くメルクさんに、僕もこれが美味しいとは信じられなかったなぁと思いつつ、約10秒ちょっと揚げてから取り出す。
それから砂糖を取り出したら全体にまぶして完成させる。
「出来ました」
「それが美味しいのか……?」
「はい。ちょっと信じられないかもしれませんが、美味しいですよ」
そう言ってミリィに皆の分を作って居間に持って行ってもらう。
それからメルクさんとノトさんは目の前に置かれた揚げて砂糖をまぶしたパンを少々食べるのを躊躇していたが、すぐに覚悟を決めたのか手を伸ばす。
「い、いただきます」
そして、揚げたパンを一口食べる。
「こ、これはうまい!なるほど、元々焼いていたからこそ短い時間では中に油が浸透することなく揚げられ、外は程よい固さで中はふんわりしていてとても美味しい!」
「なるほど、焼いたパンをもう一度揚げるとこのような物になるのですね」
国王様と総務大臣であるメルクさんとノトさんは揚げられたパンを気に入ってくれたようだ。
「ふむ、だが少しばかり物足りない気もするな」
食べ終えたあと、メルクさんは少し考え込んでそう言った。
「そうですか?」
「そうですね。確かにこれだけでも大変美味しいのですが、まだ改良の余地はあるかもしれません」
その評価に僕はちょっと落ち込む。
「ふむ……だがしかし……ロイ君、ちょっといいか?」
「なんでしょう?」
「一度焼いたパンを揚げるのは新しい発想だ。これだけでは少々物足りないが、この作り方を王都に持ち帰って改良し、それを国の名物として売りだしても構わないだろうか?」
「……え?」
国の名物?
「特産品コンテストの参加条件は他の国にない新しい物で、この国で製造が可能なものであることだ。これであれば作るのは簡単で他の国には無く、また油や砂糖はこの国ではそこそこ製造されておる」
「それに設備も揚げ物鍋が1つあればよく、これを元に新たな発展も見込める。それに確か我が国の北にある冒険者の街で簡単に作れて甘く美味しいこのパンはきっとかなりの収益が見込めますぞ!」
その突然の発言に僕と家族が混乱する中、メルクさんとノトさんは2人興奮して話を進める。
「あ、あの……」
そう言った時、メルクさんが僕の肩をガッシリと掴む。
「これは本当に凄い発見だ!プルト・メルクの名において必ずや発展させてみせよう!」
あ、言っちゃった……
「プルト、メルク……様?」
「え、まさか」
これまで商人だと思って接していた父さんと母さんが同時に叫ぶ。
「「国王様!?」」
「あ、すまないつい興奮して……」
「国王様……折角ここまで商人で通せてましたのに」
「バレたね」
「うん。でも、仕方ないんじゃないかな」
僕の家族とコンにメルクさんとノトさんを加えた7名で食卓を囲む。
ユンは僕の後ろで寛いでいる。
「ふむ、素朴だがとても美味しい」
今メルクさんはハータと言う白身魚の塩焼きを食べている。
「これ、私が今日釣ってきたの!」
と、晩ごはん用にメルクさんを案内している間コルク川で魚釣りをしていたミリィが自慢気に言う。
「なるほど、捕れたてだったのか!」
「うん!」
それにちょっと驚いて見せるメルクさんにミリィは笑顔になる。
「こちらの揚げ物にしたハータもおいしいですね」
卓袱台の中心の大皿に盛られた揚げ物を食べるノトさんも興味深げに食べている。
「やはり新鮮な物は良いですな。王都では何日か過ぎた物しか食べられませんから」
「そうなのですか?」
「はい。様々な食材は入ってくるのですが、やはり距離の問題はどうしようもなく」
母さんの質問にノトさんが答える。
国王様と総務大臣という身分の2人だったから心配だったけど、この村の食事を気に入ってくれたみたいだった。
そしてご飯を食べ終えた後、僕は竈に火を着ける準備をしながら聞く。
「その、食後に甘い物は如何ですか?」
鍋の揚げ物用の油を専用の入れ物に入れて洗い、新しい油を注ぐ。
「ふむ、それが先程言っておったものか?」
「はい」
「では作る所を見てても良いか?」
「どうぞ」
そう言うとメルクさんは台所に来た。
僕は油が熱せられるまで待ち、それからご飯用とは別に用意していたパンを取り出す。
「パンを取り出してどうするのだ?」
「あ、このパンを軽く揚げるんです」
「ほう、パンを揚げると……パンを揚げるのか!?」
そう言って驚くメルクさんに、僕もこれが美味しいとは信じられなかったなぁと思いつつ、約10秒ちょっと揚げてから取り出す。
それから砂糖を取り出したら全体にまぶして完成させる。
「出来ました」
「それが美味しいのか……?」
「はい。ちょっと信じられないかもしれませんが、美味しいですよ」
そう言ってミリィに皆の分を作って居間に持って行ってもらう。
それからメルクさんとノトさんは目の前に置かれた揚げて砂糖をまぶしたパンを少々食べるのを躊躇していたが、すぐに覚悟を決めたのか手を伸ばす。
「い、いただきます」
そして、揚げたパンを一口食べる。
「こ、これはうまい!なるほど、元々焼いていたからこそ短い時間では中に油が浸透することなく揚げられ、外は程よい固さで中はふんわりしていてとても美味しい!」
「なるほど、焼いたパンをもう一度揚げるとこのような物になるのですね」
国王様と総務大臣であるメルクさんとノトさんは揚げられたパンを気に入ってくれたようだ。
「ふむ、だが少しばかり物足りない気もするな」
食べ終えたあと、メルクさんは少し考え込んでそう言った。
「そうですか?」
「そうですね。確かにこれだけでも大変美味しいのですが、まだ改良の余地はあるかもしれません」
その評価に僕はちょっと落ち込む。
「ふむ……だがしかし……ロイ君、ちょっといいか?」
「なんでしょう?」
「一度焼いたパンを揚げるのは新しい発想だ。これだけでは少々物足りないが、この作り方を王都に持ち帰って改良し、それを国の名物として売りだしても構わないだろうか?」
「……え?」
国の名物?
「特産品コンテストの参加条件は他の国にない新しい物で、この国で製造が可能なものであることだ。これであれば作るのは簡単で他の国には無く、また油や砂糖はこの国ではそこそこ製造されておる」
「それに設備も揚げ物鍋が1つあればよく、これを元に新たな発展も見込める。それに確か我が国の北にある冒険者の街で簡単に作れて甘く美味しいこのパンはきっとかなりの収益が見込めますぞ!」
その突然の発言に僕と家族が混乱する中、メルクさんとノトさんは2人興奮して話を進める。
「あ、あの……」
そう言った時、メルクさんが僕の肩をガッシリと掴む。
「これは本当に凄い発見だ!プルト・メルクの名において必ずや発展させてみせよう!」
あ、言っちゃった……
「プルト、メルク……様?」
「え、まさか」
これまで商人だと思って接していた父さんと母さんが同時に叫ぶ。
「「国王様!?」」
「あ、すまないつい興奮して……」
「国王様……折角ここまで商人で通せてましたのに」
「バレたね」
「うん。でも、仕方ないんじゃないかな」
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