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第二章 混沌竜の契約者

訪問

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「はぁ!?おいロイ国王様なんて嘘だろ?」
「コールよ、嘘ではないぞ」
 慌てるコールにコンがまったりとくつろいだまま言う。
「え、嘘、国王様がこの村に来るなんて、皆に伝えないと!?」
「おいおい、国王様をお迎えするなんてどうすりゃいいんだよ……」
「コン君、国王様って、あの国王様?」
「お兄ちゃんどうしよう!?」
「ちょ、ちょっと落ち着いて皆!」
 自分もそのあまりに急な報告に驚く中、ひとまずコンに確認を取る。

「ねえコン、国王様はこっちにどうやって来るの?」
「ロイが王都から帰ったのと同じ転移魔法を使って送り迎えをするつもりだが?」
 ああ、そういえば国王様との別れ際に水晶玉を渡して空間魔法どうこう言ってた気がする。
「え、それじゃあコンが呼べば今すぐにでも到着するってこと?」
「メルクからは《急なお願いなのでそちらの都合が悪ければ断ってくれても構わない》と言ってくれと言われているが?」
「それじゃあ急いで帰ってお迎えの準備を……」
 そう言ってこのままブロウにカウホースを借りて村まで帰ろうかと思い、ブロウに話しかけようとする。

「あとメルクから《私は国王プルト・メルクとしてではなく、ただの竜好きの中年オヤジ、メルクとして扱ってくれ》と来ているが?」

 もうそれどうしたらいいの……
「ちゅうね……いや、それはダメだろ!幾ら何でも国王様に何かあったら国の一大事だろ!?」
 今ここに居る中で(コンを除き、意外と)1番賢いブロウが頭を抱える。

「それでコンさん、こっちから国王様に質問って出来るのか?」
 そしてちょっと皆でどうするか悩んで、ブロウがそう問いかける。
「無論、出来るぞ」
「ならさ、護衛だとかは一緒なのか聞いてくれないか?」
 それを聞いたコンは頷き、ちょっと黙り込んでから言う。
「ふむ、護衛は《コン殿が居るので護衛は連れて行かないが、一応私が何かしでかさないかの監視のため総務大臣も付いて来るそうだ》とのことだ」
 あ、大臣お疲れ様です。
「では本当に何もお迎えする準備も無いし、まだ村人にも伝えてないけどどうしたらいいのか、出来れば国王様と総務大臣様のお二方に聞いてくれない?」
「ふむ、了解した。……まず国王様から《気にしなくて良い。むしろ伝えないでいただけたら国民のありのまま生活を見る良い機会にもなるので、これからの政務活動の参考になる》とのことだ」
「てことは、村中見て回るおつもりなのか?」
「そして大臣からは《私達の勝手な行動で国民にご迷惑をおかけするつもりはない。服装もメイドに頼んで古着屋でそちらに合わせた服装を一通り揃えてある。身分はただの商人として扱ってくれれば助かる》だそうだ」

「はー……国王様って、なんかもっと偉そうにしてるイメージだったんだけど、意外といい人?」
「うん。僕は前に王様に呼ばれて行ったけど、かなり気さくで優しい人だったよ」

 ちょっと、竜が好き過ぎて変な行動をすることあるけどけど凄くいい人。

 それから僕はコンに少し準備をするから待ってもらう事を伝えてもらい、皆には国王様であることを秘密にすることとしてひとまず大急ぎで家に帰った。



「よし、それじゃあお願い出来る?」
「うむ。向こうも準備は良いそうだ」
 それから昼前には準備を済ませ、親には王都でお世話になった人が遊びに来ると伝えて、今は家に直接呼ぶのは不自然だから村の北門の外の少し離れた所に居る。

 そしてコンが「いくぞ」と言うと、僕達の前に平民と同じ格好をした国王様と大臣が現れた。

「これが転移魔法か!」
「本当に一瞬で移動が可能なのですね」
 そして、2人は初めての転移魔法に驚いている。
「お久しぶりです、メルクさん、ノトさん」
 僕はその2人を名前で呼ぶ。
「久し振りだの、ロイ君、コン殿!」
「お久しぶり振りです、ロイ様、コン様」
 現在興奮している国王様に、すぐに冷静になった大臣。
 前に謁見した時と変わりないようで安心する。

「僕とコンは呼び捨てにして下さい。親には王都でお世話になった人が来ると伝えてあるので」
 今の口調は国王様に対しては無礼になるけど、下手に敬語ばかりだと下手したら皆に気付かれてしまうからとなるべく使い過ぎないよう言われたのだ。



「そういえばメルクさん、こんなに急に遊びに来てお仕事の方は大丈夫なのですか?」
「うむ、あれから仕事を山ほどこなして時間を空けたのだ」
「今後、そのために徹夜までなさるのはお体に障りますから絶対にお止めください。おかげで私も含めた皆が心配したのですから」
「……メルクよ、あまり無茶するでないぞ」
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