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第一章 僕は普通の農民です

謎の男

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「ロイよ、この国には何か特産品はあるのか?」
「特産品?う~ん、無くも無いけど村で普通に採れるから……あ」
 王都の商店街を歩いて周りながら、1つの出来事を思い出す。
「どうしたのだ、ロイ」
「あんまり大したことじゃないんだけど、前に国から『この国の特産品を考え、見事特産品として売れる物を見つけた者には報酬を』って感じの発表があったんだ」
「……本当に何も無いのだな」
 コンは何故か半ば呆れたように言う。
「元々、各国の領土の奪い合いから身を守るために国として独立しただけだから」

 まあそうは言ったものの、実際には凶悪な動物や魔物が住む巨大な『ダンジョン』があったりするのだけど、それは『冒険者』と呼ばれる特殊な職に就く者でなければ縁が無かったりする。
 この国にあるダンジョンは世界でも有数の深さをもつ『超巨大ダンジョン』として名を馳せているらしいのだが、基本的にダンジョンに住む生物は外に出てくることが無いので実に平和である。

「ならば、王都のお土産に何を買って帰るつもりなのだ?」
「だからこうやってウロウロしているんだよ」
 今現在僕達はひたすらにお土産に何がいいかを悩んでいた。



「なあそこの君、もしかして田舎から来たのか?」
 コンとあれはどう?これは良さそうかな、なんて話ていると、そう突然後ろから声をかけられて僕は振り返る。
 そこには金髪をオールバックにした黒皮のジャケットをきた男性が立っていた。
「はい、そうですけど……何でしょうか?」
 その男はニヤニヤ笑いながら言う。
「いやね、ちょっと土産もんで悩んでるみたいだからいいモン売ってる店に連れてってやろうかと思ってな」
「そんな所があるんですか?」
「ああそうさ、まあ気にいるモンがあるかは知らんがな。で、行くなら案内するが?」

 と、そこでコンがヒソヒソと話しかけてくる。
「(ロイよ、これは少し胡散臭くないか?断ったほうが良いのでは?)」
「(コン、人を見た目で判断しちゃダメだよ?)」
 僕はそうコンにそう言って、男の人を見る。

「はい、お願いします」



 そうして僕はその人に連れられて、現在裏路地を歩いている。
「あの、そのお店は何処にあるのでしょうか?」
 だんだん人気がない所に入っていく中、僕は見たことのないそのお店を楽しみに歩く。
「もうそろそろ着くぜ……ほら、ここだ」

 そうして角を曲がった先には、何も無い袋小路があった。

「……え?」
 何で?と聞こうと振り返る僕に、その男が腹を抱えて笑い出す。
「ひゃははははは!バカかお前?こんな所に店なんかあるわけないだろう!おい、お前ら出てこい!」

 男がそう大声を出すと、その角から剣や棍棒などを持った男達がワラワラと集まってくる。
「え、あの、これは?」
 その光景にジリジリと袋小路の奥に後退る。
「そんなん決まってんだろぅ?テメエを叩きのめして身ぐるみ剥いでテメエを売り飛ばす」
 男はニタニタと気持ちの悪い顔でそう言う。

「ふむ……ロイよ、これが親切な人なのか?」
 コンがやっぱりと言いたそうなジト目で言う。
「で、でもさ、見た目で判断するのが良くないのは……」

「おいテメェなぁにコソコソ話してんだコラ!」
 男がそう言うと、後ろから棍棒を持った男が近づいて来る。
「なぁ、いい加減やっちまおうぜ?警備隊が来たら面倒だしよ」

「ああ、そうだったな。そんじゃあ死なねぇ程度にやっちまえ」
 金髪の男がそう言うと、僕に向かって男達が武器を振りかぶって迫る。

「仕方ない、我が……」
 コンがやれやれといった様子で何か魔法を練り、それを発動しようとしたその時だった。



「ようそこの少年、囮ご苦労さん」



 突然、僕の後ろに誰かが現れた。
「で、君らが最近この国に現れた人攫いかな?」
 その男は急に現れてそんなことを言う。

 その男は珍しい姿をしていた。
 まず黒目黒髪という姿はこの国では珍しく、また黒いシャツと黒いズボンの上に黒いコートを羽織り、靴も黒い革を使っている。

「おいテメェも痛い目をみてぇのかおい!」
 金髪の男はその黒い格好の男を見て……何処にも武器を持ってないことを確認して叫ぶ。



「ギャンギャンうっせえなぁ……ラノベならこういう時女の子助けて好感度を上げて旅の仲間になってってのがテンプレだろうに」



 そして、黒い格好の男は何かよくわからないことを呟く。
「ああん?まあいいや、サッサとやっちまえ!」
 そう金髪の男が言うと、男の仲間が一斉に襲いかかってきた。

 だが、黒い格好の男はそれに動じる事無く呟く。

「ち、大した力もねぇ癖に……潰れろ」



 そして、金髪の男とその仲間はイキナリ地面に倒れ込む。



「な、んだこれ……」
 そして金髪の男がそう声を発すると、黒い格好の男が「はぁ」と溜息をつき、そして金髪の男達からメキメキと骨の軋む音が聞こえ……パキッという音が響く。

「ああぁああああぁああ!?」
「うるせぇ、黙れ」
 黒い格好の男はその金髪の男達に何か別の魔法を掛けて眠らせた。



 そして、その光景に唖然としていた僕の肩に、黒い格好をした男がぽんと手を置いた。
「スマン、今俺手持ちに金が無いんだわ。とりあえずこいつら縛るからその後飯奢ってくんね?」
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