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第一章 僕は普通の農民です

透明化と周りからの目

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「えっと、コンはそれでいいの?」
「うむ、ロイの迷惑にならなければ今後もこの姿でいるとしよう」
 
 今現在王都を歩く僕の左肩には、黒と白の糸が流れているような体色をした全長50センチの鳥が乗っていた。



 今から20分ほど前、国王様が隣国への外交に出たあと僕はメイドさんに倉庫に案内され、そこで本当に油を10樽も受け取ってからお城を後にした。
「ねえコン」
「なんだ?」
 透明化しているコンが答える。
 ちなみに僕は透明化しているコンを見ることが出来るが、それはコンが透明化して見せる対象から僕を外しているためである。
「確か小さくなってるのも変化って魔法を使ってるって言ってたよね?」
「うむ、変化を使えばどんな姿にも変えられるぞ」
 コンはちょっとだけ得意そうに言う。

「じゃあさ、町中でも目立たない従魔に変化することは出来る?」
「……なるほど、その手があったか」
 今現在、僕は周囲から少しおかしな人を見る目で見られているのだ。
 普通にコンと話しているだけなのだが、コンは透明化しているのでその姿を見ることは出来ず、尚且つ何もない空中から声が聞こえるのは大変不自然なため周囲に聞こえないようにもしている。
 なので、今の僕は周りから見ると何もない所に話しかけている不思議な人なのだ。
「ではこれでどうだろうか?」
 コンはそう言うと軽く発光(周囲には認知不可)して、とある鳥に姿を変えた。

「それって、もしかしてトークバード?」
「うむ。これならば問題はないだろう?」
 今コンが変化したのは『お喋り鳥トークバード』と呼ばれる鳥で、人と同じくらいの知性を持ち、尚且つ人語を理解し会話出来ることから主に商人が従魔にすることが多い動物だ。
 トークバードに変化したコンは透明化を解いて隣を飛ぶ。

「む、やはり感覚が違うか……」
 コンは変化した直後は少し飛び方が安定していたが、すぐにバサバサ羽を動かして必死に落ちないよう踏ん張っている。
「ちょ、コン!無理しないで」
 僕は慌ててコンを抱き締める。
「すまぬな。この体の動かし方が上手くわからぬのだ」
「う~ん……あ、それじゃあ僕の肩に乗る?」
 今、どこかの店の売り子が肩にトークバードを乗せて客引きをしていたのを見て、コンに言う。
「ロイの迷惑にはならないのか?」
「今のコンは軽いし平気だよ」
 実際、今のコンの体重は1キロにも満たないので非常に軽いのだ。

「それに、コンが落ちて怪我したら嫌だしね」
 先程の飛び方を見て心配してそう言った。
「我はその程度の事で怪我はしないのだが……そうだな、慣れるまでは乗らせてもらおう」
 コンはそう言うとバサバサと羽ばたいて僕の左肩に乗った。
 ちょっとだけ重さは感じるけど気にするほどでもなく、頬に触れる羽はスベスベしていて心地よかった。



「それじゃあ、観光に行こうか」
「うむ。ちゃんと土産物を忘れないようにな」

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注釈 トークバードの大まかな姿のイメージは『ハシボソガラス』を参考にしております。
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