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第一章 僕は普通の農民です

国王様に会う前に

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 翌朝、僕は何時もと同じ4時半に目を覚ます。
「ふああぁぁ……あれ、ここどこだっけ?」
「ロイよ、ここは王都の宿だ」
「王都の……あ、そういえば国王様に呼ばれてきたんだっけ」
 いつものように朝早くに目を覚ました僕は朝の作業が無い、というより出来ないことに気付く。
「でも二度寝する気にはなれないし……とりあえず外に出てみよっかな」

「ん~、やっぱり朝の空気は澄んでて気持ちがいいね」
「そうだな」
「それじゃあちょっとお散歩してから宿に戻ろうか。食堂が開くのは6時からみたいだし」
 先程部屋から出て受付まで行くと宿屋の主人(メルのお父さん)がおり、食堂が開く時間を教えてくれたのだ。
「それにお土産頼まれてるから、まだ開いてはないと思うけどお店だけでも見て回ろう」



 それから暫くこの店とかどうかな、なんてコンと話しながら散策をした僕達は宿に戻って朝食を摂る。
「ねぇコン」
「なんだ?」
「国王様ってどんな方なんだろうね」
 そう言うと退屈そうに目を半開きにしていたコンが驚いたように目を見開いた。
「な、ロイは自分の国の国王についても知らぬのか」
「う~ん、全く知らないわけじゃないんだけど、正直あんまり興味が無かったから」
 まあ確かに知っておくべきだとは思うけど。
「我の記憶では、王というものは民を豊かにするために色々下の者に指示を出す者のことだと思うのだが」
「でも、国王様が余程のことをしない限り僕みたいな遠くの農民には関係がないから」
 実際、国王様がどうこういう話よりも、領主様が出す指示の方が領民にとっては重要である。
「それでよいのか……」
「あ、コンこのスープ美味しいよ」
「国王にこれから会うというのに……うむ、美味いな」
「それに、今から気にしてもどうしようもないからね」
「ふむ、それもそうかもしれぬな。だがメイド?に教えてもらった礼儀作法は後で復習しておくのだぞ」
「う……はぁい」



 食べ終えたあとは今日国王様がお城に到着するらしいので、お迎えが来るまでは部屋でコンと談笑しながら待って時刻は約10時、昨日のメイドさんが迎えに来た。

「ロイ様、コン様、お城へお迎えに参りました」
「それじゃあ行こうか、コン」
「うむ」
 メイドさんが前で僕が後ろに付いてお城へ徒歩で向かう。
 宿からお城までは近く、また人通りの多いこの辺りでは牛馬車は基本緊急時を除いては通れないからだ。
 僕的には仰々しい牛馬車に乗るのは落ち着かないので徒歩の方がありがたかったりする。

「ではまずこの後の事なのですが、お城に着きましたらすぐに謁見の間まで向かいまして、現国王様と謁見することになります。その後は国王様と大臣様との会食が予定されております」
「え、いきなりですか!?」
「はい。国王様はお忙しい方なので、あまりお時間を割けないのでございます」
「そうですか……」
 いきなりとは言ったものの、実際その前に何か手順を踏むのかと聞かれたら全くわからないけど。
「我はいつ透明化を解除したらよいのだ?」
「あ、それは謁見の間に入ってから呼ぶように言われるはずですので、その時に解いていただければ」
「ふむ、理解した」



 その後、城までの短い道のりでメイドさんからもう一度礼儀作法を教えてもらっている内に城に到着した。
「あ、手土産とか用意しなくてよかったのかな?」
「野菜を袋に入れて渡されても困ると思うが?」
「そうかな?」
「……本当に野菜を手土産にして問題はないのか?」
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