不幸な俺は異世界へ跳んでも不幸である

アルセクト

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第二章 サラタール王国剣魔術大会

盗賊は拘束

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「そういや、お金は確か万国共通の物は『銅貨』『銀貨』『金貨』『白金貨』で、百枚で1つ上の硬貨に変わるっていうのでいいんだよな?」
「そうね」
 ちなみに、日本円にすると銅貨一枚で10円分の価値であるため、各貨幣一枚で銀貨は千円、金貨は十万円、白金貨が一千万の価値になる。

「じゃあさ、この金貨250枚に現物価値の高い宝石類とか持ってた盗賊は結構金持ってたってことか?元はどこからか知んないけど」
「どっか金持ちでも襲ったんじゃね?こんなのがマトモに仕事して稼いだとは思えんし」
「少し重いけど警備隊にでも引き渡せば多少の報酬はあるんじゃないかな?たぶんこれくらいなら指名手配されててもおかしくないよ」
 そんな話をしながら小汚いオッサン共を縛る俺達に、涼音が少々顔を顰めてどこか引き気味に言った。

「あの、なんで王都に向かってたのに道中襲ってきた盗賊を返り討ちにして、しかも本拠地にまで乗り込んで掃討しているんですか?」

 現在、盗賊が根城にしていた洞窟の外では満点の星空が広がっていた。



 少し時間を遡り、ヌリア村を出てから約5時間。
 俺達は7時(風の二刻)になり、俺の闇魔法で収納した野営用テントをどこに張ろうかと話し合いながら森のに整備された道の中、良い場所を探しつつ進んでいた。
 闇魔法は何かを『包み込む』『取り込む』ような性質があり、空間魔法として非常に重宝するのだ。
 入れられる量は闇魔法の腕次第なので、適性が異様に高い俺が荷物の持ち運びをしている。

 そんな折に革鎧を着た盗賊が木の上から無音で急襲して来たのだ。

「よっと」
 まあ俺は昔からこの手の奴らからの不意打ちは多かったため、そんなのにはとっくに気づいていたのだが。
「グェ!?」
 飛び降りのタイミングに合わせて腹に回し蹴りをクリーンヒットさせると面白いぐらい飛んで木に激突する。
「な、なんだ!?」「え、え!?」「ぐ、グーちゃん!」
 ただし、普段から危機意識を持っていないと生きられなかった俺に対し、そうでない3人は突然のことに全く持って動けない。
 さらにそこに様々な武器を持った盗賊がザッと十数人一気に無言で襲い掛かってくる。
「白虎!」
『爪羽なしの鎧でいいか?』
「早く!」
 俺は魔法の特訓の合間に練習していた白虎の『まとい』と言われる物の練習もしていたのだ。
 羽と爪も任意で出す出さないが選べるので、殺傷ではなく捕獲しようと思い爪を無し、羽も森だと邪魔になるので力を纏うだけにする。
 そうして全身が透明感のある白い炎に覆われ、力と防御力、そして素早さがグンと上がる。
「オラァ!!」
 型も何もない、ただただ素人丸出しの動きで詰め寄り殴る蹴るで盗賊を瞬く間に吹き飛ばして気絶させた俺は、戦闘時間1分足らずで終了する。
 途中サヤ達にも攻撃が行ったが、流石にそれくらいは自分で倒してくれていた。

「それで、こいつらどうする?」
 俺が出したロープで襲撃者を後ろ手に縛りながら英四郎が聞いてくる。
「もう大丈夫だよ、涼音。もう周りには私達以外居ないから」
「本当ですか?でも、ただの盗賊だとは思えないんですけど」
 完全に怯えきって、小さくなっているグーちゃんを抱きしめる涼音をサヤが落ち着かせる。
「ああ、確かにただのチンピラなら普通脅しかけて来るな。まあこいつらは人を襲い慣れてるみたいだしな……とりあえず根城聞いて潰すか」
「だな」
「え、ええ、ちょ、何でわざわざ関わりに行くの!?」
 俺と英四郎の会話を聞いて、涼音が驚きの声を上げる。
「涼音は私と一緒に観戦してよう」
「え、えええ!!止めないんですか!?危ないですよ!?」
 また慌てふためく涼音に、サヤは笑顔で答える。
「私ね、これでも冒険者ランクAくらいの実力は持ってるの。実際持ってるのは私が頼んで最低ランクのF何だけど、あそこの2人もそれくらいの実力があるから大丈夫」
 それを聞いた涼音はまた目を白黒させる。
 頭が全く持って付いてきていない。
「ま、とりあえず俺とラビットに任せときゃ大丈夫大丈夫!このまま放置したらまた悪さするだろうから、根っこから潰すだけだ」

 その後も涼音は恐怖心が強く怯えていたのでサヤに任せ、俺と英四郎で見えないところで脅迫して根城を聞き出し、2人で殲滅してから残した2人を呼んで盗賊を拘束、そして今日はここで野営することにした。
 そうして今に至る。

 金品や武器等は全て俺が闇魔法で保管し、入れ替わりに出した食材と道具で女子2人に調理を頼み、俺と英四郎は盗賊に色々と脅して聞き出した。
 そして全員で食事を食べ、翌朝王都へと向かう道にはでかい箱に入れた盗賊の持っていた荷馬車にのせて歩く俺と英四郎の姿があった。



 俺に降りかかるこの不幸だが、今回のような襲撃であれば大したことないなと、この時までは思っていたのだ。
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