25 / 33
第二章 サラタール王国剣魔術大会
俺と英四郎の戦い
しおりを挟む
「では、サラタール王国剣魔術大会ラヤカナ領予選、開催です!」
隣村のヌリアと言う村(俺の居た村はラヤカナ村である)の西門から中を通って東門を出てすぐの所にある特設会場にて15、もしくは今年16になった者を集めて行うこの大会は、俺達ラヤカナ村の選手が最後だったらしくすぐに予選が始まることとなった。
「村の奴らはAかBのどっちかに半分に分けられるから、決勝まで行けば二人で本戦出場も行けるんだぜ!」
ヌリア村に到着する少し前に英四郎がこの大会は勝ち抜き戦であり、AB2つにわけられることを知った。
ただし、本来は2人だけが出場ということは無いのだが、他2人の同い年の人は女子で、元々パスする予定だったので俺が入ってもなんら問題がなかったらしい。
そして予選は20メートル四方の正方形の石の舞台で行われ、気絶、降参、場外、もしくは審判のジャッジによる中止の4つの勝利条件がある。
……以前、気絶させずに場外にもせず、さらに降参と言わせず傷めつける事件があったらしい。
「では早速第一戦を始めます!選手は前へ!」
ちなみに審判は雇われの冒険者であり、B級以上の実力者を集めており、ここに居るのは去年のサヤの例があったためAランクの冒険者が審判を務める。
「第一戦は英四郎だろ?ちゃっちゃと片付けてこいよ」
「おうともよ!てかお前も隣のステージで2戦めだろ?さっさと終わらせてお前の応援でもしてやるさ」
そんな軽口を叩きつつステージに上がる英四郎は、先程来てる時に落としていた木刀を手に持ちながら対戦相手を見やる。
「なに馬鹿言ってる、勝つのは俺だよチビ!」
そう英四郎に言い放ったのは身長が170ぐらいで、その年を考えれば全身に物凄く筋肉がしっかりとついた男で、俺と同じ150センチちょいの英四郎を小馬鹿にする。
「言ってろ筋肉ダルマ、大飯ぐらい、穀潰し」
それに対し、その男が持っている金属剣を見ても怯まず、あくまでも木剣を構えてそう罵る。
「んだとゴラァ!?」
と、そこで試合開始の笛がなる。
後でサヤから聞いたところ、別に罵倒し合うのは例年の事らしい。
「さっさと潰れろ!!」
そう言って右上から左下に大振りで振られた剣を英四郎は木剣で側面を全力でブッ叩いて反らし、左手に魔力を込める。
「単調な奴ほどやりやすいものはないぜ!!」
そう言うと魔力で鋼の如く硬くした拳で鳩尾を殴りつけ、そこからバキッという骨が折れる嫌な音が響く。
「あ、やっべ加減間違えた」
そうして英四郎は勝ったが、相手に両手を合わせて謝る。
肋骨を数本やってしまったらしい。
まあこれくらい何時もあるらしく対処も早いが、俺の戦うBステージの方は初級や中級に位置する魔法を放ちまくる魔法合戦となっているため、他の人の視線は派手なそちら側へ向けられている。
「で、次お前の番だが一応気を付けろよ?」
本当に手早く終わらせた英四郎は俺の側に来て、俺の相手について少しだけ教えてくれる。
「あいつは従魔にグレーベアを従えててな、それを出すかもしれん」
「は?従魔なんてありかよ!」
剣と魔術の大会であるので、流石に白虎の様な存在はダメなのでは?
「従魔も立派な戦力だぞ?……つっても、お前はこんな所で白虎を出すんじゃねぇぞ?お前なら魔法のみでやれるから、俺みたいに加減間違えんなよ?」
「ほんとにもう、私が治癒する羽目になるんだからあんまり酷いのは勘弁してよね」
治癒が得意な人がこの村に居なかったので、サヤは急遽救護班として手伝うことになっている。
「いやほんとごめ……」
「そんなことより!ほら、向こうも終わったみたいだから」
そう言われてBステージを見ると、確かに終了していた。
「加減気を付けろよ」
「無駄に傷めつけないようにね」
「おい、俺が負ける心配は無いのかよ!」
まあ、いいか。
「では、Bブロック2回戦出場選手は前へ!」
俺がステージに上がると、向かいから従魔であるグレーベアを引き連れたローブを纏った女子が現れ……え?
「よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
礼儀正しくお辞儀をしてきたので俺も慌てて頭を下げる。
そして、顔を上げて相手がにこっと笑った所で試合開始の笛がなる。
と、彼女はいきなり火球数個で俺を取り囲んで打ち込んでくる。
「おっと」
だが俺は周囲に真空の層を作って無効化する。
そこに様々な強化魔法により強化されたグレーベアが突っ込んでくる。
凄い連携だなと思いつつ、俺は心の中でごめんなさいと呟きながら魔法を使う。
マナさん、得意魔法借ります。
「『具現槍』」
俺は俺の魔力量に物を言わせ百本もの魔力の槍を作り、70本でグレーベアを取り囲み、残り30本で相手を動けなくして首元に一本突きつける。
「……降参です……」
そして俺は魔法を解いたが周囲は俺のそのあまりの実力を感じ取り静まり返ってしまった。
「あの、審判さん?」
俺はその雰囲気に困惑し、審判に早く進めるよう頼む。
「え、あ……はい、降参により、あなたの勝ちです」
まだ呆然としているらしい審判がそう言うと、俺はさっさと2人の側に行く……と
「お、俺棄権する」
「お俺も」
「私も」
と、Bブロックの他の人が全員次々棄権を申し立て、あっという間に対戦相手が居なくなって本戦出場が決まってしまった。
その光景に唖然とする俺に対し、英四郎とサヤが肩にぽんと手をのせ言った。
「「やりすぎ」」
そもそも具現化魔法はちょっとしたことでも燃費が悪すぎるので行う者は少なく、それも槍を百本も出してまだ魔力が有り余ってるとか明らかに異常すぎるのだと教えてくれた。
そして英四郎も剣術に体術を合わせた格闘戦で相手を薙ぎ倒し、決勝まで勝ち進んでから俺との決勝は棄権して無事2人で本戦出場を勝ち取った。
なんか色々と拍子抜けだったが、まあ勝てたからいいか。
ただし、この情報はすぐに王都へと伝えられかなりの騒ぎとなったのだが、それによる騒動に巻き込まれるのはもう少し後である。
隣村のヌリアと言う村(俺の居た村はラヤカナ村である)の西門から中を通って東門を出てすぐの所にある特設会場にて15、もしくは今年16になった者を集めて行うこの大会は、俺達ラヤカナ村の選手が最後だったらしくすぐに予選が始まることとなった。
「村の奴らはAかBのどっちかに半分に分けられるから、決勝まで行けば二人で本戦出場も行けるんだぜ!」
ヌリア村に到着する少し前に英四郎がこの大会は勝ち抜き戦であり、AB2つにわけられることを知った。
ただし、本来は2人だけが出場ということは無いのだが、他2人の同い年の人は女子で、元々パスする予定だったので俺が入ってもなんら問題がなかったらしい。
そして予選は20メートル四方の正方形の石の舞台で行われ、気絶、降参、場外、もしくは審判のジャッジによる中止の4つの勝利条件がある。
……以前、気絶させずに場外にもせず、さらに降参と言わせず傷めつける事件があったらしい。
「では早速第一戦を始めます!選手は前へ!」
ちなみに審判は雇われの冒険者であり、B級以上の実力者を集めており、ここに居るのは去年のサヤの例があったためAランクの冒険者が審判を務める。
「第一戦は英四郎だろ?ちゃっちゃと片付けてこいよ」
「おうともよ!てかお前も隣のステージで2戦めだろ?さっさと終わらせてお前の応援でもしてやるさ」
そんな軽口を叩きつつステージに上がる英四郎は、先程来てる時に落としていた木刀を手に持ちながら対戦相手を見やる。
「なに馬鹿言ってる、勝つのは俺だよチビ!」
そう英四郎に言い放ったのは身長が170ぐらいで、その年を考えれば全身に物凄く筋肉がしっかりとついた男で、俺と同じ150センチちょいの英四郎を小馬鹿にする。
「言ってろ筋肉ダルマ、大飯ぐらい、穀潰し」
それに対し、その男が持っている金属剣を見ても怯まず、あくまでも木剣を構えてそう罵る。
「んだとゴラァ!?」
と、そこで試合開始の笛がなる。
後でサヤから聞いたところ、別に罵倒し合うのは例年の事らしい。
「さっさと潰れろ!!」
そう言って右上から左下に大振りで振られた剣を英四郎は木剣で側面を全力でブッ叩いて反らし、左手に魔力を込める。
「単調な奴ほどやりやすいものはないぜ!!」
そう言うと魔力で鋼の如く硬くした拳で鳩尾を殴りつけ、そこからバキッという骨が折れる嫌な音が響く。
「あ、やっべ加減間違えた」
そうして英四郎は勝ったが、相手に両手を合わせて謝る。
肋骨を数本やってしまったらしい。
まあこれくらい何時もあるらしく対処も早いが、俺の戦うBステージの方は初級や中級に位置する魔法を放ちまくる魔法合戦となっているため、他の人の視線は派手なそちら側へ向けられている。
「で、次お前の番だが一応気を付けろよ?」
本当に手早く終わらせた英四郎は俺の側に来て、俺の相手について少しだけ教えてくれる。
「あいつは従魔にグレーベアを従えててな、それを出すかもしれん」
「は?従魔なんてありかよ!」
剣と魔術の大会であるので、流石に白虎の様な存在はダメなのでは?
「従魔も立派な戦力だぞ?……つっても、お前はこんな所で白虎を出すんじゃねぇぞ?お前なら魔法のみでやれるから、俺みたいに加減間違えんなよ?」
「ほんとにもう、私が治癒する羽目になるんだからあんまり酷いのは勘弁してよね」
治癒が得意な人がこの村に居なかったので、サヤは急遽救護班として手伝うことになっている。
「いやほんとごめ……」
「そんなことより!ほら、向こうも終わったみたいだから」
そう言われてBステージを見ると、確かに終了していた。
「加減気を付けろよ」
「無駄に傷めつけないようにね」
「おい、俺が負ける心配は無いのかよ!」
まあ、いいか。
「では、Bブロック2回戦出場選手は前へ!」
俺がステージに上がると、向かいから従魔であるグレーベアを引き連れたローブを纏った女子が現れ……え?
「よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
礼儀正しくお辞儀をしてきたので俺も慌てて頭を下げる。
そして、顔を上げて相手がにこっと笑った所で試合開始の笛がなる。
と、彼女はいきなり火球数個で俺を取り囲んで打ち込んでくる。
「おっと」
だが俺は周囲に真空の層を作って無効化する。
そこに様々な強化魔法により強化されたグレーベアが突っ込んでくる。
凄い連携だなと思いつつ、俺は心の中でごめんなさいと呟きながら魔法を使う。
マナさん、得意魔法借ります。
「『具現槍』」
俺は俺の魔力量に物を言わせ百本もの魔力の槍を作り、70本でグレーベアを取り囲み、残り30本で相手を動けなくして首元に一本突きつける。
「……降参です……」
そして俺は魔法を解いたが周囲は俺のそのあまりの実力を感じ取り静まり返ってしまった。
「あの、審判さん?」
俺はその雰囲気に困惑し、審判に早く進めるよう頼む。
「え、あ……はい、降参により、あなたの勝ちです」
まだ呆然としているらしい審判がそう言うと、俺はさっさと2人の側に行く……と
「お、俺棄権する」
「お俺も」
「私も」
と、Bブロックの他の人が全員次々棄権を申し立て、あっという間に対戦相手が居なくなって本戦出場が決まってしまった。
その光景に唖然とする俺に対し、英四郎とサヤが肩にぽんと手をのせ言った。
「「やりすぎ」」
そもそも具現化魔法はちょっとしたことでも燃費が悪すぎるので行う者は少なく、それも槍を百本も出してまだ魔力が有り余ってるとか明らかに異常すぎるのだと教えてくれた。
そして英四郎も剣術に体術を合わせた格闘戦で相手を薙ぎ倒し、決勝まで勝ち進んでから俺との決勝は棄権して無事2人で本戦出場を勝ち取った。
なんか色々と拍子抜けだったが、まあ勝てたからいいか。
ただし、この情報はすぐに王都へと伝えられかなりの騒ぎとなったのだが、それによる騒動に巻き込まれるのはもう少し後である。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる