不幸な俺は異世界へ跳んでも不幸である

アルセクト

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第二章 サラタール王国剣魔術大会

俺と英四郎の戦い

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「では、サラタール王国剣魔術大会ラヤカナ領予選、開催です!」
 隣村のヌリアと言う村(俺の居た村はラヤカナ村である)の西門から中を通って東門を出てすぐの所にある特設会場にて15、もしくは今年16になった者を集めて行うこの大会は、俺達ラヤカナ村の選手が最後だったらしくすぐに予選が始まることとなった。

「村の奴らはAかBのどっちかに半分に分けられるから、決勝まで行けば二人で本戦出場も行けるんだぜ!」
 ヌリア村に到着する少し前に英四郎がこの大会は勝ち抜き戦であり、AB2つにわけられることを知った。
 ただし、本来は2人だけが出場ということは無いのだが、他2人の同い年の人は女子で、元々パスする予定だったので俺が入ってもなんら問題がなかったらしい。
 そして予選は20メートル四方の正方形の石の舞台で行われ、気絶、降参、場外、もしくは審判のジャッジによる中止の4つの勝利条件がある。
 ……以前、気絶させずに場外にもせず、さらに降参と言わせず傷めつける事件があったらしい。

「では早速第一戦を始めます!選手は前へ!」
 ちなみに審判は雇われの冒険者であり、B級以上の実力者を集めており、ここに居るのは去年のサヤの例があったためAランクの冒険者が審判を務める。
「第一戦は英四郎だろ?ちゃっちゃと片付けてこいよ」
「おうともよ!てかお前も隣のステージで2戦めだろ?さっさと終わらせてお前の応援でもしてやるさ」
 そんな軽口を叩きつつステージに上がる英四郎は、先程来てる時に落としていた木刀を手に持ちながら対戦相手を見やる。
「なに馬鹿言ってる、勝つのは俺だよチビ!」
 そう英四郎に言い放ったのは身長が170ぐらいで、その年を考えれば全身に物凄く筋肉がしっかりとついた男で、俺と同じ150センチちょいの英四郎を小馬鹿にする。
「言ってろ筋肉ダルマ、大飯ぐらい、穀潰し」
 それに対し、その男が持っている金属剣を見ても怯まず、あくまでも木剣を構えてそう罵る。
「んだとゴラァ!?」
 と、そこで試合開始の笛がなる。
 後でサヤから聞いたところ、別に罵倒し合うのは例年の事らしい。

「さっさと潰れろ!!」
 そう言って右上から左下に大振りで振られた剣を英四郎は木剣で側面を全力でブッ叩いて反らし、左手に魔力を込める。
「単調な奴ほどやりやすいものはないぜ!!」
 そう言うと魔力で鋼の如く硬くした拳で鳩尾を殴りつけ、そこからバキッという骨が折れる嫌な音が響く。
「あ、やっべ加減間違えた」

 そうして英四郎は勝ったが、相手に両手を合わせて謝る。
 肋骨を数本やってしまったらしい。
 まあこれくらい何時もあるらしく対処も早いが、俺の戦うBステージの方は初級や中級に位置する魔法を放ちまくる魔法合戦となっているため、他の人の視線は派手なそちら側へ向けられている。
「で、次お前の番だが一応気を付けろよ?」
 本当に手早く終わらせた英四郎は俺の側に来て、俺の相手について少しだけ教えてくれる。
「あいつは従魔にグレーベアを従えててな、それを出すかもしれん」
「は?従魔なんてありかよ!」
 剣と魔術の大会であるので、流石に白虎の様な存在はダメなのでは?
「従魔も立派な戦力だぞ?……つっても、お前はこんな所で白虎を出すんじゃねぇぞ?お前なら魔法のみでやれるから、俺みたいに加減間違えんなよ?」
「ほんとにもう、私が治癒する羽目になるんだからあんまり酷いのは勘弁してよね」
 治癒が得意な人がこの村に居なかったので、サヤは急遽救護班として手伝うことになっている。
「いやほんとごめ……」
「そんなことより!ほら、向こうも終わったみたいだから」
 そう言われてBステージを見ると、確かに終了していた。
「加減気を付けろよ」
「無駄に傷めつけないようにね」
「おい、俺が負ける心配は無いのかよ!」
 まあ、いいか。

「では、Bブロック2回戦出場選手は前へ!」

 俺がステージに上がると、向かいから従魔であるグレーベアを引き連れたローブを纏った女子が現れ……え?
「よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
 礼儀正しくお辞儀をしてきたので俺も慌てて頭を下げる。

 そして、顔を上げて相手がにこっと笑った所で試合開始の笛がなる。

 と、彼女はいきなり火球数個で俺を取り囲んで打ち込んでくる。
「おっと」
 だが俺は周囲に真空の層を作って無効化する。
 そこに様々な強化魔法により強化されたグレーベアが突っ込んでくる。
 凄い連携だなと思いつつ、俺は心の中でごめんなさいと呟きながら魔法を使う。
 マナさん、得意魔法借ります。

「『具現槍リアリゼイションランス』」

 俺は俺の魔力量に物を言わせ百本もの魔力の槍を作り、70本でグレーベアを取り囲み、残り30本で相手を動けなくして首元に一本突きつける。

「……降参です……」

 そして俺は魔法を解いたが周囲は俺のそのあまりの実力を感じ取り静まり返ってしまった。
「あの、審判さん?」
 俺はその雰囲気に困惑し、審判に早く進めるよう頼む。
「え、あ……はい、降参により、あなたの勝ちです」
 まだ呆然としているらしい審判がそう言うと、俺はさっさと2人の側に行く……と

「お、俺棄権する」
「お俺も」
「私も」
 と、Bブロックの他の人が全員次々棄権を申し立て、あっという間に対戦相手が居なくなって本戦出場が決まってしまった。

 その光景に唖然とする俺に対し、英四郎とサヤが肩にぽんと手をのせ言った。
「「やりすぎ」」

 そもそも具現化魔法はちょっとしたことでも燃費が悪すぎるので行う者は少なく、それも槍を百本も出してまだ魔力が有り余ってるとか明らかに異常すぎるのだと教えてくれた。

 そして英四郎も剣術に体術を合わせた格闘戦で相手を薙ぎ倒し、決勝まで勝ち進んでから俺との決勝は棄権して無事2人で本戦出場を勝ち取った。



 なんか色々と拍子抜けだったが、まあ勝てたからいいか。
 ただし、この情報はすぐに王都へと伝えられかなりの騒ぎとなったのだが、それによる騒動に巻き込まれるのはもう少し後である。
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