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第二章 サラタール王国剣魔術大会
俺の従魔がとんでもないんだが
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「……で、これからどうするんだ?」
あの後俺を背に乗せたのはただそうしたかったかららしく、今は羽を消して地面に伏せ、俺はその虎の胴にもたれかかってマナの方を向いている。
マナはあの後しばらく「依頼が、マークにもなんて言えば……」などなどぶつくさ呟いていたが、俺がこうしてもたれかかるのを見て落ち着きを取り戻した。
「ええ……こんな巨大で目立つ強力な従魔、村でもそうですが、街や都市などに向かえば確実に大混乱間違いなしですね」
というかこいつ、なにか食ったりするのか?封印されていた間は何も食ったりしてないだろうが……とにかく、問題しか見つからない。
そうして俺とマナが悩んでいると、虎は急に笑いを含んだ声で話し始めた。
「お主らは従魔に関して全く持って知らないのだな。従魔は主人からのエネルギーである魔力供給さえあれば生きれる、食事は嗜好の類い言えよう。その上普段は何処かの土地や主人の部屋などにおり、自由に召喚する事も可能だからそう心配することもない。それに、我のような冒険者で言う上位クラスやエネルギー体などの従魔であれば主人の精神に居着く事も出来る」
へぇ、それは便利な……
「いやちょっと待て、精神に居着くってなんだよ!?すっげえやばい気しかしないんだけど!?」
「ええ、私もその様な事は初めて聞きましたね……」
「上位の魔獣と契約を交わすのは稀な例であるだろうから知らないのも仕方なかろう。危ない事は全く無いぞ?むしろ我が力も存分に自身の意志で扱える様になるのだから、主人にとっては良いこと尽くめなのだぞ?」
「そうなのか?」
「だが、その前に主人には一つお願いしたい事があるのだ」
願い事?
「なんだよ?」
「我に名をつけては貰えないだろうか?」
「名前?そういや聞いてなかったけど、元の名前とか無いのか?」
「それは、確か従魔契約を行った場合は新たな呼び名を与える事が従魔の喜びであり、必ずしも必要なものでは無かったと思います」
マナはもうどうにでとなれ、と何処か吹っ切れた様子でそう答える。
いやホント、こんな面倒事に巻き込んですんません。
「そもそも我に名は無かったがな。ブラッドタイガーは子を複数産むのでな、名をつける風習もなく、また我自身も目立つ者でも無かったので人からの呼び名もない」
「ブラッドタイガー?」
何その名前、超怖いんだけど。
「元はブラッドタイガーなのですか?……いえ、確かブラッドタイガーは生まれた時は体毛が白く、獲物を狩って強くなればなるほどその体毛の色を、まるで血を吸っているかの如く紅に染まることからブラッドタイガーとされていますね。それなら白い炎も納得がいきます」
「我は神の使いとなる前はしっかりと紅に染まり、一つの群れを成しておったのだがな……まあ過去のことはよい。主人であるラビットから頂ける名であれば、我はそれを我が名としよう」
名前ねぇ……流石にこの虎に同じネコ科とはいえ「タマ」とかは合わないよな……真っ白い炎に黒い炎の線、額に角が生え背には羽が生える虎……白い、白い虎……白い虎?
「そうだ『白虎』、白虎はどうだ!」
確か西を司る白い虎で、五行の金を司る虎。近年のゲームなどではよく風に分類される空想の生物の名前。
「ふむ……不思議な響きじゃな。だが我は気に入ったぞ!我は今日から白虎として、主人ラビットに仕えるぞ!」
そう言うと虎改め白虎は突然発光し、そして封印が解けてすぐの時の直径10センチの小さな光の球となり、俺の心臓のあたりにスゥ……と入ってしまった。
「え、ちょ、何!?」
驚き慌てふためく俺に対し、変化はまだ続く。
俺の体が薄く発光し始め、それは腕や足を覆い五本の指の先には鋭い虎と同じ爪が覆い、背中に違和感を感じたと思えば肩甲骨の辺りから急に羽が生え服に穴を開けて広がる。
「何これ何これ何が起きてんのこれ、おいちょ、白虎!」
そう言って俺は背中を見ようと右に体を捻り、その際に左手をブンと大きく振ってしまった。
そして、俺を中心に魔力を帯びた真空の斬撃が飛び、合計十数本の木が薙ぎ倒される。
『今は迂闊に動かない方が良いぞ、力に慣れておらぬのだから』
座っていたマナの頭の上スレスレを通ったその斬撃の鋭さを見た俺は、動かない事に全力を注ぐことにした。
『今は主と魔力のやり取りを行うためのラインを構築しておるのだ、それが済めば雪崩れ込んでいる力もコントロール出来よう。暫し待っておれば時期収まる』
そして約1分程固まっていると体に起きたその変化は消え去り、薙ぎ倒された木々と背中に空いた穴が残った。
「一先ず村に戻りましょうか。今後の事に関しましてはマークと共に話し合った方が良いでしょうね」
「これ、サヤに見せらんないよな……てかなんて話せばいいんだよ……」
『早速面白そうなことになりそうだな、主よ』
俺はここに来たことを内心後悔しつつ、しかし現実問題これからどうするかをマナと話し合いながら村に戻る。
この先俺と白虎の引き起こす騒動は世界各地で起こるのだが、それはまだ少し先の事である。
あの後俺を背に乗せたのはただそうしたかったかららしく、今は羽を消して地面に伏せ、俺はその虎の胴にもたれかかってマナの方を向いている。
マナはあの後しばらく「依頼が、マークにもなんて言えば……」などなどぶつくさ呟いていたが、俺がこうしてもたれかかるのを見て落ち着きを取り戻した。
「ええ……こんな巨大で目立つ強力な従魔、村でもそうですが、街や都市などに向かえば確実に大混乱間違いなしですね」
というかこいつ、なにか食ったりするのか?封印されていた間は何も食ったりしてないだろうが……とにかく、問題しか見つからない。
そうして俺とマナが悩んでいると、虎は急に笑いを含んだ声で話し始めた。
「お主らは従魔に関して全く持って知らないのだな。従魔は主人からのエネルギーである魔力供給さえあれば生きれる、食事は嗜好の類い言えよう。その上普段は何処かの土地や主人の部屋などにおり、自由に召喚する事も可能だからそう心配することもない。それに、我のような冒険者で言う上位クラスやエネルギー体などの従魔であれば主人の精神に居着く事も出来る」
へぇ、それは便利な……
「いやちょっと待て、精神に居着くってなんだよ!?すっげえやばい気しかしないんだけど!?」
「ええ、私もその様な事は初めて聞きましたね……」
「上位の魔獣と契約を交わすのは稀な例であるだろうから知らないのも仕方なかろう。危ない事は全く無いぞ?むしろ我が力も存分に自身の意志で扱える様になるのだから、主人にとっては良いこと尽くめなのだぞ?」
「そうなのか?」
「だが、その前に主人には一つお願いしたい事があるのだ」
願い事?
「なんだよ?」
「我に名をつけては貰えないだろうか?」
「名前?そういや聞いてなかったけど、元の名前とか無いのか?」
「それは、確か従魔契約を行った場合は新たな呼び名を与える事が従魔の喜びであり、必ずしも必要なものでは無かったと思います」
マナはもうどうにでとなれ、と何処か吹っ切れた様子でそう答える。
いやホント、こんな面倒事に巻き込んですんません。
「そもそも我に名は無かったがな。ブラッドタイガーは子を複数産むのでな、名をつける風習もなく、また我自身も目立つ者でも無かったので人からの呼び名もない」
「ブラッドタイガー?」
何その名前、超怖いんだけど。
「元はブラッドタイガーなのですか?……いえ、確かブラッドタイガーは生まれた時は体毛が白く、獲物を狩って強くなればなるほどその体毛の色を、まるで血を吸っているかの如く紅に染まることからブラッドタイガーとされていますね。それなら白い炎も納得がいきます」
「我は神の使いとなる前はしっかりと紅に染まり、一つの群れを成しておったのだがな……まあ過去のことはよい。主人であるラビットから頂ける名であれば、我はそれを我が名としよう」
名前ねぇ……流石にこの虎に同じネコ科とはいえ「タマ」とかは合わないよな……真っ白い炎に黒い炎の線、額に角が生え背には羽が生える虎……白い、白い虎……白い虎?
「そうだ『白虎』、白虎はどうだ!」
確か西を司る白い虎で、五行の金を司る虎。近年のゲームなどではよく風に分類される空想の生物の名前。
「ふむ……不思議な響きじゃな。だが我は気に入ったぞ!我は今日から白虎として、主人ラビットに仕えるぞ!」
そう言うと虎改め白虎は突然発光し、そして封印が解けてすぐの時の直径10センチの小さな光の球となり、俺の心臓のあたりにスゥ……と入ってしまった。
「え、ちょ、何!?」
驚き慌てふためく俺に対し、変化はまだ続く。
俺の体が薄く発光し始め、それは腕や足を覆い五本の指の先には鋭い虎と同じ爪が覆い、背中に違和感を感じたと思えば肩甲骨の辺りから急に羽が生え服に穴を開けて広がる。
「何これ何これ何が起きてんのこれ、おいちょ、白虎!」
そう言って俺は背中を見ようと右に体を捻り、その際に左手をブンと大きく振ってしまった。
そして、俺を中心に魔力を帯びた真空の斬撃が飛び、合計十数本の木が薙ぎ倒される。
『今は迂闊に動かない方が良いぞ、力に慣れておらぬのだから』
座っていたマナの頭の上スレスレを通ったその斬撃の鋭さを見た俺は、動かない事に全力を注ぐことにした。
『今は主と魔力のやり取りを行うためのラインを構築しておるのだ、それが済めば雪崩れ込んでいる力もコントロール出来よう。暫し待っておれば時期収まる』
そして約1分程固まっていると体に起きたその変化は消え去り、薙ぎ倒された木々と背中に空いた穴が残った。
「一先ず村に戻りましょうか。今後の事に関しましてはマークと共に話し合った方が良いでしょうね」
「これ、サヤに見せらんないよな……てかなんて話せばいいんだよ……」
『早速面白そうなことになりそうだな、主よ』
俺はここに来たことを内心後悔しつつ、しかし現実問題これからどうするかをマナと話し合いながら村に戻る。
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