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第二章 サラタール王国剣魔術大会
神の使い魔の強さ
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「俺にもわかるよう教えろよ!!」
俺がそう怒鳴った時、マナと巨大な白い炎の虎は話を止めて俺の方をジッと見てきた。
そのまま10秒ほどずっと真顔で見つめてきてこれはやばいかと思ったのだが、マナがため息をつき、それを見た虎は何故か少しニッとした。
《ふむ、やはりこの女性はまだまだ未熟だな。確かに強く戦闘センスも抜群のようだが、些か自身の状況判断能力と知識を過信しているようだ》
そう直接頭に響いた声に俺はビクッと反応しかけたが、何故か体が動かない。
更にこのことをサヤに説明しようにも口が開かず、指先を動かすことすら出来ない
《何も知らないお主に過去の出来事を見せてやろう。我は神の魔力を所持しているのだ、魔法に不慣れな人一人ぐらいならこのような事も出来るのだ》
これは虎の魔法なのか?能力か何かか?全然わからないしマナは何か話してきているが、それに対して俺はいつも通りの口調で勝手に喋る。
《お主が過去の記憶を見てきたあとに体の自由を解放してやろう。我が直接語るよりその方がよくわかるはずだ》
おいちょっと待……
《この状態を維持するのもなかなか大変でな、では行くぞ》
そうして俺はこの虎が神の使いになる前後の記憶を流し込まれ、疑似体験をした。
俺はそこでサヤ自身も教えられていないあることを知った。
「うっわぁ……」
疑似体験を終えた俺は、驚愕でも感動でも悲しみでもなく、ただただうんざりとした気持ちになった。
実際に思ったことを口に出せたのは、虎が本当に俺の体を解放したからだろう。
「何かあったのか」
俺の声を聞いたマナが未だに虎と睨み合ったまま、俺に聞いてくる。
日は封印を解いた際からほぼ動いておらず、時間は長くとも数分であったのではないかと思う。
「お主はまだまだ未熟だ」
虎はマナに向けてそう語りかける。
「この実力差を理解出来ているはずではないのですか、神の使い」
マナは魔力の槍を更に増やして、森に展開していた槍も全て虎を中心に取り囲むよう配置する。
「勿論我はお主よりは弱く、またどう足掻いても勝ち目がないことはわかっておる。だがしかし、お主は力は強いが些か自身の能力と知識を過信しておる」
「それはどういう……な、ラビットに何をした、神の使い!!」
マナは今ようやく俺の先程のおかしな反応が目の前の虎によるものと理解したらしく、全身に糸を巻きつけ地面に縫い付ける。
「なに、少し神の魔力を使用して彼の体を操り、我のとある記憶を見せ終えるまでの間反応が外に出ないようにしただけだ」
そういう虎に対し、マナは怪訝そうな表情に変わる。
「魔力の反応はなかったはず……」
「過信していると言っただろう?我は体からずっと魔力を撒き散らしているが、その魔力は漂って消えるのではなく全て彼の体の中に注ぎ込み、彼の魔力と混ぜることでわからなくしただけだ」
と、その言葉を聞いたマナはちょつとだけ眉を寄せ、そして驚愕の表情に変わる。
「ラビットの魔力と混ぜた!?」
俺はそのマナのあまりの反応に驚く。
「そんなに驚くことなのか?」
確かにそんなことはこの世界に着て日が浅いし聞いたこともないが、だからといってここまで驚愕するようなものなのだろうか?
「何を言って……ああ、常識すら知らなかったですね……」
マナは何故か魔力の槍の本数を減らし虎の拘束を解くと、なんでこんなことにと言わんばかりの表情でこう言った。
「これは10で習うことなのですが、魔獣と心を通わせる、もしくは凄く懐かれた場合は自らの魔力と魔物の魔力を合わせる事により、その魔物を己の『従魔』として契約することが出来るのですよ」
「……は?」
いや、従魔?契約?何それ聞いたことないっつうか俺契約とか聞いてないってかそれ以前に契約ってもしかしてこの虎とか?何かの冗談だろ?
「魔物の側から一方的に契約を行う例もあると聞いたことはありましたが、まさか今、こんな形で見ることになるとは思いませんでしたよ」
そういうとマナは頭を抱えてしまった。
「おい虎ちょっと待て、冗談だよな、契約とかしてないよな!?」
そう聞くと、虎はにやりとしてこう言った。
「悪いなラビットよ、我は神の魔力で自壊寸前だったのでな。契約することで我の自壊を防ぎ、また我を封印や討伐などすれば少なからず主人となるラビットに対し少なからぬ影響が出るので迂闊に手出しも出来なくなるのだよ」
……えーっと、つまり俺はこの虎の良いように利用された、と。
「だが悪いことばかりではないぞ?我のような神の使いと契約する者などまずおらんし、従魔契約を行った魔物は主人に害をなすことは出来ぬし、己の魔力を込めて命令を行うことで強制的に指示に従わせる事も出来る」
そして虎はゆっくりと俺の側に来ると、シャツの襟を噛んで背中に乗せられた。
白い炎の体だから熱いだろと思ったのだが全く熱くなく、むしろ微かにひんやりしていて心地がいい。
「それに我はお主が気に入ったのだ。不幸体質とはまたレアで、とても面白そうではないか!」
俺からしたら勝手に従魔になられたことが既に不幸だと思います。
俺がそう怒鳴った時、マナと巨大な白い炎の虎は話を止めて俺の方をジッと見てきた。
そのまま10秒ほどずっと真顔で見つめてきてこれはやばいかと思ったのだが、マナがため息をつき、それを見た虎は何故か少しニッとした。
《ふむ、やはりこの女性はまだまだ未熟だな。確かに強く戦闘センスも抜群のようだが、些か自身の状況判断能力と知識を過信しているようだ》
そう直接頭に響いた声に俺はビクッと反応しかけたが、何故か体が動かない。
更にこのことをサヤに説明しようにも口が開かず、指先を動かすことすら出来ない
《何も知らないお主に過去の出来事を見せてやろう。我は神の魔力を所持しているのだ、魔法に不慣れな人一人ぐらいならこのような事も出来るのだ》
これは虎の魔法なのか?能力か何かか?全然わからないしマナは何か話してきているが、それに対して俺はいつも通りの口調で勝手に喋る。
《お主が過去の記憶を見てきたあとに体の自由を解放してやろう。我が直接語るよりその方がよくわかるはずだ》
おいちょっと待……
《この状態を維持するのもなかなか大変でな、では行くぞ》
そうして俺はこの虎が神の使いになる前後の記憶を流し込まれ、疑似体験をした。
俺はそこでサヤ自身も教えられていないあることを知った。
「うっわぁ……」
疑似体験を終えた俺は、驚愕でも感動でも悲しみでもなく、ただただうんざりとした気持ちになった。
実際に思ったことを口に出せたのは、虎が本当に俺の体を解放したからだろう。
「何かあったのか」
俺の声を聞いたマナが未だに虎と睨み合ったまま、俺に聞いてくる。
日は封印を解いた際からほぼ動いておらず、時間は長くとも数分であったのではないかと思う。
「お主はまだまだ未熟だ」
虎はマナに向けてそう語りかける。
「この実力差を理解出来ているはずではないのですか、神の使い」
マナは魔力の槍を更に増やして、森に展開していた槍も全て虎を中心に取り囲むよう配置する。
「勿論我はお主よりは弱く、またどう足掻いても勝ち目がないことはわかっておる。だがしかし、お主は力は強いが些か自身の能力と知識を過信しておる」
「それはどういう……な、ラビットに何をした、神の使い!!」
マナは今ようやく俺の先程のおかしな反応が目の前の虎によるものと理解したらしく、全身に糸を巻きつけ地面に縫い付ける。
「なに、少し神の魔力を使用して彼の体を操り、我のとある記憶を見せ終えるまでの間反応が外に出ないようにしただけだ」
そういう虎に対し、マナは怪訝そうな表情に変わる。
「魔力の反応はなかったはず……」
「過信していると言っただろう?我は体からずっと魔力を撒き散らしているが、その魔力は漂って消えるのではなく全て彼の体の中に注ぎ込み、彼の魔力と混ぜることでわからなくしただけだ」
と、その言葉を聞いたマナはちょつとだけ眉を寄せ、そして驚愕の表情に変わる。
「ラビットの魔力と混ぜた!?」
俺はそのマナのあまりの反応に驚く。
「そんなに驚くことなのか?」
確かにそんなことはこの世界に着て日が浅いし聞いたこともないが、だからといってここまで驚愕するようなものなのだろうか?
「何を言って……ああ、常識すら知らなかったですね……」
マナは何故か魔力の槍の本数を減らし虎の拘束を解くと、なんでこんなことにと言わんばかりの表情でこう言った。
「これは10で習うことなのですが、魔獣と心を通わせる、もしくは凄く懐かれた場合は自らの魔力と魔物の魔力を合わせる事により、その魔物を己の『従魔』として契約することが出来るのですよ」
「……は?」
いや、従魔?契約?何それ聞いたことないっつうか俺契約とか聞いてないってかそれ以前に契約ってもしかしてこの虎とか?何かの冗談だろ?
「魔物の側から一方的に契約を行う例もあると聞いたことはありましたが、まさか今、こんな形で見ることになるとは思いませんでしたよ」
そういうとマナは頭を抱えてしまった。
「おい虎ちょっと待て、冗談だよな、契約とかしてないよな!?」
そう聞くと、虎はにやりとしてこう言った。
「悪いなラビットよ、我は神の魔力で自壊寸前だったのでな。契約することで我の自壊を防ぎ、また我を封印や討伐などすれば少なからず主人となるラビットに対し少なからぬ影響が出るので迂闊に手出しも出来なくなるのだよ」
……えーっと、つまり俺はこの虎の良いように利用された、と。
「だが悪いことばかりではないぞ?我のような神の使いと契約する者などまずおらんし、従魔契約を行った魔物は主人に害をなすことは出来ぬし、己の魔力を込めて命令を行うことで強制的に指示に従わせる事も出来る」
そして虎はゆっくりと俺の側に来ると、シャツの襟を噛んで背中に乗せられた。
白い炎の体だから熱いだろと思ったのだが全く熱くなく、むしろ微かにひんやりしていて心地がいい。
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