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第二章 サラタール王国剣魔術大会
神の使い
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「そういやマナは何時までここに居るんだ?」
現象魔法を教えてもらってから4日目の今日、基礎基本を3日前にマナと総復習してから、俺はサヤと英四郎と共に一昨日、昨日と魔法の特訓をしていたのだ。
その間マナは協会でゆったりと過ごしたり、村の中などを適当に散策などして過ごしていた。
「私がここに滞在している理由ですか?」
マナがタリス国王に言われたのは俺に魔法の基礎を教えることだけなので、既にその依頼に関しては達成しているため、わざわざこの村に滞在する理由がないのだ。
なので今、サヤを起こして顔を洗う際に先に来ていたマナに理由を聞いてみる。
俺があれこれ悩んでもわかる訳ないしな。
「私がまだこの村に滞在している理由はですね、私は元々遠くの国からこの村近辺の依頼を受けて王都に来ていたので、この前の女神ハラスメント誤降臨騒ぎがこの村へ向かうと聞いたものですから、この村に来る日程を少し早めただけなんですよ」
「あ~、今ここで過ごしてんのは俺のせいか」
「そういうことになりますね。ですが、私としては素晴らしい才能を持ったラビットに唾を付けることが出来たので、損をしたとは思ってないですよ?」
「俺みたいな奴に唾を付けたって特に得もないと思うんだが……」
「おはよ~ラビット、おはようございます、マナさん」
そうこう話している内にまだ眠そうに目を擦るサヤがやってきた。
「おうサヤ、今水を汲み直すから」
「おはようございますサヤさん……あの、シャツが裏表反対ですよ?」
今のマナの言葉に俺は水を汲みつつ振り返ると、確かに裏表反対に着ていた。
「え……あ」
サヤは自分の姿、焦茶色の半袖半ズボンを着た自分を見下ろして、そして顔を少し赤くした。
まあサヤは朝に弱いのでこの様なことはそこそこあるらしく、この前も靴を左右逆に履いてたりしてた。
「って、おいおいおい今ここで脱ごうとするな!?」
一応義父は先に協会の仕事の準備をしているし、義母はもう少し後になってからここへ来るのだが、だからといって俺が見てる目の前で直そうとするのは困る。
「繊維魔法『着替え室』」
と、そんな言葉が聞こえた方を見ると、マナの目の前に黒い円形状の小さな穴が現れそこから白い糸が飛び出し、サヤの周囲に円を描くように飛んでいった糸は上から下までを覆い隠す白いカーテンに早変わりした。
「サヤさんも女の子なんだから、寝ぼけてても人前で着替えを始めるのはダメよ?」
「あ、すす、すみません!」
そう言ってサヤがその中で服を直している間に、俺はさっさと水を汲んで今日の清掃箇所であるこの裏庭の清掃道具を取り出した。
「ありがとうございました、マナさん」
そうサヤが言うと、マナは白いカーテンが逆再生でもするようにスルスルと糸に戻り、そして黒い穴に全部入るとその穴も消えてしまった。
そういやと今のが何か聞こうとしたのだが、その前にマナが話し始めた。
「そして私が今受けている依頼の話なのですが、ラビットは聞いた事無いですよね、『神の使い』と呼ばれる存在のことを」
先程まではずっとニコニコしていたマナだったが、急に真剣な雰囲気になったことを感じて俺も掃除をしながらではあるが真剣に聞く。
「ええと、神の使いって確か、神様の力を体の内に溜め込んで全く別の生物に変わってしまった物を指すので合ってますか?」
竹箒を手に取りながらサヤが答える。
「ええ。とは言っても滅多に現れるものではありませんし、溜め込んでしまってもその力に耐え切れずに自壊してしまうものが殆の上、元々強力なものに溜まってしまうことも極々稀なのであまり問題にはならないんですよ」
俺はそこまで聞いて、何か嫌な予感がした……そして俺のこういう予感はよく当たるのだ。
「ですが、ここの南にある森には現在封印されている強力な神の使いが居るので、再封印、もしくはその力を無理矢理にでも発散でもさせなさいという私への指名依頼なんです」
「もしかして、森の奥にあるしめ縄をされた大岩の所でしょうか?」
そうサヤが質問する。
「恐らくそこのはずです。元々は中級の魔物がそこを彷徨いて居るのがおかしいとAランクの冒険者が呼ばれたそうなのですが、その方が神の使いに変化する所を目撃し、その場で封印を施し、これまでにまた別の方々が2回程再封印を施したそうですよ」
「ええと、何故再封印を?」
もしかして倒せないのかと思い質問する。
「いえ、私のような者であれば容易に討伐可能なレベルではあるのですが、仮にも神の力を溜め込んだものなので、そうそう酷く強力でない限りは討伐を忌避する考え方が根強いんです」
そこで言葉を一回切ると、マナは少しだけ考えこむ素振りをし、こう言ったのだ。
「百聞は一見にしかず、私と共に居れば充分守り切ることは可能ですから見に来ませんか?ラビットもサヤさん、二人共です」
その後、掃除を終えてから義父であるマークに行っていいか聞いてみると、マナなら大丈夫だろうと即許可が出た。
そして俺はこの後森へ行ったのだ、この後どのようなことが起きるか全く考える事もせずに。
現象魔法を教えてもらってから4日目の今日、基礎基本を3日前にマナと総復習してから、俺はサヤと英四郎と共に一昨日、昨日と魔法の特訓をしていたのだ。
その間マナは協会でゆったりと過ごしたり、村の中などを適当に散策などして過ごしていた。
「私がここに滞在している理由ですか?」
マナがタリス国王に言われたのは俺に魔法の基礎を教えることだけなので、既にその依頼に関しては達成しているため、わざわざこの村に滞在する理由がないのだ。
なので今、サヤを起こして顔を洗う際に先に来ていたマナに理由を聞いてみる。
俺があれこれ悩んでもわかる訳ないしな。
「私がまだこの村に滞在している理由はですね、私は元々遠くの国からこの村近辺の依頼を受けて王都に来ていたので、この前の女神ハラスメント誤降臨騒ぎがこの村へ向かうと聞いたものですから、この村に来る日程を少し早めただけなんですよ」
「あ~、今ここで過ごしてんのは俺のせいか」
「そういうことになりますね。ですが、私としては素晴らしい才能を持ったラビットに唾を付けることが出来たので、損をしたとは思ってないですよ?」
「俺みたいな奴に唾を付けたって特に得もないと思うんだが……」
「おはよ~ラビット、おはようございます、マナさん」
そうこう話している内にまだ眠そうに目を擦るサヤがやってきた。
「おうサヤ、今水を汲み直すから」
「おはようございますサヤさん……あの、シャツが裏表反対ですよ?」
今のマナの言葉に俺は水を汲みつつ振り返ると、確かに裏表反対に着ていた。
「え……あ」
サヤは自分の姿、焦茶色の半袖半ズボンを着た自分を見下ろして、そして顔を少し赤くした。
まあサヤは朝に弱いのでこの様なことはそこそこあるらしく、この前も靴を左右逆に履いてたりしてた。
「って、おいおいおい今ここで脱ごうとするな!?」
一応義父は先に協会の仕事の準備をしているし、義母はもう少し後になってからここへ来るのだが、だからといって俺が見てる目の前で直そうとするのは困る。
「繊維魔法『着替え室』」
と、そんな言葉が聞こえた方を見ると、マナの目の前に黒い円形状の小さな穴が現れそこから白い糸が飛び出し、サヤの周囲に円を描くように飛んでいった糸は上から下までを覆い隠す白いカーテンに早変わりした。
「サヤさんも女の子なんだから、寝ぼけてても人前で着替えを始めるのはダメよ?」
「あ、すす、すみません!」
そう言ってサヤがその中で服を直している間に、俺はさっさと水を汲んで今日の清掃箇所であるこの裏庭の清掃道具を取り出した。
「ありがとうございました、マナさん」
そうサヤが言うと、マナは白いカーテンが逆再生でもするようにスルスルと糸に戻り、そして黒い穴に全部入るとその穴も消えてしまった。
そういやと今のが何か聞こうとしたのだが、その前にマナが話し始めた。
「そして私が今受けている依頼の話なのですが、ラビットは聞いた事無いですよね、『神の使い』と呼ばれる存在のことを」
先程まではずっとニコニコしていたマナだったが、急に真剣な雰囲気になったことを感じて俺も掃除をしながらではあるが真剣に聞く。
「ええと、神の使いって確か、神様の力を体の内に溜め込んで全く別の生物に変わってしまった物を指すので合ってますか?」
竹箒を手に取りながらサヤが答える。
「ええ。とは言っても滅多に現れるものではありませんし、溜め込んでしまってもその力に耐え切れずに自壊してしまうものが殆の上、元々強力なものに溜まってしまうことも極々稀なのであまり問題にはならないんですよ」
俺はそこまで聞いて、何か嫌な予感がした……そして俺のこういう予感はよく当たるのだ。
「ですが、ここの南にある森には現在封印されている強力な神の使いが居るので、再封印、もしくはその力を無理矢理にでも発散でもさせなさいという私への指名依頼なんです」
「もしかして、森の奥にあるしめ縄をされた大岩の所でしょうか?」
そうサヤが質問する。
「恐らくそこのはずです。元々は中級の魔物がそこを彷徨いて居るのがおかしいとAランクの冒険者が呼ばれたそうなのですが、その方が神の使いに変化する所を目撃し、その場で封印を施し、これまでにまた別の方々が2回程再封印を施したそうですよ」
「ええと、何故再封印を?」
もしかして倒せないのかと思い質問する。
「いえ、私のような者であれば容易に討伐可能なレベルではあるのですが、仮にも神の力を溜め込んだものなので、そうそう酷く強力でない限りは討伐を忌避する考え方が根強いんです」
そこで言葉を一回切ると、マナは少しだけ考えこむ素振りをし、こう言ったのだ。
「百聞は一見にしかず、私と共に居れば充分守り切ることは可能ですから見に来ませんか?ラビットもサヤさん、二人共です」
その後、掃除を終えてから義父であるマークに行っていいか聞いてみると、マナなら大丈夫だろうと即許可が出た。
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