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第一章 不幸な俺の不幸な人生
俺の魔法適正
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「ただいま~」
「ただいま」
あのあとも一戦交えたのだが、足元が覚束ないためすぐに勝負がついてしまい、今日はもう切り上げることとなった。
「おお、その様子だとまたサヤにやられたのだな」
そういう義父にサヤは頬を膨らます。
「その言い方だと、まるで私が悪いみたいじゃない」
「スマンスマン」
そういって笑う義父は、しかしすぐに真剣な表情になってこう続けた。
「やはり、魔法の使い方を特訓した方がいいだろうな」
時間は巻き戻り、これは異世界生活二日目の話である。
「なぁ、そういや昨日魔力がどうのとか言ってたけど、俺も頑張れば魔法使えたりすんのか?」
元の世界では存在しないとされている魔法。
俺も勿論憧れは確かにありはしたが、それ以上に不幸により毎日がサバイバル生活の俺は中二病のようなことなんて考える暇もなかった。
しかし、この世界では普通に魔法が使われるようであるから俺は半ば期待して聞いた。
「ああ、君程の力があれば簡単なのはすぐにマスターしてしまえそうだが、今はダメだ」
それは予想外の答えであった。
「え、何でダメなんだよ!」
そう聞き返す俺に、義父は落ち着いてこう返した。
「君はまだ生命力があらかた回復したばかりなんだ、もし教えてる時に不慮の事故が発生しようものなら次は回復できるかわからない。だからもう少し君の生命力の回復を待ちたいんだ」
「ああ、そういやそう言ってたな」
「それに、君はまだこの世界のことをよく知らないだろう?まずはこの世界の常識を学び、適応する方が魔法を覚えるよりも重要なことだとおもうのだが、どうかね?」
「う……そうですね」
それは物凄く正論で、俺は頷くしかなかったのだ。
「よし、それではまずは魔法の使い方から覚えようか」
義父は俺とサヤを連れて教会の裏庭に行く。
風呂場や井戸がある所だ。
「まず君にはそこのランプを光らせる所から始めよう」
「へぇ、なんか呪文でも唱えるのか?」
魔法をよく知らない俺は、適当にそう聞いてみる。
「いや、呪文や魔法陣などを使う魔法は魔術に分類される。魔法は何もないところに自分の意志で現象を自由に発生させるものだ」
義父は魔法と魔術の違いまで教えてくれた。
「じゃあ、まずは私がやってみせるね」
横で見ていたサラが手を広げ、手のひらをランプに向ける。
「慣れたらこういう動作は無くても使えるけど、慣れない内はちゃんと場所の指定をするために手を向けたりするとやりやすいよ」
勿論先程まで複雑な魔法を使いまくっていたサヤのことだ、何もなくとも余裕で発光は出来るのだろうが俺のために手本を見せてくれる。
「今回は手のひらに魔力を溜めるイメージをして、それをあのランプの中に入れるイメージをするとやりやすいよ」
彼女はわざわざわかりやすいように道筋を光魔法で発光させる。
「そうして手元から対象に魔力を移して、そこで発光するイメージをする」
すると、綺麗なオレンジ色の光を発し始めた。
ただ少しすると緑や青にも色を変える。
「イメージ次第でこんなことも出来るんだよ」
応用まで見せた上で魔法を止め、最後にこう付け加える。
「初めはイメージを強くするためにやりたいことを口に出すとやりやすいよ」
サヤはそこまで説明すると場所を少し離れ、同じ場所からやってみることを勧める。
俺はそこから手のひらをランプに向け、魔力が集まるイメージをすると、体内から何かの力が減って手元に行くのを感じる。
これが魔力が移動した証拠なのだろう。
そしてそこからランプに移動させるイメージを持つと、実際に魔力が移動する感覚が何故か感じられた。
そしてランプの中に全て入れたと感じたら、こう叫んだ。
「発光!!」
夕焼けで赤く染まっていた空が一瞬で昼間のように明るくなり、それを直視していた俺と義父とサヤは目を押さえて地面を転がる。
あまりに強力なその光が目を焼いたのだ。
幸いイメージが漠然としていたため、それが数十秒ほど発光を続ける魔力配分となり、失明に至ることはなかった。
だがしかし、ここまでド派手なことをやらかせば後がどうなるかなど、誰でも予想がつくだろう。
……そう、村人が集まってきて何事かと大パニックになったのだ。
「ただいま」
あのあとも一戦交えたのだが、足元が覚束ないためすぐに勝負がついてしまい、今日はもう切り上げることとなった。
「おお、その様子だとまたサヤにやられたのだな」
そういう義父にサヤは頬を膨らます。
「その言い方だと、まるで私が悪いみたいじゃない」
「スマンスマン」
そういって笑う義父は、しかしすぐに真剣な表情になってこう続けた。
「やはり、魔法の使い方を特訓した方がいいだろうな」
時間は巻き戻り、これは異世界生活二日目の話である。
「なぁ、そういや昨日魔力がどうのとか言ってたけど、俺も頑張れば魔法使えたりすんのか?」
元の世界では存在しないとされている魔法。
俺も勿論憧れは確かにありはしたが、それ以上に不幸により毎日がサバイバル生活の俺は中二病のようなことなんて考える暇もなかった。
しかし、この世界では普通に魔法が使われるようであるから俺は半ば期待して聞いた。
「ああ、君程の力があれば簡単なのはすぐにマスターしてしまえそうだが、今はダメだ」
それは予想外の答えであった。
「え、何でダメなんだよ!」
そう聞き返す俺に、義父は落ち着いてこう返した。
「君はまだ生命力があらかた回復したばかりなんだ、もし教えてる時に不慮の事故が発生しようものなら次は回復できるかわからない。だからもう少し君の生命力の回復を待ちたいんだ」
「ああ、そういやそう言ってたな」
「それに、君はまだこの世界のことをよく知らないだろう?まずはこの世界の常識を学び、適応する方が魔法を覚えるよりも重要なことだとおもうのだが、どうかね?」
「う……そうですね」
それは物凄く正論で、俺は頷くしかなかったのだ。
「よし、それではまずは魔法の使い方から覚えようか」
義父は俺とサヤを連れて教会の裏庭に行く。
風呂場や井戸がある所だ。
「まず君にはそこのランプを光らせる所から始めよう」
「へぇ、なんか呪文でも唱えるのか?」
魔法をよく知らない俺は、適当にそう聞いてみる。
「いや、呪文や魔法陣などを使う魔法は魔術に分類される。魔法は何もないところに自分の意志で現象を自由に発生させるものだ」
義父は魔法と魔術の違いまで教えてくれた。
「じゃあ、まずは私がやってみせるね」
横で見ていたサラが手を広げ、手のひらをランプに向ける。
「慣れたらこういう動作は無くても使えるけど、慣れない内はちゃんと場所の指定をするために手を向けたりするとやりやすいよ」
勿論先程まで複雑な魔法を使いまくっていたサヤのことだ、何もなくとも余裕で発光は出来るのだろうが俺のために手本を見せてくれる。
「今回は手のひらに魔力を溜めるイメージをして、それをあのランプの中に入れるイメージをするとやりやすいよ」
彼女はわざわざわかりやすいように道筋を光魔法で発光させる。
「そうして手元から対象に魔力を移して、そこで発光するイメージをする」
すると、綺麗なオレンジ色の光を発し始めた。
ただ少しすると緑や青にも色を変える。
「イメージ次第でこんなことも出来るんだよ」
応用まで見せた上で魔法を止め、最後にこう付け加える。
「初めはイメージを強くするためにやりたいことを口に出すとやりやすいよ」
サヤはそこまで説明すると場所を少し離れ、同じ場所からやってみることを勧める。
俺はそこから手のひらをランプに向け、魔力が集まるイメージをすると、体内から何かの力が減って手元に行くのを感じる。
これが魔力が移動した証拠なのだろう。
そしてそこからランプに移動させるイメージを持つと、実際に魔力が移動する感覚が何故か感じられた。
そしてランプの中に全て入れたと感じたら、こう叫んだ。
「発光!!」
夕焼けで赤く染まっていた空が一瞬で昼間のように明るくなり、それを直視していた俺と義父とサヤは目を押さえて地面を転がる。
あまりに強力なその光が目を焼いたのだ。
幸いイメージが漠然としていたため、それが数十秒ほど発光を続ける魔力配分となり、失明に至ることはなかった。
だがしかし、ここまでド派手なことをやらかせば後がどうなるかなど、誰でも予想がつくだろう。
……そう、村人が集まってきて何事かと大パニックになったのだ。
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