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第一章 不幸な俺の不幸な人生
サヤの本当の実力
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翌日、今日は午前中からサヤと戦闘訓練をしている。
「うわ!?」
今日も川辺の草地でやっていたのだが、俺は草に足を取られてすっ転ぶ。
「うん、勝負あり」
そう言ってサヤは俺の首筋に木刀を軽く添えた。
一旦離して貰ってその場に座り、ダメ出しを受ける。
「ほら、魔法の気配はさっき教えたんだから、足元の草を絡ませてなのに気付くよう意識しとかないと」
今日からサヤに頼んで魔法と合わせた戦闘を繰り返し行ってもらっている。
「んなこと言われてもサヤの魔力反応が薄すぎるんだよ」
今サヤが行ったのは、微弱な風を起して草を硬結びするというものだった。
ここまで細やかな芸当が出来るのは王国中探しても10人程しかいないらしい。
「まあねー。でも私を倒せないと本戦で勝つなんて夢のまた夢だよ?」
「う……」
といってもサヤはその年の優勝者と戦ったらしいのだ。
その上で結果こそ大敗したものの、一番奮闘したのはサヤだったらしい。
本当に、人は見かけにはよらないものだ。
ちなみに服装に関しては、俺は短パンにTシャツの格好に対し、サヤは焦げ茶色の魔女帽子に体には焦げ茶の膝丈のスカート、上も焦げ茶のTシャツに、またまた焦げ茶のローブを羽織っている。
何故焦げ茶なのかというと、単にその色の服が好きらしい。
「てか、何でサヤはその格好で剣使ってるの?もう魔法だけで行けるんじゃない?」
俺は投げやり気味にそういう。
別に拗ねたりしているわけではなく、単にそう思ったことを言っただけだ。
「私もそうしたいんだけどね、魔力量が人より極端に少ないの」
彼女曰く、魔法を扱う腕には凄く長けているものの扱える魔力が人より少ないため、攻撃などに使うには向かないんだそう。
「その代わりに私は繊細さを駆使して、剣術をサポートするように特化したのよ」
これは去年の大会の話しなのだが、彼女は石で出来たフィールドでの試合で、相手の目の一ミリ前に光りを放つだけの魔法を使い目潰しを行い、そこを摸造剣で鳩尾に突きを入れたり、ステージ端に追い込まれるフリをして横に避け、背中に風魔法を放って体制を崩した所に蹴りを入れて落としたり、本当に様々なあの手この手で戦ったそうだ。
……中々にエグい戦い方をする。
「よし、それじゃあもう一戦!」
「うん!」
そうして再び木刀を構え、俺はサヤに向かい剣を振る。
しかし、軽くあしらっている彼女を狙っていた筈が段々気分が悪くなり、突然激しい吐き気が催された。
しかも頭がガンガン痛むし激しい立ちくらみまで起きる。
「う、ぐ……」
俺はとても立ってなどいられなくなり膝をついてしまう。
そこに彼女が木刀を顔面に突きつけて、勝敗がつく。
「初見でこれの対処は無理よね」
サヤは苦笑して使っていたらしい魔法を解く。
しかしすぐに症状が緩和することはなかったが、時間経過と共に徐々に収まってくる。
「さっきの何をしたんだよ」
木陰に移動してからサヤに聞く。
未だに頭がボーッとする感覚がある。
「えっとね、ただの振動系魔法で空気振動を起こしたなんだけど、それを超音波の域にまで高めて相手の感覚を狂わせるの。本来あの魔法は敵集団のど真ん中で使うものなんだけど、私はそれに指向性を与えて特定の相手にだけ超音波を当ててるの」
彼女はこれを簡単そうに言うが、魔法すら使ったことのない俺ではよく分からないが、かなり凄いことなのだろうと思う。
「てか、どんだけ手札多いんだよ」
きっとこれも試合の際に使用したのであろう。
「あとは風魔法で相手の周囲を真空にするやり方もあるけど、そっちは危険だからね」
……俺、こんな調子で本当にサラタール王国剣魔術大会優勝なんて出来るのだろうか。
段々不安になってきた。
「うわ!?」
今日も川辺の草地でやっていたのだが、俺は草に足を取られてすっ転ぶ。
「うん、勝負あり」
そう言ってサヤは俺の首筋に木刀を軽く添えた。
一旦離して貰ってその場に座り、ダメ出しを受ける。
「ほら、魔法の気配はさっき教えたんだから、足元の草を絡ませてなのに気付くよう意識しとかないと」
今日からサヤに頼んで魔法と合わせた戦闘を繰り返し行ってもらっている。
「んなこと言われてもサヤの魔力反応が薄すぎるんだよ」
今サヤが行ったのは、微弱な風を起して草を硬結びするというものだった。
ここまで細やかな芸当が出来るのは王国中探しても10人程しかいないらしい。
「まあねー。でも私を倒せないと本戦で勝つなんて夢のまた夢だよ?」
「う……」
といってもサヤはその年の優勝者と戦ったらしいのだ。
その上で結果こそ大敗したものの、一番奮闘したのはサヤだったらしい。
本当に、人は見かけにはよらないものだ。
ちなみに服装に関しては、俺は短パンにTシャツの格好に対し、サヤは焦げ茶色の魔女帽子に体には焦げ茶の膝丈のスカート、上も焦げ茶のTシャツに、またまた焦げ茶のローブを羽織っている。
何故焦げ茶なのかというと、単にその色の服が好きらしい。
「てか、何でサヤはその格好で剣使ってるの?もう魔法だけで行けるんじゃない?」
俺は投げやり気味にそういう。
別に拗ねたりしているわけではなく、単にそう思ったことを言っただけだ。
「私もそうしたいんだけどね、魔力量が人より極端に少ないの」
彼女曰く、魔法を扱う腕には凄く長けているものの扱える魔力が人より少ないため、攻撃などに使うには向かないんだそう。
「その代わりに私は繊細さを駆使して、剣術をサポートするように特化したのよ」
これは去年の大会の話しなのだが、彼女は石で出来たフィールドでの試合で、相手の目の一ミリ前に光りを放つだけの魔法を使い目潰しを行い、そこを摸造剣で鳩尾に突きを入れたり、ステージ端に追い込まれるフリをして横に避け、背中に風魔法を放って体制を崩した所に蹴りを入れて落としたり、本当に様々なあの手この手で戦ったそうだ。
……中々にエグい戦い方をする。
「よし、それじゃあもう一戦!」
「うん!」
そうして再び木刀を構え、俺はサヤに向かい剣を振る。
しかし、軽くあしらっている彼女を狙っていた筈が段々気分が悪くなり、突然激しい吐き気が催された。
しかも頭がガンガン痛むし激しい立ちくらみまで起きる。
「う、ぐ……」
俺はとても立ってなどいられなくなり膝をついてしまう。
そこに彼女が木刀を顔面に突きつけて、勝敗がつく。
「初見でこれの対処は無理よね」
サヤは苦笑して使っていたらしい魔法を解く。
しかしすぐに症状が緩和することはなかったが、時間経過と共に徐々に収まってくる。
「さっきの何をしたんだよ」
木陰に移動してからサヤに聞く。
未だに頭がボーッとする感覚がある。
「えっとね、ただの振動系魔法で空気振動を起こしたなんだけど、それを超音波の域にまで高めて相手の感覚を狂わせるの。本来あの魔法は敵集団のど真ん中で使うものなんだけど、私はそれに指向性を与えて特定の相手にだけ超音波を当ててるの」
彼女はこれを簡単そうに言うが、魔法すら使ったことのない俺ではよく分からないが、かなり凄いことなのだろうと思う。
「てか、どんだけ手札多いんだよ」
きっとこれも試合の際に使用したのであろう。
「あとは風魔法で相手の周囲を真空にするやり方もあるけど、そっちは危険だからね」
……俺、こんな調子で本当にサラタール王国剣魔術大会優勝なんて出来るのだろうか。
段々不安になってきた。
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