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第一章 不幸な俺の不幸な人生
異世界での俺の名前が兎ってなんでだよ!!
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その後、卓袱台に並んだ白米と昨日の残り物の白身魚の揚げ物(昨日皿についだのとは別にまだまだあったらしい)と、キャベツと呼ばれている、元の世界のレタスのような物(紛らわしいにも程がある)に酸味がある木の実を潰して出た汁をかけた物(いわゆるドレッシング)が並んだ。
流石に今回も涙を流すことは無かったが、この御馳走を食べられたことに関しては異世界に連れてきた不幸に感謝しても……いや、そもそもマトモなとこに生まれたら良かったのだ。
朝食を食べ終え、片付けをした時の時間は午前7時10分前(一日が同じ24時間なので、この世界との表記は違うがわかる)になっており、神父は教壇に立って朝のお祈りを始めた。
俺はその内容を聞いて、この異世界の宗教について学ぶことにする。
お祈りの内容を要約するとこうなる。
今日も一日真面目に働き飯を食べ、健康に過ごせることを神に感謝せよ。
病める者も今日も食があり、仲間が居て支え合うことに感謝せよ。
我らの神、女神ハラスメントは今日も静かに見守って下さっている。
……おいなんだその女神の名前、思いっきり悪意しか感じ取れねぇ……
だかしかし、この世界においてはハラスメントというのは大いなる女神の名前であり、それ以外の意味はないのだろうから、決して女神が何かよろしくない人ではないのだろう……きっと、たぶん……そうであって欲しい。
あとで神父に聞いた話では、名前の由来はこの世界における『ハラス』(悪を遠ざける者)と『メント』(祝福をもたらす者)という言葉から来ているらしい。
つまり、それを合わせると『悪を遠ざけ祝福をもたらす者』という意味になり、それは正しく女神として相応しい名前であった。
……少なくとも、元の世界でそれを言ったら確実に問題になることは確かだ。
もしも女性を口説く時に「貴方はまるで女神ハラスメントのように美しい」なんて言おうものなら(罰当たりもいいところだが)、きっと叩かれるか警察でも呼ばれるかしそうである。
朝のお祈りが終わったあと、本来であれば神父か領主としての書類の整理か村の施設や家々をまわって様子を確認するらしいのだが、今日は神父の書斎に俺の戸籍と身分証明書を作る為、カリナンテ家の三人と俺が居た。
そして神父は書類を用意して、いきなり大問題を提示してきた。
「それで早速なのだけど、君の名前である厄持 盾屋で登録をすれば大変な大問題が発生してしまうのだ」
一応、盾屋と言う名前自体はよくあるのでいいのだが、フルネームそのままで、尚かつ自分の持つ魔力の質と合わせると国家レベルの大騒動になってしまうのだと説明を受けた。
顔も名前も知らないクソ親め、あんたらマジでなんでこんな名前にしやがったコンチクショウ!!
なので、この異世界に於いては別の名前を使う……勿論偽名ではなく、この場合は元の世界の名前とこちらの名前の区別である。
決して嘘で登録しようと言う訳ではないのだ。
そんな訳で、全員で俺のこの世界における名前を考える。
そして少しの間をおいて、サヤがポツリと呟く。
「アウト・ラビット、なんてどうかな?」
日本語に直訳すると『外兎』。
「は、なんか可愛らしい名前だな、それ」
と素直な感想を述べたのだが、三人は驚きの表情になった。
「いやいやいや、兎が可愛らしいって?確かにそうかもだが、下手したら人が命を落としかねないかなり危険な獣だぞ!?」
……は?
「確かお父さんここに図鑑をおいて……あった!」
サヤが席を立って書斎にある本棚を漁って持ってきたのは、いわゆる動物図鑑だ。
その危険な動物の欄の始めの方にあったウサギの欄には、全長2Mは余裕であり、鋭く尖ったツノを持ち、獲物を狩る時や自分の身を守るときには凄く発達している後ろ脚で前方向に跳びかかり、鋭く尖ったツノで相手を一突きで殺してしまうと書かれていた。
しかし、危害を加えないことを伝え心を通わせた場合は自らの背に人を乗せて走ることもあるらしいが、周囲が怖がるので主な交通手段などとしては到底使えるものではないし、実際移動していて、見通しの悪い十字路で飛び出した人を刺し殺した事件もあったらしい。
……え、マジか……
「外から飛び込んで来た者、って感じ何だけど、どうかな?」
サヤが少々ビクビクしながら言う。
いやなんで怯えてるのさ。
その後他の欄も試行錯誤しながら書き込んで無事書類は完成し、それを王都へ定期便に乗せて運んでもらい、無事俺はこの国の国民として、あとカリナンテ家の養子としてここの村人となることが出来た。
その書類に書かれた俺の名前はこうである。
『アウト・ラビット・カリナンテ』
流石に今回も涙を流すことは無かったが、この御馳走を食べられたことに関しては異世界に連れてきた不幸に感謝しても……いや、そもそもマトモなとこに生まれたら良かったのだ。
朝食を食べ終え、片付けをした時の時間は午前7時10分前(一日が同じ24時間なので、この世界との表記は違うがわかる)になっており、神父は教壇に立って朝のお祈りを始めた。
俺はその内容を聞いて、この異世界の宗教について学ぶことにする。
お祈りの内容を要約するとこうなる。
今日も一日真面目に働き飯を食べ、健康に過ごせることを神に感謝せよ。
病める者も今日も食があり、仲間が居て支え合うことに感謝せよ。
我らの神、女神ハラスメントは今日も静かに見守って下さっている。
……おいなんだその女神の名前、思いっきり悪意しか感じ取れねぇ……
だかしかし、この世界においてはハラスメントというのは大いなる女神の名前であり、それ以外の意味はないのだろうから、決して女神が何かよろしくない人ではないのだろう……きっと、たぶん……そうであって欲しい。
あとで神父に聞いた話では、名前の由来はこの世界における『ハラス』(悪を遠ざける者)と『メント』(祝福をもたらす者)という言葉から来ているらしい。
つまり、それを合わせると『悪を遠ざけ祝福をもたらす者』という意味になり、それは正しく女神として相応しい名前であった。
……少なくとも、元の世界でそれを言ったら確実に問題になることは確かだ。
もしも女性を口説く時に「貴方はまるで女神ハラスメントのように美しい」なんて言おうものなら(罰当たりもいいところだが)、きっと叩かれるか警察でも呼ばれるかしそうである。
朝のお祈りが終わったあと、本来であれば神父か領主としての書類の整理か村の施設や家々をまわって様子を確認するらしいのだが、今日は神父の書斎に俺の戸籍と身分証明書を作る為、カリナンテ家の三人と俺が居た。
そして神父は書類を用意して、いきなり大問題を提示してきた。
「それで早速なのだけど、君の名前である厄持 盾屋で登録をすれば大変な大問題が発生してしまうのだ」
一応、盾屋と言う名前自体はよくあるのでいいのだが、フルネームそのままで、尚かつ自分の持つ魔力の質と合わせると国家レベルの大騒動になってしまうのだと説明を受けた。
顔も名前も知らないクソ親め、あんたらマジでなんでこんな名前にしやがったコンチクショウ!!
なので、この異世界に於いては別の名前を使う……勿論偽名ではなく、この場合は元の世界の名前とこちらの名前の区別である。
決して嘘で登録しようと言う訳ではないのだ。
そんな訳で、全員で俺のこの世界における名前を考える。
そして少しの間をおいて、サヤがポツリと呟く。
「アウト・ラビット、なんてどうかな?」
日本語に直訳すると『外兎』。
「は、なんか可愛らしい名前だな、それ」
と素直な感想を述べたのだが、三人は驚きの表情になった。
「いやいやいや、兎が可愛らしいって?確かにそうかもだが、下手したら人が命を落としかねないかなり危険な獣だぞ!?」
……は?
「確かお父さんここに図鑑をおいて……あった!」
サヤが席を立って書斎にある本棚を漁って持ってきたのは、いわゆる動物図鑑だ。
その危険な動物の欄の始めの方にあったウサギの欄には、全長2Mは余裕であり、鋭く尖ったツノを持ち、獲物を狩る時や自分の身を守るときには凄く発達している後ろ脚で前方向に跳びかかり、鋭く尖ったツノで相手を一突きで殺してしまうと書かれていた。
しかし、危害を加えないことを伝え心を通わせた場合は自らの背に人を乗せて走ることもあるらしいが、周囲が怖がるので主な交通手段などとしては到底使えるものではないし、実際移動していて、見通しの悪い十字路で飛び出した人を刺し殺した事件もあったらしい。
……え、マジか……
「外から飛び込んで来た者、って感じ何だけど、どうかな?」
サヤが少々ビクビクしながら言う。
いやなんで怯えてるのさ。
その後他の欄も試行錯誤しながら書き込んで無事書類は完成し、それを王都へ定期便に乗せて運んでもらい、無事俺はこの国の国民として、あとカリナンテ家の養子としてここの村人となることが出来た。
その書類に書かれた俺の名前はこうである。
『アウト・ラビット・カリナンテ』
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