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第一章 不幸な俺の不幸な人生
俺は束の間の幸福(幸運とは言ってない)を噛み締める
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「盾屋さん、ご飯が出来ましたよ~」
それから約1時間程経って、サヤが俺を起こしに来た。
俺はその間ぐっすりと眠っていたが、その声ですぐに起きた。
いつものとんでも不幸生活のおかげで、すぐに起きられないと命に関わるからだ。
そしてサヤに連れられた先で、先程の司祭とサヤの母親なのだろうと思う女性と、何故か丸い卓袱台に並べられた食事を囲むように座った。
床は畳である。
(何で教会の一室が畳敷きになってんだよ……)
まあこれがこの世界の普通なのだろうと、突っ込むことはしなかった。
席についた時、聖職者だから少々長く食べる前に神がどうこう言うかなと思っていたが、意外にも『いただきます』とだけいい食べ始めたので、自分も少々早口で言ってから食べ始めた。
そしてこれも意外だったのだが、少なくともこの地域では食事をする際に使うのは箸であったのだ。
並んでいたのは米粉で作られた丸パン、コーンスープ、あとは白身魚の揚げ物が中心に山盛りにされていた。
……明らかに4人分より多かった。
「……美味しい」
俺は白身魚の揚げ物を食べて、そう呟いた。
「え、そう?良かった~!」
このご飯を作ったらしいサヤが嬉しそうに言う。
俺は次にパンを手に取り、食べる。
「美味しい、美味しい……」
「君……」
「あらあら……」
俺は、無意識に涙まで流していた。
これまでの俺の食生活の大半はお米やパンなどは滅多に口にするものではなく、大半はヨモギやその他毒の無い野草を軽く火で炙って食べたり、魚を川で捕って捌いて焼いて、それに海水を沸騰させた塩で食べるのが普通。
たまに山に仕掛けた罠にかかった動物、もしくはそこで自ら狩った動物の皮を剥いで売り払い、それで米などを買い肉を焼いて食べる時は最高の贅沢だろう。
農家のお手伝いで米や野菜を報酬にもらえこともあった。
1人で橋の下で過ごす身としては中々に贅沢をしていた方でもあると思うが、しかしその生活で誰かと共に食卓を囲む事など極稀な例を除けばほぼ無かったのだ。
誰かと食卓を囲んで食べる食事なんて、本当に何時ぶりだろうか。
「本当に大変だったんだね、盾屋君……」
別に餓えていた訳ではないと思っていたのだが、何故かいつもの食う量の倍は食べた気がしたのだが、それは食べ終えてから出してくれたお茶をすすってる時に司祭のオジサンが教えてくれた。
「すみません、気がついたらかなり食べて」
「それは仕方ないことだろう、彼女の腕では通常の治癒と薬草を使ったのでは間に合わなかったらしくてな、君の生命力をかなり減らす代わりに超回復を促す術を使っていたんだ」
そこで少々言いにくそうに言葉を止めて言う。
「ただ……君の状態を聞いた限り、恐らく成功する確率は100分の1ぐらいだったのではと…:…」
「はい!?」
俺、そんな危ない橋を渡ってたのかよ……
「それでゴッソリ減った生命力を回復するために、今は山程の食事を取る必要があったのだよ」
「ごめんなさい、私の力が足りなくて……」
そこに、たった今まで食器を片付けていたサヤが申し訳なさそうに来る。
「いや、それで俺は生きてんだからいいよ」
不運か幸運かは知らんけどな!
そもそも不運がなければこんなことになってないし!!
その後、教会の裏手に別の建物になっている風呂場で体を洗い(これまでは川で体と服を洗っていた)、その後は生命力を回復するためにすぐに部屋に行き、深い眠りについた。
異世界生活一日目、来た時点で命を落としかけるとか本当にどんな不幸だよと叫びたくなるのと同時に、元の世界よりも異世界の方が温かい物が広がっていると、そう思えることがあったのは本当に幸運だったのかもしれない。
……そもそも、俺に付き纏う不幸がなければこんなことにはなっていないのだが。
それから約1時間程経って、サヤが俺を起こしに来た。
俺はその間ぐっすりと眠っていたが、その声ですぐに起きた。
いつものとんでも不幸生活のおかげで、すぐに起きられないと命に関わるからだ。
そしてサヤに連れられた先で、先程の司祭とサヤの母親なのだろうと思う女性と、何故か丸い卓袱台に並べられた食事を囲むように座った。
床は畳である。
(何で教会の一室が畳敷きになってんだよ……)
まあこれがこの世界の普通なのだろうと、突っ込むことはしなかった。
席についた時、聖職者だから少々長く食べる前に神がどうこう言うかなと思っていたが、意外にも『いただきます』とだけいい食べ始めたので、自分も少々早口で言ってから食べ始めた。
そしてこれも意外だったのだが、少なくともこの地域では食事をする際に使うのは箸であったのだ。
並んでいたのは米粉で作られた丸パン、コーンスープ、あとは白身魚の揚げ物が中心に山盛りにされていた。
……明らかに4人分より多かった。
「……美味しい」
俺は白身魚の揚げ物を食べて、そう呟いた。
「え、そう?良かった~!」
このご飯を作ったらしいサヤが嬉しそうに言う。
俺は次にパンを手に取り、食べる。
「美味しい、美味しい……」
「君……」
「あらあら……」
俺は、無意識に涙まで流していた。
これまでの俺の食生活の大半はお米やパンなどは滅多に口にするものではなく、大半はヨモギやその他毒の無い野草を軽く火で炙って食べたり、魚を川で捕って捌いて焼いて、それに海水を沸騰させた塩で食べるのが普通。
たまに山に仕掛けた罠にかかった動物、もしくはそこで自ら狩った動物の皮を剥いで売り払い、それで米などを買い肉を焼いて食べる時は最高の贅沢だろう。
農家のお手伝いで米や野菜を報酬にもらえこともあった。
1人で橋の下で過ごす身としては中々に贅沢をしていた方でもあると思うが、しかしその生活で誰かと共に食卓を囲む事など極稀な例を除けばほぼ無かったのだ。
誰かと食卓を囲んで食べる食事なんて、本当に何時ぶりだろうか。
「本当に大変だったんだね、盾屋君……」
別に餓えていた訳ではないと思っていたのだが、何故かいつもの食う量の倍は食べた気がしたのだが、それは食べ終えてから出してくれたお茶をすすってる時に司祭のオジサンが教えてくれた。
「すみません、気がついたらかなり食べて」
「それは仕方ないことだろう、彼女の腕では通常の治癒と薬草を使ったのでは間に合わなかったらしくてな、君の生命力をかなり減らす代わりに超回復を促す術を使っていたんだ」
そこで少々言いにくそうに言葉を止めて言う。
「ただ……君の状態を聞いた限り、恐らく成功する確率は100分の1ぐらいだったのではと…:…」
「はい!?」
俺、そんな危ない橋を渡ってたのかよ……
「それでゴッソリ減った生命力を回復するために、今は山程の食事を取る必要があったのだよ」
「ごめんなさい、私の力が足りなくて……」
そこに、たった今まで食器を片付けていたサヤが申し訳なさそうに来る。
「いや、それで俺は生きてんだからいいよ」
不運か幸運かは知らんけどな!
そもそも不運がなければこんなことになってないし!!
その後、教会の裏手に別の建物になっている風呂場で体を洗い(これまでは川で体と服を洗っていた)、その後は生命力を回復するためにすぐに部屋に行き、深い眠りについた。
異世界生活一日目、来た時点で命を落としかけるとか本当にどんな不幸だよと叫びたくなるのと同時に、元の世界よりも異世界の方が温かい物が広がっていると、そう思えることがあったのは本当に幸運だったのかもしれない。
……そもそも、俺に付き纏う不幸がなければこんなことにはなっていないのだが。
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