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第一章 不幸な俺の不幸な人生
異世界なんて認めない!
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目が覚めると、頭上には夕焼けの空が広がっていた。
全身の激痛はなく、その上あの時撃たれたはずの傷の痛みさえ感じなかった。
「……夢、だったのか」
俺はあれは夢だったのであろう、ヤクザに追い掛け回されたところから、全部。
「あ、おはようございます、もう夕方ですけれど」
……嘘だ、これは嘘だ、嘘だと言ってくれ。
「え、あの、なんで私を幽霊か何かを見るような目で見るんですかぁ。確かに私の技がまだまだ未熟で激痛が伴う治癒をするしかありませんでしたけれど、貴方を助けたかっただけなんですよぅ」
やば、顔に出てたか。
「すまん、そうじゃない、そうじゃないんだ……とりあえず、お前が介抱してくれたんだよな?」
「はい!」
「……ありがとな」
俺は、産まれて初めて感謝を示す言葉を口にした。
「どうしたしまして」
「……それで、ここは何処なんだ?」
俺は地面から起き上がり周囲を見渡すと、何処かの小高い丘の上に居るようだった。
地面は短い草が青々生茂っていて、天然のカーペットの様であった。
左手には透明無色の綺麗な川が流れており、泳いでいる魚がくっきりと見える。
きっとあれが俺が流れていた川なのだろう。
そして右手には深い森が見え、正面には少々遠くにあるらしい村と、その周囲にはまだまだ青い水田が広がっていた。
俺が唖然としていると、隣りにいた女……サヤ・カリナンテは俺に言う。
「あの、もし今過ごす場所がないのであれば私の家に来ますか?」
それは俺にとってみれば思ってもみない申し出であった。
「マジで!?」
「え、ええ、あまり大きくはないし、大した物は出せないとは思いますが」
「雨風凌げるなら何でもいいよ!!」
俺はあまりの感激に涙すら出そうなくらいだった。
「それじゃあ、案内しますね……ええと……」
そういやまだ名乗ってなかったな。
「俺は盾屋だ、よろしくサヤ」
「こちらこそよろしくね、盾屋」
俺のとんでもない不運によりこの心優しいサヤ迷惑をかけないよう、最大限の注意はしようと心から思った。
……注意した程度でどうこう出来る代物でもないが。
それから歩くこと一時間、俺は今は一先ずここが異世界であると仮定することにした。
そうでないと今のこの状況の説明は出来ないし、なによりサヤにこれ以上過剰に負担をかけるような状況は避けたいし。
あくまでも仮定であり、まだ認めた訳では断じてない!……認めてなんかたまるかよ!!
「ここが私の住むサラタール王国のラヤカナ領、領主館のある村ラヤカナです」
村の入り口には衛兵が居たが、サヤの客人だと言うとアッサリと通してくれた。
通った俺が言うのも何だか、俺程のトラブルメーカーをそう簡単に通してもいいのか?まあ俺のことを知らないのだから当たり前か。
しかし、やはり俺に付き纏う『不幸』はこの世界に連れてきた時から俺に理不尽な仕打ちを用意していたらしい。
それが起きたのは、俺がサヤの住む教会に着いた時の事だった。
「ただいま~」
厳かな雰囲気のある白を基調とした教会の門を開き、サヤはごく当たり前のように入っていく。
門から真っ直ぐに伸びる赤い絨毯の先には教壇があり、そこには白いローブを身に纏った40程の、しかし威厳を感じさせるその姿は正に司祭としての立場に相応しいものであった。
「おお、おかえりなさいサヤ。そしてそちらのおか……た……は?」
「俺は盾屋っていいます。今日はサヤさんが……」
俺は慣れない敬語を使い、今日はサヤの好意でここに止めさせてもらう旨を伝えようとするが、その前に教壇に立つ神官の叫びによって中断される。
「な、何だその魔力は!?黒と白でそれ程強大な魔力など、まるで御伽話に出てくるあの伝説の聖騎士、『厄持 盾屋』の様ではないか!!??」
あー、なんかよーわからんけど、とりあえずこれだけはわかった。
めんどくせーーー!!
全身の激痛はなく、その上あの時撃たれたはずの傷の痛みさえ感じなかった。
「……夢、だったのか」
俺はあれは夢だったのであろう、ヤクザに追い掛け回されたところから、全部。
「あ、おはようございます、もう夕方ですけれど」
……嘘だ、これは嘘だ、嘘だと言ってくれ。
「え、あの、なんで私を幽霊か何かを見るような目で見るんですかぁ。確かに私の技がまだまだ未熟で激痛が伴う治癒をするしかありませんでしたけれど、貴方を助けたかっただけなんですよぅ」
やば、顔に出てたか。
「すまん、そうじゃない、そうじゃないんだ……とりあえず、お前が介抱してくれたんだよな?」
「はい!」
「……ありがとな」
俺は、産まれて初めて感謝を示す言葉を口にした。
「どうしたしまして」
「……それで、ここは何処なんだ?」
俺は地面から起き上がり周囲を見渡すと、何処かの小高い丘の上に居るようだった。
地面は短い草が青々生茂っていて、天然のカーペットの様であった。
左手には透明無色の綺麗な川が流れており、泳いでいる魚がくっきりと見える。
きっとあれが俺が流れていた川なのだろう。
そして右手には深い森が見え、正面には少々遠くにあるらしい村と、その周囲にはまだまだ青い水田が広がっていた。
俺が唖然としていると、隣りにいた女……サヤ・カリナンテは俺に言う。
「あの、もし今過ごす場所がないのであれば私の家に来ますか?」
それは俺にとってみれば思ってもみない申し出であった。
「マジで!?」
「え、ええ、あまり大きくはないし、大した物は出せないとは思いますが」
「雨風凌げるなら何でもいいよ!!」
俺はあまりの感激に涙すら出そうなくらいだった。
「それじゃあ、案内しますね……ええと……」
そういやまだ名乗ってなかったな。
「俺は盾屋だ、よろしくサヤ」
「こちらこそよろしくね、盾屋」
俺のとんでもない不運によりこの心優しいサヤ迷惑をかけないよう、最大限の注意はしようと心から思った。
……注意した程度でどうこう出来る代物でもないが。
それから歩くこと一時間、俺は今は一先ずここが異世界であると仮定することにした。
そうでないと今のこの状況の説明は出来ないし、なによりサヤにこれ以上過剰に負担をかけるような状況は避けたいし。
あくまでも仮定であり、まだ認めた訳では断じてない!……認めてなんかたまるかよ!!
「ここが私の住むサラタール王国のラヤカナ領、領主館のある村ラヤカナです」
村の入り口には衛兵が居たが、サヤの客人だと言うとアッサリと通してくれた。
通った俺が言うのも何だか、俺程のトラブルメーカーをそう簡単に通してもいいのか?まあ俺のことを知らないのだから当たり前か。
しかし、やはり俺に付き纏う『不幸』はこの世界に連れてきた時から俺に理不尽な仕打ちを用意していたらしい。
それが起きたのは、俺がサヤの住む教会に着いた時の事だった。
「ただいま~」
厳かな雰囲気のある白を基調とした教会の門を開き、サヤはごく当たり前のように入っていく。
門から真っ直ぐに伸びる赤い絨毯の先には教壇があり、そこには白いローブを身に纏った40程の、しかし威厳を感じさせるその姿は正に司祭としての立場に相応しいものであった。
「おお、おかえりなさいサヤ。そしてそちらのおか……た……は?」
「俺は盾屋っていいます。今日はサヤさんが……」
俺は慣れない敬語を使い、今日はサヤの好意でここに止めさせてもらう旨を伝えようとするが、その前に教壇に立つ神官の叫びによって中断される。
「な、何だその魔力は!?黒と白でそれ程強大な魔力など、まるで御伽話に出てくるあの伝説の聖騎士、『厄持 盾屋』の様ではないか!!??」
あー、なんかよーわからんけど、とりあえずこれだけはわかった。
めんどくせーーー!!
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