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二人の買い物
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「傍道君……だよね?」
瞬きをしてみたけれど、彼はまだそこにいた。
私は彼に声をかけるか悩んだ結果、そのままちょっとだけ後をつけてみることにした。
彼には少し悪いなとは思うけれど、普段どうしているかを知りたかったのだ。
あ、移動を始めた。何か呟いてるけどここからでは全然聞き取れない。
また後で話しかけよう、このままずっとつけたままなのはやっぱり悪いし……でも今はごめん!
内心言い訳を重ねながら彼を追いかけていると、最初に覗いた雑貨店へ入っていく。
外で待機していると、彼は先程は持っていなかったペットボトルホルダーを手に持っていた。
この感想はきっと、彼が最初いろはすのボトルを置いてくれたのが大きいんだろうけど、彼らしいかなと思う。
その後は八百屋、肉屋と食料品店を巡って、彼は商店街の出口へ向かう。
「あ、傍道君?」
私は少し慌てて、でも顔と声にそれが出ないよう心を落ち着かせる。
「鰆さん?」
「傍道君も商店街来てたんだ」
「偶然ですね」
「う、うん!傍道君は何を買いに来たの?」
彼はちょっとだけ考える仕草をすると、意外とあっさりと答えてくれる。
後から考えたら、わざわざ秘密にすることもないだろうなと思い、言わないんだろうなと思っていたことが恥ずかしくなったのだけれど。
「僕は春の遠足の準備と、ついでに新しい本を買いに。鰆さんはどうしたの?」
本を買いに行ったりしてたのはコッソリ見てました、ごめんなさい。
「私も春の遠足の準備と、あとは知り合いのプレゼントを買いに来てたの」
そこまで話した時、彼は少し周囲を見渡して言う。
「あの、立ち話も何ですしどこかに腰を落ち着かせませんか?」
それから私の提案で、商店街の中にある先程とは別の落ち着いた飲食店に移動した。
「あ、鰆さんはお昼はもう食べましたか?」
「あ、はい私は先程向こう端のお店で」
二人で入って座るまではよかったけれど、男子1対1で向かい合うこの状況は初めてで、少し緊張していた。
「そうですか。僕はまだなので注文してもいいですか?」
「あ、どうぞどうぞ」
うう、もう少し落ち着かなきゃ。
お店の人がお水を持ってくる。
「注文いいですか?」
「傍道君はなんの本を買ったの?」
少々静かなのが落ち着かず、とりあえず気になっていたことを質問する
「あ、さっき言った本ですね。今日は数冊買ったんですけど、学問のすゝめ、複合汚染、それと俺義妹かな」
「最後のは確かライトノベル、だよね?」
彼がライトノベルを読むなんて、私にはとても意外でつい聞き返してしまう。
「うん、そうだよ。何故か周りからはそんなのは読まなさそうってよく驚かれるけどね」
俺義妹とは『俺の義妹がこんなに可愛い訳がない』という有名なライトノベルだ。
「鰆さんは誰のプレゼントを買いに来たの?」
「あ、私は幼馴染の妹の中学校入学祝を買いに来たの」
「何を買ったのか聞いてもいい?」
「あ、うん!ハルちゃんがこの前ね、あ、ハルちゃんはさっちゃんの妹の名前でね……」
その後、私は微笑みながら合いの手や質問などをしてくれる彼に対して色々なことを話していた。
気がついたら彼は来たものを食べ終え、私もデザートを頼んで一時間程ずっと話し続けていた。
「あ、ごめんつい話し込んでしまって」
「ううん、僕は楽しかったですよ」
長々と話し込んでしまったことを謝ると、彼は少し微笑みながらそう答える。
そのあと彼が一緒に払おうか?と申し出てくれたものの、流石にそれは悪いと自分が頼んだ分は自分で支払って店を後にした。
「それじゃあ鰆さん、ここで」
商店街の出口に行くと、彼はそう言って右を指す。
私はここから真っ直ぐなので、彼とは別の道だ。
「うん、今日はありがとう傍道君。またね」
「また月曜学校で」
そう言って私と彼は別れた。
そうして少し歩いてから気がついたのだけれど、電車を使って来たのであればあそこを左に曲がらなければならない。
「もしかして、傍道君もこの辺りに住んでいるのかな?」
ただ、少しあちらに用があっただけかもしれないので断言は出来ないけれど、そうであれば嬉しいなと思う。
「……あれ、なんで私彼と同じなら嬉しいんだろう?」
まあ、きっとその方が彼のことがわかるかもしれないからだろうと結論付けて、ハルちゃんになんて言って渡すかを考えながら帰宅した。
瞬きをしてみたけれど、彼はまだそこにいた。
私は彼に声をかけるか悩んだ結果、そのままちょっとだけ後をつけてみることにした。
彼には少し悪いなとは思うけれど、普段どうしているかを知りたかったのだ。
あ、移動を始めた。何か呟いてるけどここからでは全然聞き取れない。
また後で話しかけよう、このままずっとつけたままなのはやっぱり悪いし……でも今はごめん!
内心言い訳を重ねながら彼を追いかけていると、最初に覗いた雑貨店へ入っていく。
外で待機していると、彼は先程は持っていなかったペットボトルホルダーを手に持っていた。
この感想はきっと、彼が最初いろはすのボトルを置いてくれたのが大きいんだろうけど、彼らしいかなと思う。
その後は八百屋、肉屋と食料品店を巡って、彼は商店街の出口へ向かう。
「あ、傍道君?」
私は少し慌てて、でも顔と声にそれが出ないよう心を落ち着かせる。
「鰆さん?」
「傍道君も商店街来てたんだ」
「偶然ですね」
「う、うん!傍道君は何を買いに来たの?」
彼はちょっとだけ考える仕草をすると、意外とあっさりと答えてくれる。
後から考えたら、わざわざ秘密にすることもないだろうなと思い、言わないんだろうなと思っていたことが恥ずかしくなったのだけれど。
「僕は春の遠足の準備と、ついでに新しい本を買いに。鰆さんはどうしたの?」
本を買いに行ったりしてたのはコッソリ見てました、ごめんなさい。
「私も春の遠足の準備と、あとは知り合いのプレゼントを買いに来てたの」
そこまで話した時、彼は少し周囲を見渡して言う。
「あの、立ち話も何ですしどこかに腰を落ち着かせませんか?」
それから私の提案で、商店街の中にある先程とは別の落ち着いた飲食店に移動した。
「あ、鰆さんはお昼はもう食べましたか?」
「あ、はい私は先程向こう端のお店で」
二人で入って座るまではよかったけれど、男子1対1で向かい合うこの状況は初めてで、少し緊張していた。
「そうですか。僕はまだなので注文してもいいですか?」
「あ、どうぞどうぞ」
うう、もう少し落ち着かなきゃ。
お店の人がお水を持ってくる。
「注文いいですか?」
「傍道君はなんの本を買ったの?」
少々静かなのが落ち着かず、とりあえず気になっていたことを質問する
「あ、さっき言った本ですね。今日は数冊買ったんですけど、学問のすゝめ、複合汚染、それと俺義妹かな」
「最後のは確かライトノベル、だよね?」
彼がライトノベルを読むなんて、私にはとても意外でつい聞き返してしまう。
「うん、そうだよ。何故か周りからはそんなのは読まなさそうってよく驚かれるけどね」
俺義妹とは『俺の義妹がこんなに可愛い訳がない』という有名なライトノベルだ。
「鰆さんは誰のプレゼントを買いに来たの?」
「あ、私は幼馴染の妹の中学校入学祝を買いに来たの」
「何を買ったのか聞いてもいい?」
「あ、うん!ハルちゃんがこの前ね、あ、ハルちゃんはさっちゃんの妹の名前でね……」
その後、私は微笑みながら合いの手や質問などをしてくれる彼に対して色々なことを話していた。
気がついたら彼は来たものを食べ終え、私もデザートを頼んで一時間程ずっと話し続けていた。
「あ、ごめんつい話し込んでしまって」
「ううん、僕は楽しかったですよ」
長々と話し込んでしまったことを謝ると、彼は少し微笑みながらそう答える。
そのあと彼が一緒に払おうか?と申し出てくれたものの、流石にそれは悪いと自分が頼んだ分は自分で支払って店を後にした。
「それじゃあ鰆さん、ここで」
商店街の出口に行くと、彼はそう言って右を指す。
私はここから真っ直ぐなので、彼とは別の道だ。
「うん、今日はありがとう傍道君。またね」
「また月曜学校で」
そう言って私と彼は別れた。
そうして少し歩いてから気がついたのだけれど、電車を使って来たのであればあそこを左に曲がらなければならない。
「もしかして、傍道君もこの辺りに住んでいるのかな?」
ただ、少しあちらに用があっただけかもしれないので断言は出来ないけれど、そうであれば嬉しいなと思う。
「……あれ、なんで私彼と同じなら嬉しいんだろう?」
まあ、きっとその方が彼のことがわかるかもしれないからだろうと結論付けて、ハルちゃんになんて言って渡すかを考えながら帰宅した。
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