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彼と私の学園生活
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翌日の火曜日、また大部分の授業は自己紹介となりました。
私はそこで彼の自己紹介の内容を聞いて、密かにメモをとっていました。
それが昨日出た疑問を解くきっかけになるかと思いましたが、そんなことはありませんでした。
休み時間にたまにちらりと彼の方を見ると、毎時間一人で本を読んでいる様子しか見ることがありませんでした。
それに、本にはカバーが掛けてあり、どんな本を読んでいるか確認できませんでした。
昼休み、皆私の周りに机を寄せて来て、クラスで一番大きな集団を作っています。
私はいつも道中のコンビニに寄って買ってきた弁当を持ってきます。
朝に弱い私は何時も咲と一緒に行くギリギリの時間まで寝て、たまに早く起きた時には弁当を作って来ることもありますが、月に1、2回程度です。
あとは皆と前もって決めておけば、食堂で食べることもよくあります。
彼はというと、毎日手作りの弁当を持ってきて、一人で食べています。
誰が作っているのか、今度聞いてみようと思っています。
そんな調子で日にちが過ぎて、私は彼が他の人と事務的な事以外で話しているところを見ることはありませんでした。
そんな一週間を過ごす内に、私は仲の良い友達がたくさん出来ました。
別クラスになってしまった人達とも食堂で食べて「今週の土日に遊ぼう」と誘われましたが、私は咲の妹へのプレゼントを探したいのでまた今度と言うと、皆納得してくれました。
そうして今は金曜日の放課後、私にとって初めての図書委員の番が回ってきました。
今図書室の貸出・返却口のところに座っています。
やるべきことと方法は聞いていますが、初めてなので少しだけ緊張していました。
隣には彼が何時ものことのように本を読みながら過ごしています。
「ねぇ、傍道君」
「どうかしたの、鰆さん」
私は図書室なので小さめの声で呼びかけると、同じく小さい声で返事が返ってくる。
「待っている間に私達がすることはないの?」
私はただずっと座って正直少しだけ退屈していた。
彼は本を読んでいたけれど、私はあまり本は読まないため何をしていたらいいのかがわからなかった。
「鰆さんは本は読まないの?」
本を読んでいたらいい、ではなく読まないの、というところを聞いて、きっと彼は私が本をあまり読まないことを察したのだろう。
「雑誌と、あとは恋愛物はたまに読むことはあるけど……」
それだけ言うと、彼は静かに立ち上がって本棚に向かっていく。
少しして彼は3冊の本を抱えてきた。
「最近女子がよく借りていく恋愛小説なのですが、この中に興味のある本はありますか?」
私は少し驚きながら、持ってきた本を見る。
それは有名な少しドロッとした感じのもの、少しずつ人気が高くなっている爽やかな恋愛物、それともう一つは私は知らない少し古い小説であった。
「まずそれは有名なタイトルなので説明は省きますね。2つめは最近人気が上がっているみたいです。三冊目はここの卒業生が書いて置いていった、この図書室でしか読めないちょっと不思議な恋愛小説です」
彼はそうスラスラとそれぞれの説明をしてくれた。
「傍道君はよくこういうことをしているの?」
私は反射的に、でも声は潜めて質問する。
「よくにはないけど、何時も本を読んでいるからたまに聞かれることはあるかな」
確かに、何時も本を読んでいる人なら面白い作品を知っていそうな雰囲気はあるなと思った。
そこでふと、疑問に思ったことがあった。
「傍道君はこの作品、読んだことはあるの?」
そう、的確に少し嗜好の違う恋愛小説を持って来たのは読んだことがないと難しいのではないかと思ったのだ。
「僕はこの、先輩が残した小説以外は読んだことはないですね」
そう、少し予想外な答えが返ってきた。
「でも、借りていく人の傾向を見ていたら少し暗めの作品群と明るい作品群を借りていく人が居るので、それを参考にしてみたのですが」
私はこれを聞いて、私は凄いなと思う。
それはつまりただ事務的に仕事をするのではなく、彼は借りたり返却していく人の本をみて、統計を出しているということだ。
「それじゃあ、私はこの先輩が残した本を読んでみるね」
あとの2冊の本は返却して、私はその本を借りてから読み耽った。
たまに来る貸し借りの仕事をお互いこなしつつ、今日は解散となった。
私はそこで彼の自己紹介の内容を聞いて、密かにメモをとっていました。
それが昨日出た疑問を解くきっかけになるかと思いましたが、そんなことはありませんでした。
休み時間にたまにちらりと彼の方を見ると、毎時間一人で本を読んでいる様子しか見ることがありませんでした。
それに、本にはカバーが掛けてあり、どんな本を読んでいるか確認できませんでした。
昼休み、皆私の周りに机を寄せて来て、クラスで一番大きな集団を作っています。
私はいつも道中のコンビニに寄って買ってきた弁当を持ってきます。
朝に弱い私は何時も咲と一緒に行くギリギリの時間まで寝て、たまに早く起きた時には弁当を作って来ることもありますが、月に1、2回程度です。
あとは皆と前もって決めておけば、食堂で食べることもよくあります。
彼はというと、毎日手作りの弁当を持ってきて、一人で食べています。
誰が作っているのか、今度聞いてみようと思っています。
そんな調子で日にちが過ぎて、私は彼が他の人と事務的な事以外で話しているところを見ることはありませんでした。
そんな一週間を過ごす内に、私は仲の良い友達がたくさん出来ました。
別クラスになってしまった人達とも食堂で食べて「今週の土日に遊ぼう」と誘われましたが、私は咲の妹へのプレゼントを探したいのでまた今度と言うと、皆納得してくれました。
そうして今は金曜日の放課後、私にとって初めての図書委員の番が回ってきました。
今図書室の貸出・返却口のところに座っています。
やるべきことと方法は聞いていますが、初めてなので少しだけ緊張していました。
隣には彼が何時ものことのように本を読みながら過ごしています。
「ねぇ、傍道君」
「どうかしたの、鰆さん」
私は図書室なので小さめの声で呼びかけると、同じく小さい声で返事が返ってくる。
「待っている間に私達がすることはないの?」
私はただずっと座って正直少しだけ退屈していた。
彼は本を読んでいたけれど、私はあまり本は読まないため何をしていたらいいのかがわからなかった。
「鰆さんは本は読まないの?」
本を読んでいたらいい、ではなく読まないの、というところを聞いて、きっと彼は私が本をあまり読まないことを察したのだろう。
「雑誌と、あとは恋愛物はたまに読むことはあるけど……」
それだけ言うと、彼は静かに立ち上がって本棚に向かっていく。
少しして彼は3冊の本を抱えてきた。
「最近女子がよく借りていく恋愛小説なのですが、この中に興味のある本はありますか?」
私は少し驚きながら、持ってきた本を見る。
それは有名な少しドロッとした感じのもの、少しずつ人気が高くなっている爽やかな恋愛物、それともう一つは私は知らない少し古い小説であった。
「まずそれは有名なタイトルなので説明は省きますね。2つめは最近人気が上がっているみたいです。三冊目はここの卒業生が書いて置いていった、この図書室でしか読めないちょっと不思議な恋愛小説です」
彼はそうスラスラとそれぞれの説明をしてくれた。
「傍道君はよくこういうことをしているの?」
私は反射的に、でも声は潜めて質問する。
「よくにはないけど、何時も本を読んでいるからたまに聞かれることはあるかな」
確かに、何時も本を読んでいる人なら面白い作品を知っていそうな雰囲気はあるなと思った。
そこでふと、疑問に思ったことがあった。
「傍道君はこの作品、読んだことはあるの?」
そう、的確に少し嗜好の違う恋愛小説を持って来たのは読んだことがないと難しいのではないかと思ったのだ。
「僕はこの、先輩が残した小説以外は読んだことはないですね」
そう、少し予想外な答えが返ってきた。
「でも、借りていく人の傾向を見ていたら少し暗めの作品群と明るい作品群を借りていく人が居るので、それを参考にしてみたのですが」
私はこれを聞いて、私は凄いなと思う。
それはつまりただ事務的に仕事をするのではなく、彼は借りたり返却していく人の本をみて、統計を出しているということだ。
「それじゃあ、私はこの先輩が残した本を読んでみるね」
あとの2冊の本は返却して、私はその本を借りてから読み耽った。
たまに来る貸し借りの仕事をお互いこなしつつ、今日は解散となった。
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