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彼と私の関係は(1)
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彼と私は特に話をすることなく、学校内の自販機コーナーにやってきた。
私は間で彼にお礼を言おうと思ったけれど、他の委員会集会が終わって出てくる人が居たから、そこまで無言で着いていった。
運動部の声や吹奏楽部の演奏の音は聞こえてくるが、自販機コーナーには今が中途半端な時間だからか人が誰も居なかった。
「鰆さん、何か飲みたいものはある?」
彼はそこでペットボトルの緑茶を買いながら、私に聞いてくる。
「あ、私は自分で買うからいいよ」と半ば反射的に答えて目に入った缶のカフェオレを買う。
自販機コーナーに措かれているベンチに座って互いに買った物を飲む。
ふぅ、と一息ついた彼は言った。
「本当にごめんね、話し合いもせずに時間を決めちゃって。鰆さんも自分が希望する時間があったよね」
確かに、月~金曜日の昼休みと放課後の10箇所の枠があったので、私としてはどこかの昼休みが良かったかなとは思う。
「ううん、私は何時でも良かったから大丈夫だよ」
これも嘘ではなく、私は昼休みがきっとどこも取りたがるだろうし、放課後でもいいかなと思っていたし、金曜日も人気低そうだからここでいいかなと少しは思っていたのだ。
そうもう一度言うと、彼は「それなら良かった」と少し顔を綻ばせた。
それからお互い黙って飲み続ける。
私はどのタイミングで話を切りだそうかと悩んでいたが、缶の中の容量は少なく、すぐに飲みきってしまった。
彼は私が飲みきったのを見て、お茶に蓋をすると立ち上がった。
「そろそろ遅くなって来ましたから、帰りましょうか」
そう言われて空を見ると、遠くの空がほんのり赤くなり始め、もうすぐ夕刻であることを告げていた。
彼はそのままカバンを持って帰る準備を始めている。
「ちょっと待って傍道君」
私は反射的に、ちょっと普段より強く呼び止めた。
彼はカバンを再びベンチに置いて、私の方を向く。
きっとこのままだと言いそびれてしまう。そんな予感がして呼び止めたものの、少し強く言ってしまったことでどう切り出すかを迷ってしまう。
彼はその間小さく微笑みながら、ジッと次の言葉を待っている。
「その、この前の始業式の時、いろはすをくれてありがとう」
そうシンプルに、思っていたことを伝えた。
彼はそれ聞いて、何故か少しだけキョトンとしたあと、その時のことを思い出したようで少し苦笑してこたえる。
「あの時、いろはすを間違えて2本買ってしまってどうしようって思ってたから、空の水筒を持ち上げるのを見てあげようと思ったの」
私はそれを聞いて、色々疑問を覚えると共に、凄いなと少し感心した。
何で間違えて2本買ったのかは、きっと千円を入れて連続でボタンを押したのだろうと思うと納得できた。
でもそれを話したこともない相手にあげることはあまりしないと思う。
それに、私の水筒が空になっていたことになんで気付いたのだろうという疑問と、それを見ただけでもう1本あるとはいえ、私ならきっと持って帰るか、親友の咲にでもあげるだろう。
「それじゃあ、帰ろうか」
という彼の言葉を聞いて、私は彼に質問するのはまた今度にしようと思った。
今日はもう、お礼と理由を聞けただけで充分だと思えた。
「うん、それじゃあまたよろしくね、傍道君」
「またよろしく、鰆さん」
そう言ったあと、彼は先に帰って行った。
私は缶を捨ててから下校する。
今の私は彼に対してのイメージは、変な人から変だけど優しい人に変わった。
私は間で彼にお礼を言おうと思ったけれど、他の委員会集会が終わって出てくる人が居たから、そこまで無言で着いていった。
運動部の声や吹奏楽部の演奏の音は聞こえてくるが、自販機コーナーには今が中途半端な時間だからか人が誰も居なかった。
「鰆さん、何か飲みたいものはある?」
彼はそこでペットボトルの緑茶を買いながら、私に聞いてくる。
「あ、私は自分で買うからいいよ」と半ば反射的に答えて目に入った缶のカフェオレを買う。
自販機コーナーに措かれているベンチに座って互いに買った物を飲む。
ふぅ、と一息ついた彼は言った。
「本当にごめんね、話し合いもせずに時間を決めちゃって。鰆さんも自分が希望する時間があったよね」
確かに、月~金曜日の昼休みと放課後の10箇所の枠があったので、私としてはどこかの昼休みが良かったかなとは思う。
「ううん、私は何時でも良かったから大丈夫だよ」
これも嘘ではなく、私は昼休みがきっとどこも取りたがるだろうし、放課後でもいいかなと思っていたし、金曜日も人気低そうだからここでいいかなと少しは思っていたのだ。
そうもう一度言うと、彼は「それなら良かった」と少し顔を綻ばせた。
それからお互い黙って飲み続ける。
私はどのタイミングで話を切りだそうかと悩んでいたが、缶の中の容量は少なく、すぐに飲みきってしまった。
彼は私が飲みきったのを見て、お茶に蓋をすると立ち上がった。
「そろそろ遅くなって来ましたから、帰りましょうか」
そう言われて空を見ると、遠くの空がほんのり赤くなり始め、もうすぐ夕刻であることを告げていた。
彼はそのままカバンを持って帰る準備を始めている。
「ちょっと待って傍道君」
私は反射的に、ちょっと普段より強く呼び止めた。
彼はカバンを再びベンチに置いて、私の方を向く。
きっとこのままだと言いそびれてしまう。そんな予感がして呼び止めたものの、少し強く言ってしまったことでどう切り出すかを迷ってしまう。
彼はその間小さく微笑みながら、ジッと次の言葉を待っている。
「その、この前の始業式の時、いろはすをくれてありがとう」
そうシンプルに、思っていたことを伝えた。
彼はそれ聞いて、何故か少しだけキョトンとしたあと、その時のことを思い出したようで少し苦笑してこたえる。
「あの時、いろはすを間違えて2本買ってしまってどうしようって思ってたから、空の水筒を持ち上げるのを見てあげようと思ったの」
私はそれを聞いて、色々疑問を覚えると共に、凄いなと少し感心した。
何で間違えて2本買ったのかは、きっと千円を入れて連続でボタンを押したのだろうと思うと納得できた。
でもそれを話したこともない相手にあげることはあまりしないと思う。
それに、私の水筒が空になっていたことになんで気付いたのだろうという疑問と、それを見ただけでもう1本あるとはいえ、私ならきっと持って帰るか、親友の咲にでもあげるだろう。
「それじゃあ、帰ろうか」
という彼の言葉を聞いて、私は彼に質問するのはまた今度にしようと思った。
今日はもう、お礼と理由を聞けただけで充分だと思えた。
「うん、それじゃあまたよろしくね、傍道君」
「またよろしく、鰆さん」
そう言ったあと、彼は先に帰って行った。
私は缶を捨ててから下校する。
今の私は彼に対してのイメージは、変な人から変だけど優しい人に変わった。
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