裸の瞳

佐治尚実

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第二章

2.決断※

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 二階の寝室では薄緑のカーテンを締め切り、木の壁に間接照明の灯りが妖しく揺れている。部屋の中央にキングサイズのベッドが鎮座しており、窓際のカウチに二着のバスローブが用意されていた。

 悠成は横抱きした大地を薄緑色のシーツに下ろし、グレーの枕に頭をのせた。彼の手つきがまるで一国の姫を扱うみたいに慎重だった。大げさだな、と大地が起き上がろうとした。しかし、ベッドに乗り上げてきた裕貴によって押し倒されて、動きを阻まれる。裕貴に抱かれる。それも素面でだ。両手を胸で組み、いたずらに短く切った爪で指の腹を引っ掻く。太ももをきつく閉じたら、裕貴の膝が割り入ってくる。

「大地、俺が先でもいいだろう」

 太ももを撫でるくせに、裕貴は律儀に聞いてくる。

 大地は目玉を動かして、バスローブを羽織った悠成に確認を求めた。悠成は大地の視線に気が付きながら、真顔で顎を上げて見下ろしてくる。濡れた前髪をいじり、

「大地が選ぶんだよ」

 と、叱られてしまう。その通りだった。

「選べ」

 裕貴に迫られると、体が発火したいみたいに燃え上がった。心臓が跳ねて、一気に体のだるさが消える。この手を伸ばしたい。酒の勢いに任せて、二人目の思い人に抱かれる。そんな卑怯な決断はもう二度と繰り返したくなかった。だからこそ悠成の前で、自分こそ主犯で、隠せないくらいの強欲者だと示さなければいけない。二人は大地の我が侭に巻き込まれたのだ。悠成の、裕貴の痛みも憎しみも一身に引き受けなければだめだ。

 大地は悠成を見つめつつ、裕貴に告げた。

「裕貴が最初に抱いて」

 自分の意志で決断した。それなのに、悠成の小さな声を聞いてしまい、大地は困惑する。さっそく裕貴がローションでぬらぬらさせた巨大な雄を蕾にあてがう。

「大地、オナニーを教えたのは俺だっただろう、セックスも俺だけだったのにさ、大地は我慢が出来なかったんだな、いいさ、これから好きなだけセックスに溺れて良いから、あまりよそ見をするなよ、っぅ、きっつ」

 べらべらと喋りながら、裕貴はカリの高い亀頭を胎内に押し込んできた。

「ひぃっ、あ、あうー、うああ――っ!」

 大地はシーツをわしづかみ、裸身を仰け反らした。目尻から涙が一滴零れる。

「これが最初だ、大地の中だ」

 裕貴は一気に埋めようとするも、ピタッと腰を止めて荒い息で呼吸を整える。

「ホテルで、俺は、っ、手を出してない、これが初めてなんだよっ、ああ、くそ、かっこわりい」

 裕貴は自身の望むまま男根を打ち込んだ。彼の声を耳から頭で咀嚼しても、めくるめく官能の世界に堕とされるだけだった。

「あ……、ぁああ、や、やめ……ひぃ、お願い」

 足首を掴まれ、高く掲げられてしまう。下腹部が苦しい。次第に膝がガクガクする。目の据わった裕貴が怖くて、つい悠成に視線で助けを求めてしまう。
 しかし、悠成はカウチで寝そべり、怯える大地に目をやりながら爪を噛むだけだった。何かブツブツ言っている。悠成の目は、泣き腫らしたように赤かった。

「大地っ、よそ見するな、俺に狂えよっ!」

 乳首をきつく摘ままれる。

「あっ、あ、だめ……」

 散々、悠成の雄を受け入れてきた胎内は、新しい男の型になじめないでいた。

 裕貴はその年で見事なまでのピストン、的確なローリング、胸を揉みくちゃにする巧みな手つきをしていた。卑猥な湿り音が寝室に響き、胎内に怒濤のごとく熱い鉄の杭が侵入してくる。

「あっ、あっ、ひぃい、いいい、いく、イっちゃう、ごめんなさい……ごめんなさい……っぁ、し、死んじゃう」

 カリのくびれで肉ひだを引っかかれ、重い突き上げで叩きのめされて、大地は悠成に謝った。せり上がる快楽に、恥骨がけいれんした。下肢の付け根からつま先にかけて引きつりを起こす。
 三秒とせずに、大地は自分の顔めがけて吐精した。それを裕貴に舐め取られる。密着した肌から、裕貴の高まりが伝わってくる。
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