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第二章
1.新しい生活※
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広いバスタブに熱めの湯をためる。壁の鏡が曇って、浴槽にいる大地と裕貴、シャワーを浴びている悠成の姿を隠した。大地は透明の湯をかき分けて、体毛を剃ったばかりの生白い脚を伸ばす。裕貴の固い胸が背中に密着したら、空っぽの腹に太い腕が回される。裕貴の厚い体に背を預け、浴室の四角い窓から初雪を眺めた。大地の皮膚で裕貴の唇がひっきりなしに滑り、我慢できないのか腰をうごめかしている。屹立した雄を誇示するかのようにこすり付けもしてくる。
裕貴の好きにさせているとのぼせてしまうから、時折、大地も唇を合わせた。捕まったら最後、舌の根っこから吸い取られるように貪られ、顔を離そうとしても後頭部をがっちりと固定され、角度を変えた深くて濃い口づけを味わう羽目になる。
「大地、大地」
裕貴が熱っぽく名を呼ぶ。再びぬめる舌で口腔内を蹂躙された。
解放されたとき、湯が胸の下まで到達していた。ぼうっとしていたら、湯船に泡が飛んでくる。シャワーの音が止むと、体を洗っていた悠成がバスタブに入ってくる。
「次は俺だ、宮川は出ろ」
悠成に逆らわず、裕貴はあっさりと抱擁を解いた。
「用意しておくわ」
裕貴はシャワーを軽く浴びて、軽快な足取りでバスルームを出て行く。用意とは、これからの交わりに必要な支度のことであった。
「僕も」
額に汗が浮いたから、大地も出たかった。それも悠成によって前から抱きしめられると、溺れないように彼にしがみつくことしかできない。
「大地、もう少し慣らさないとだめだよ」
悠成の指が柔らかくなった胎内に忍び込む。三本の指をバラバラと広げ、深爪の指先で肉壁を抉る。
「っあ、ぁ」
悠成の肩に額をのせて、下を向いて口を開く。悠成の指がきわどいところをかすめた。その衝撃に顔を上げて期待のこもった吐息を漏らす。悠成の引き締まった腕がゆっくりと動くから、彼の赤くなった肩を甘噛みした。
「ふう、かわいいの、ほらぁ、久しぶりだからもっと広げないと、大地はこれから二人の男に抱かれるんだよ、痛くないよう、すぐにへばらないように頑張ろうね」
悠成の言う通り、裕貴の豪邸に越してからふた月、一度も性行為をしなかった。つまり裕貴と悠成の二人に触れたのは、ホテルの夜が最後だった。裕貴は自主トレーニングに入り、悠成は年末ライブ、それぞれ忙しくしていた。大地もそれなりに予定を埋めていた。
実家に年末年始は帰省し、就活を始めていた。実家の母は元気そうで、大地は安堵する。が、就職の話になると大地の顔が陰った。未来が一番ぼんやりしているのは自分だけだ。二人に追いつこうとは思わない。自分は分不相応な夢を叶えてしまったのだから、他を望んだら罰が当たりそうで、それなりに分をわきまえようと現実を見据えていた。
就活にも色々とお金がいる。生活費だってかかる。実家からの仕送りを頼りにせず、アルバイトで補おうと考えていた。それも裕貴と悠成が必要ないからと支援の手を差し伸べられる。友人であり恋人でもある二人に援助される。それは一見すると有り難い話に思える。だが、自由を封じられているような気がして断った。
大地がよそに意識を向けて、前に進もうとしている。それを二人が応援してくれるものだと期待したのに、どうやら虫が良すぎたようだ。彼らは遠方先から、両親よりも大地の未来に口を出す。それが度重なると、干渉しないでくれと連絡を絶ってしまう。
大地の反抗と関係あるのか知らないが、裕貴がキャンプインする前に、悠成がレコーディングに入る前に、彼らは一週間の休日を作った。それでこうなったわけだ。
「ぅ、ぁ、ぅっ、あ、が、頑張る」
涎が水面に垂れる。きゅうと胎内を締め付けてしまうと、頭上から悠成のため息が聞こえた。
「毎日、頑張り屋の大地が自分で広げてくれたお陰で、お前の負担も少なくてすみそうだよ」
悠成が愉快そうに笑う。何がおかしいのだと目線を上げたら、ぐっと顔を寄せてくる。彼の高い鼻梁と自分の低い鼻先がぶつかる。
「ん、どうしたの」
「なんでもないよ、大地はきれいだなって見とれてる」
大地は思わず顔を伏せた。目の前に類い希な美貌が迫っているからではない。その張本人に言われたからだ。何の冗談だろう。
「照れてるのかな、ほら見せて」
顎をすくわれ、悠成の尖った舌先で目玉を舐められる。これには慣れていたので、別段驚かなかった。悠成の好きな大地の焦げ茶の瞳、白目が濁っていないと褒めてくれる。
「大地はずっときれいなままでいてね」
悠成の顔色は安らかだという風に落ち着いていた。
心の声は『悠成だけを見られなくてごめんなさい』とつぶやいていても、大地は顔がこわばらないように笑い返すしかなかった。
裕貴の好きにさせているとのぼせてしまうから、時折、大地も唇を合わせた。捕まったら最後、舌の根っこから吸い取られるように貪られ、顔を離そうとしても後頭部をがっちりと固定され、角度を変えた深くて濃い口づけを味わう羽目になる。
「大地、大地」
裕貴が熱っぽく名を呼ぶ。再びぬめる舌で口腔内を蹂躙された。
解放されたとき、湯が胸の下まで到達していた。ぼうっとしていたら、湯船に泡が飛んでくる。シャワーの音が止むと、体を洗っていた悠成がバスタブに入ってくる。
「次は俺だ、宮川は出ろ」
悠成に逆らわず、裕貴はあっさりと抱擁を解いた。
「用意しておくわ」
裕貴はシャワーを軽く浴びて、軽快な足取りでバスルームを出て行く。用意とは、これからの交わりに必要な支度のことであった。
「僕も」
額に汗が浮いたから、大地も出たかった。それも悠成によって前から抱きしめられると、溺れないように彼にしがみつくことしかできない。
「大地、もう少し慣らさないとだめだよ」
悠成の指が柔らかくなった胎内に忍び込む。三本の指をバラバラと広げ、深爪の指先で肉壁を抉る。
「っあ、ぁ」
悠成の肩に額をのせて、下を向いて口を開く。悠成の指がきわどいところをかすめた。その衝撃に顔を上げて期待のこもった吐息を漏らす。悠成の引き締まった腕がゆっくりと動くから、彼の赤くなった肩を甘噛みした。
「ふう、かわいいの、ほらぁ、久しぶりだからもっと広げないと、大地はこれから二人の男に抱かれるんだよ、痛くないよう、すぐにへばらないように頑張ろうね」
悠成の言う通り、裕貴の豪邸に越してからふた月、一度も性行為をしなかった。つまり裕貴と悠成の二人に触れたのは、ホテルの夜が最後だった。裕貴は自主トレーニングに入り、悠成は年末ライブ、それぞれ忙しくしていた。大地もそれなりに予定を埋めていた。
実家に年末年始は帰省し、就活を始めていた。実家の母は元気そうで、大地は安堵する。が、就職の話になると大地の顔が陰った。未来が一番ぼんやりしているのは自分だけだ。二人に追いつこうとは思わない。自分は分不相応な夢を叶えてしまったのだから、他を望んだら罰が当たりそうで、それなりに分をわきまえようと現実を見据えていた。
就活にも色々とお金がいる。生活費だってかかる。実家からの仕送りを頼りにせず、アルバイトで補おうと考えていた。それも裕貴と悠成が必要ないからと支援の手を差し伸べられる。友人であり恋人でもある二人に援助される。それは一見すると有り難い話に思える。だが、自由を封じられているような気がして断った。
大地がよそに意識を向けて、前に進もうとしている。それを二人が応援してくれるものだと期待したのに、どうやら虫が良すぎたようだ。彼らは遠方先から、両親よりも大地の未来に口を出す。それが度重なると、干渉しないでくれと連絡を絶ってしまう。
大地の反抗と関係あるのか知らないが、裕貴がキャンプインする前に、悠成がレコーディングに入る前に、彼らは一週間の休日を作った。それでこうなったわけだ。
「ぅ、ぁ、ぅっ、あ、が、頑張る」
涎が水面に垂れる。きゅうと胎内を締め付けてしまうと、頭上から悠成のため息が聞こえた。
「毎日、頑張り屋の大地が自分で広げてくれたお陰で、お前の負担も少なくてすみそうだよ」
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悠成の顔色は安らかだという風に落ち着いていた。
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