義妹に苛められているらしいのですが・・・

天海月

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「ということは・・・、エレーヌが件の聖女だと!?素晴らしい!素晴らしい発見だ!!なんという歴史的な瞬間に立ち会えたのだ私は!!」

国王は何かに合点がいったかのように、急に顔を紅潮させ更に声をあげた。

「陛下・・・あの、逃げないと・・・」

バートンが気の毒そうな表情で、遠慮がちに避難を促す。

(カノン様が本気だったら、もう死んでるし・・・この方)

「バートン、そなたは先ほど化物だと騒いだが、あちらの方は決して化物などではない!今はなき西の魔族の国の王子だ。なんと、変り身の魔術まで使えるとは・・・流石は規格外な・・・!いや、今はそんなことに感心している場合ではない・・・。
ともかく、そなたの忠義は有難く思うが、私のことは気にせず、一人で逃げるが良い!
たった今、私は大変な瞬間に立ち会っているのだ!みすみす、この場を立ち去ることなど私には出来ない!!」

国王は、あきれ顔のバートンの制止を払うと、湧きあがる興奮を抑えつつ、エレーヌを横抱きし立ち去ろうとするカノンに声を掛けた。

「西の王子カノンよ、知らぬ事だったとはいえ、あなたの聖女に求婚するなど、あってはならない不躾な真似を働いてしまった事を、どうか謝罪させていただきたい」

「私を知っているのか?人の王」

「西の王子、そして対になる聖女の伝承は、魔術史研究家の間では長く語り継がれてきた話。先程まで、お二人の素性を知らなかったとはいえ、間に割って入ろうとしていたなど、なんと恐れ多い・・・」

研究者として興味深い出来事に直接対峙している感動からか、国王は、普段意識してかぶっている王としての仮面が剥がれ、いつの間にか、探求心と知識に飢えたひとりの青年でしかない素の自分を露わにしてしまっていた。

「そうか。私はエレーヌと共に過ごせるならそれで良い。もうお前が邪魔をする気は無いというのなら、何も責めはしないし、お前に危害も加えることもしない。私たちは、これからこの国を去るが何も詮索しないでくれるとありがたい」

「・・・あなたの邪魔もせず、詮索もせぬと約束致しましょう」

「それは助かる」

「ただ、一つだけ、私の願いを聞いていただきたいのです」

「願い・・・だと?」

後ろで二人の会話を聞いているバートンの顔から血の気が引いた。

「・・・この地はかつて西の国があったとされる土地。私はこの地を、この国を、玉座と共にあなたにお返したいと思う。
どうか、あなたに新しき王になっていただきたい!」

「は?!」

国王の思いがけない提案に驚きを隠せないカノン。

(エレーヌと二人でここから去る筈が・・・バートンから聞いた話とは、だいぶ違う・・・なんだか妙な流れになってきたな)

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